10話
僕は男の逃げてきた道をたどりながら、その先に何が有るのか考えていた。
僕の今までいた場所に出現したモンスターはゴブリンにその上位種、僕含めて二匹しか見てないけど、スライムもいる。ゴブリンウォーリアを除けば全部雑魚と言っていいモンスターだろう。
モンスターが出現するってことはこの僕が居る巨大な洞窟をダンジョンだと仮定して、ゲームとかのダンジョンだと、普通は奥に行けば行くほど敵が強くなっていくはずだから、僕が今までいたのは入り口付近のはずだ。とりあえずこの辺を第一層とでもしておこう。
ゴブリンウォーリアが多数のゴブリンを従えていたのを見るに、第一層ではゴブリンウォーリアはボスクラスのモンスターのはずだ。
そのゴブリンウォーリアに勝てたってことは、僕は第一層ではかなり強い部類に入るはずだ。
そして、逃げてきた男の体やブレストプレートには爪痕の様なものがあったけど、この辺では動物型のモンスターなんて見たことが無い。ということは第一層とは違うモンスターが居る場所、そこを仮に第二層としよう。
第一層でかなり強い部類に入るってことは、第二層でもそこそこやっていけるはずだ。
丁度どこまで考えた所で、視界の中に下へと続く階段を発見する。自然的な洞窟には似つかわしくない人工的なそれは異彩を放っており、生き物を飲み込まんと大口を開けているようにも見える。
それはともかく、血痕が階段の下に続いているのを見るに、この下が第二層のはずだ。
この先に何が居るのかは分からないけど、考えても仕方ないし、降りてみるか。最悪この先がヤバくても、戻ってくればいいだけだ。
階段を降りるとそこは第一層とさほど変わらない洞窟だったけど、第二層の方がに道がひ広いかな?
辺りを見回していると、大型の狼みたいなやつが二匹見つけた。狼もこっちを発見したらしく、かなりの速度でこっちに走ってくる。
ただまあ、速いだけで一直線に走ってくるだけだし、どうとでもなるか。
一匹は首に、一匹は足に嚙みついてくるけど、別に効かないし、そのまま噛みつかせて狼を体を内側に引き込む。そんでもってそのまま捕食。
割と簡単に倒せたし、所詮は獣だな。それでもやっぱ、ゴブリンとは速度が段違いだし、多分力もゴブリンより強いと思う。でもまあ、噛みつきくらいしかしてこないなら僕の敵じゃないけどね。
それじゃあ、血痕をたどっていきますかね。
血痕をたどってしばらく進んでいると、傷だらけのゴブリン二匹組が走ってきて、その後ろから狼二匹と、一際大きい狼が追いかけている。大狼の口に血が付いているあたり、お食事中だったのだろう。
この階層にもゴブリンって居たんだ、というか僕が偶々そういう場所に遭遇してるだけかもしれないけどさ、ゴブリンって事あるごとに何かから逃げてない?やられやくなの?
まあ別にいいや、走ってくるゴブリンをササッと切り捨てて捕食する。
狼たちはそれを見ると、警戒したのか五メートルくらい距離を開けて立ち止まる。そして大狼は、僕に値踏みするような視線を向けると、大気を振るわせるような咆哮を上げる。
それを合図に狼たちが一匹は真っ直ぐ、もう一匹は僕の横に回るように駆け出す。あの大狼がボスみたいな感じかな?とりあえずこの狼達には剣の練習に付き合ってもらおうじゃないか。
駆け出した狼たちとの距離が一メートルという所まで接近したときに、剣を突き出して正面からくる狼を貫き、そのまま剣を液体に戻して、横から接近する狼に回し蹴りを入れて大狼に向かって弾き飛ばす。
それに対して大狼は横に飛んでそれを回避して、そのまま僕の方に駆け出す。接近してきたところに剣をもう一度出して切りつけるが、軽く避けられる。
そのまま僕の頭を噛み千切らんとして大口を開けたところに剣を叩きつけると、牙と剣がぶつかり合って火花を散らし、両者共に後ろに弾かれる。
だめだこりゃ、力でも速度でも僕が負けてる。本当は剣だけで戦いたいところだったけど、これはスライムの特性も生かしていかなきゃ勝てそうもない。
先ずは触手を二本伸ばして、大狼の左右から攻撃するが、大狼は後ろに飛びのいてそれを避ける。
それによって大狼に隙ができる。その隙に一気に懐まで潜り込んで、剣から毒を分泌して、切りつける。
そして反撃の一撃を受けて三メートル程吹き飛ばされるが、問題ない、僕の勝ちだ。
ただまあ、毒がまわるまでにまだ時間がかかる。攻撃されて激昂したのか、警戒もせず接近して、僕の頭に噛み付く。その瞬間に触手で押さえつけて捕食をしようとするけど、触手で押さえつける前に距離を取られる。
そして再び飛び掛かろうとして、大狼にできたのはそこまでだった。毒の効果が前回より上がっていたのか、激しい運動で毒が通常よりも早く回ったのかは分からないけど、見れば傷口が変色し、大狼が急に苦しみ始め、やがて動かなくなる。
《経験値が一定に達しました。Lv4⊳Lv5に上昇しました。》
《熟練度が一定に達したため、毒分泌がLv2⊳Lv3に上昇しました。》