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83.それは、奮い立つ決起と

今回は話の区切り都合上、少し短めになっております

 フローリアから告げられた事は、衝撃的だった。

 俺が新たに作る領地の領主となるのであれば、そこを基盤に国を成し王になれと。

 内容としては確かに衝撃だ。だが、フローリアは分かっていて言ってるのだろう。国をまとめる為の人材として優秀な者を用意し、俺には知識と特異な力によって、それらをまとめあげて欲しいと。


 世の中そんなに甘いものじゃない。そう、それが──普通の世界なら。

 (あの)世界が甘いものだとは思っていない。だが俺が世界に与えられる影響度合いは、どんなに軽く見積もっても過剰すぎると言えるだろう。

 そんな俺が、国を持つ? 


  何のために? ──大好きな人たちと住む為に。


  誰のために? ──俺と俺の大好きな人たちの為に。


  出来るのか? ──出来ないと思うか?


 簡単な自問自答。

 既に解の出ている質問に、改めて問うだけの簡単な作業。

 それを経て、ようやく自分でも決心がついた。




「……やろう。国をつくり王になってやろうじゃないか」




 俺の言葉を聞いた全員は、驚いた表情をして固まる。あれ? てっきり喜んでくれると思ったんだけど。

「えっと、どうしたのかな?」


 あまりにもノーリアクションすぎて、俺から声をかけてしまう始末。もしかして、俺なんか間違えた?


「はッ!? カ、カズキ、今なんて……」

「だからやろうって。領主になって国になり、そして王にまでなってみせると……」

「カズキ!」

「お兄ちゃん!」

「カズキさん!」


 ようやく理解が追いついたのか、フローリア達が一斉に飛びついてきた。10代の女の子とはいえ、一度に三人も飛びつかれそのままソファに倒れ込む。


「カズキさん! それでは……」


 首筋に抱き付き、目の前すぐそばに顔をよせたミレーヌが目を閉じて口を近づける。


「待ちなさいミレーヌ! そんな抜け駆けは許されませんよ!」

「抜け駆けではありませんフローリア姉さま。彩和の格言に『二度あることは三度ある』とあります」


 いやソレ格言じゃないです。あとなんで彩和だ。エレリナさんにでも教わったか。


「ともかく今はそういう行為は控えなさい。……私も我慢しているのですから」

「わかりました。カズキさん、次の機会にまたお願いします」


 うん、真っ白な小悪魔だね。純白の光輝く小悪魔っ娘だ。天性の素質だな。




「では改めて。カズキ、よろしいのですか?」


 神妙な面持ちで確認をするフローリア。他の皆もふざけた様子は一切ない。


「勿論だ。俺自身考えた結果、その提案に乗ることにした。だから皆、よろしく頼む」


 そう言って頭をさげる。俺の目指す国というものがどんな物なのか、まだ全く様相がつかめない。だが、今ここにいる人達は絶対に必要な人達だ。ミズキ、フローリア、ミレーヌ、エレリナさん、そして今ここにはいないけど彩和にいるゆき。最初に建国した時の国民は、俺とその5人になるだろう。

 だからこそ、その想いを言葉にのせて頭をさげる。


「安心して下さいカズキ。ここに居る皆は、何があっても貴方の味方ですよ」


 そう言って俺の頭にそっと手を伸ばして抱き寄せる。

 頭を下げていて顔は見えないが、その声と立ち居振る舞いでフローリアだとわかる。

 普段は小さな女の子に見えるその姿だが、こうして包み込まれると聖王女の名前すら霞む母性を感じるほどだ。とても純粋で、優しさを体現したような──


「フローリア、どさくさにまぎれてずるいよ」

「そうですフローリア姉さま、人には注意しておきながら」


 ……うん、まあね。何となくわかってたけど一応ね。

 この後、少しばかり姦しく揉める三人を見るハメになった。飽きないな、こいつらも。




「で、では改めて。……カズキ」

「……何?」


 フローリアの声に、どこか緊張感を感じて思わず声がつまった。だが、次の瞬間俺は思いっきり動揺してしまった。


「向こう……カズキの世界とこの世界の事、皆に話して欲しいと思います」

「なっ、それ、は……」

「私の言葉の意味、わかりますか?」


 まっすぐこちらを見るフローリア。その迷いなく射抜くような目線に、絡み取られるように動けない。

 先ほどの言葉はどこから……そう思った時に、思い出す彼女との会話。



『私のおばあ様、王であるお父様の母が転生者だったのです』



 そういえば、フローリアの祖母が元フランス人だったとか言っていた。どの時代かとは聞いてないが、フローリアが現実(あちらの)世界を見た時の反応からしても、少なくとも俺達の時代より前の時間軸だろうとは思う。

 あの時の会話で、祖母から聞いたフランスという国が、俺が行ける場所=同じ世界だと認識したのか。そこから俺が皆を連れていくあの世界が、祖母のいた異世界だと断定したと。

 状況から判断したのはそこまで。だからその先を俺から聞きたいというわけか。


「……わかった、話そう。ミズキとの約束もあったしな」

「お兄ちゃん……」



『いつか、ちゃんと話してね』



 彩和でクエストへ向かう道中、ミズキとした約束だ。

 こんなタイミングでとは思わなかったが、丁度よかったのかもしれない。




「これから全て話す。俺の事、二つの世界の事、そして──皆の事を」





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