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5.それは、まさかの妹DAY

前回の前書きでも記載したとおり、今後は投稿分が用意できている場合は20:00に自動投稿を致します。

何か不足の事態により投稿が滞る場合は、最新話等の前書きなどに追記を致します。

 ミズキの初クエストも無事終了。まあ、ステータスが最初からチートみたいなものだから、わざとリタイアでもしない限り失敗はありえないんだけど。


「お兄ちゃん、この後どうする?」

「そうだな……」


 オークの巣だった地下の広間をざっと見渡すが、俺達二人以外はすでに物言わぬものとなっている。とりあえずオークロードの死体はそのまま収納したほうがいいだろう。ギルド報告の際に、オークロードを討伐したことによる加点もあるだろう。

 他の転がっているオークやハイオークの死体は……ああ、そうだったな。はい、ログアウト。






「おっと、すっかり暗くなってる」


 リアル(?)の方に戻ってくるなり、気付いたのは暗い室内。

 続いて、すっかり日が落ちている窓の外。さっきログインした時はまだ明るかったが、いつの間にか時間を忘れて没頭してたようだ。


「そういや、腹も減ったな……」


 向こうの世界では、あまり空腹を感じないのだろうか。珍しい食べ物とかあったら食してみたいが、そのあたりってどうなのかな。向こうで食べてもちゃんと腹は満たされるのだろうか。もしそれが可能なら食事代を節約できそうなんだけど。だって、データの所持金を増やせばどうとでもなるし。

 でもまあ、とりあえず今はこっちで食事をしよう。なんせ戻ってきた理由は『解体魔法』の実装なのだから。


 部屋の電気をつけて、窓のカーテンを閉じる。次は夕食だが、すっかり忘れてたため当然用意はしていない。なので詰んであるカップ麺から一つ取り出す。カップヤキソバか。お湯を捨てずにスープに活用するタイプだな。とりあえず電気ポットにお湯はあるので、そそいで3分。戻したお湯でスープを作って、はい本日の夜食完成。……明日はサラダをちゃんと食べるか。


 簡単な夕食をすませ、再びLoUの作業へ戻る。今必要な要素は『解体魔法』だ。最初は解体に特化したスキルでもいいのかと思ったが、それだと工程の違いはあれど実際に解体作業をする必要が出る。

 武器をもってモンスターを討伐するのと、目的を持って死体を解体するのは、やったことないけど全然違うものだと思う。多分俺にはムリだろう。

 そんなワケで「ほいっ!」とお手軽に解体できる魔法を実装することにした。まあ、俺専用の魔法ってことにしておく。何か不備があったら面倒だしね。


 とりあえず魔法の仕様を考えてみる。

 名前はそのまま【解体】……だとかっこ悪いか。英語で……あ、分解の英語【アナライズ】でいいか。消費MPは最低必須値の1。

 使った場合、対象がどうなるのかを考える必要があるな。分別種類は……


  ・魔石

  ・皮

  ・肉

  ・牙/爪

  ・臓物

  ・装備品

  ・その他


 こんな感じだろうか。LoUでモンスターを倒した時に出るドロップ品は、同じようで出ていたような気がする。それが分類“その他”に含まれるのかな。

 後は……そうだ、対象が複数体ある場合、同じモンスターなら同時に扱えるようにしておくか。

 となると、構造体変数は配列にして、最大数は……まあ、どうせ俺しか発動しないからメモリ確保不足なんて起きないだろう。発動時に最大1024体まで可能にしておくか。流石にこれで足りないことはないだろうけど、いざ足りない場合はひとまず1024体で魔法が作動するようにしておくか。


 試行錯誤して、なんとか新しい魔法を個人的な要望で完成。まあ、元々俺が作った部分が多いから本体プログラムをそのまま修正した。わざわざパッチにして、それを適応とかするのは面倒だからね。

 よし、これでLoUを起動すれば解体魔法が実装されてるはずだ。

 おっと、更新内容を記録しておかないと。こういう地味な記録って、意外と大事なんだよな。

 …………よし、完了。さあ、インしようか。






(……うん、ほぼ気にならない程度になってきたな)


 インすると目の前にミズキがいる。そうだった、オークやハイオークの死体や、報告云々をどうするかって聞かれてたんだっけ。


「とりあえずオークとハイオークを解体する」

「えー!? 洞窟内のオークたちを全部? たぶん100以上あるよ」


 おっと、そんなにか。多くても50くらいだと思っていたけど、ミズキのやつかなりノリノリで討伐してたんだなコレ。


「ああ、心配ない。実は『解体魔法(アナライズ)』が使えるからそれで一括処理する」

「へ? なにそれ! そんな便利なものあるの?」


 最初驚き、続いて「それならさっきも使ってよ」と口を尖らせる。まあそこは、「それじゃ練習にならない。俺がいない時は自分で解体するんだから」と言ってなんとか言いくるめた。まあ、俺がいるときは魔法でやってやるからと言って、とりあえず納得してくれたんだけど。

 そんな訳でまずは全てのオーク種の死体は収納へしまう。広間から始まり、来た道を戻りながら順番に拾っていく。……うーん、これも地道な作業だな。見える範囲の死体や、討伐した相手をまとめて収納するような魔法やスキルも考えておくべきかもしれん。

 こうやって実体験をしないと、必要なものが見えないってのはいつの時代の何に対しても変らないんだろうかねぇ。




「やっと出れた~」

「ふー。よし、それじゃあ……」


 回収しながら、ようやく洞窟の外まで帰還。全ての死体回収+オーク種の生き残り討伐をしながらの道程だったので、当然かなりの時間をくってしまった。

 だがもう一仕事ある。そのために一旦ログアウトしたんだからな。

 洞窟前の広場に、収納におさまっているオーク種のオークロード以外を出す。洞窟内で倒したヤツと、最初に森で討伐した数体もある。


「それじゃあ……【アナライズ】!」


 魔法の使用時の魔法名詠唱はLoU的には必須だった。とりあえず少し格好つけた名前にしてて良かった。

 魔法の詠唱をウケ、死体全体がぼんやりと光に包まれた。そしてその中でなにかゴソゴソと動いてるような気がしたが、それもすぐ終わり光が収まる。


「おー! なんかすごいー!」


 目の前には一瞬にして解体されたオーク種が、分別されて置かれている。その光景には俺も驚いたが、一応俺はこの魔法を既に使っているという設定なので、ここで驚いたらおかしいと思いこらえた。


「……よし。それじゃ必要なのだけもう一度収納に入れるぞ」


 そう言って俺は魔石、皮、肉、爪を入れる。装備品はボロボロの皮鎧や斧、その他ドロップもよくわからないオーク種独特な装飾品なのでいらない。臓物にいたってはどのモンスターでも不要だ。


「必要なものはこれだけだ。ミズキも大丈夫だな?」

「うん、問題なしだね」


 確認をして俺は火属性魔法を不用品の山に放つ。簡単な焼却目的の魔法だ。装飾品はまだしも、臓物はそのままにしておくと別のモンスターを呼びかねない。さっさと処理しておくのが賢明だ。


「これでよし。それじゃあ帰るか」

「うん! お母さんが待ってるしね」




 【リターンポータル】を出してそのまま帰宅。出発時に母さんに言ったとおり、十分夕飯に間に合う時間に戻ってこれた。無事クエストも終わり、終始ニコニコのミズキが母親に帰宅の挨拶に行く。


「お母さーん、ただいまー……って、ええっ!?」


 なぜか先に行ったミズキの驚いた声が聞こえる。まあ、これがどこかのクエスト中なら心配だが、家の中なので緊張感は微塵もない。とりあえず俺もそっちへ向かった。


「ただいまー。で、ミズキどうした……」


 そこまで言って、俺は言葉を切った。そこで目にしたのは、テーブルの上にならんだおいしそうな料理と飲み物。そして何より中央に置かれているのは、ケーキだった。


(あっ……)


 俺はようやく今日が何か思い出した。そういえば、ミズキが言ってたじゃないか。



『今日で私は15歳だから、ギルドで冒険者登録するって言ったでしょ?』



 ……そうだった。今日はミズキの誕生日だった。

 それで母さんは出かける俺達を見て、「夕食はどうする?」って聞いてきたのか。

 ヤバイ。どうしよう、どうしよう。

 妹の誕生日に何も用意してないダメ兄貴になってしまう!


(そうだ! 過去のイベント景品とかで、何かよさげな物を……)


 俺の中に天命とでも言うべき妙案が浮かんだ。NPCであるミズキに譲り渡すのであれば、できれば既存の物をあげたほうが不具合も起きないだろう。とはいえ、ありきたりではやっぱり申し訳ない気がしないでもない。……うーん、NPCとはいえ妹キャラだし、仕様設計から携わってるから愛着あるな。

 よし、ささっとログアウトしてアイテム調整だけしたら、すぐにインして戻ってこよう。

 そう思ってメニューを開いた。その時の俺は、もうログアウトすることしか眼中になく、周囲へ注意を怠っていた。


「ねえ、お兄ちゃん」


 だから、俺に話しかけようとして俺の左手を握ったミズキに気付かず──ログアウトした。






 一瞬のホワイトアウトの後、見慣れた俺の部屋が視界に広がる。当然こっちの世界では、HPバーもログウィンドウも無い。

 そう。何の変哲もないただの一般市民、七尾和樹なのだ。


「さて、とりあえずイベント資料から何か手ごろなものを……」


 独り言を呟きながら、LoU用資料をまとめたフォルダを開こうとしたのだが──。




「ねえ、お兄ちゃん。ここ……どこ?」




 背後から、聞こえるはずのない声が聞こえた。

 驚いて振り返ったそこには。




「それに……お兄ちゃん、いつのまに着替えたの?」




 先ほどまで一緒にクエストをしていた……“ミズキ”が、不思議そうな顔をして立っていた。


今回はここまで。当初から書きたかった部分にようやく少し触れました。

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