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389.そして、かの島に上陸

 何となく思いつきで決まった島への寄り道。結局全員で行くことになったので、普通に食事を終えて軽い休憩をして出発となった。

 といっても漁港にくるおばちゃん達から話を聞いたという事もあり、島はさほど遠くはない場所という事らしい。漁港からほどなく見えないくらいまで来て、俺達は召喚獣を呼び出す。先程までと同じように騎乗し、いざ出発──と思ったのだが。


「えっと……アミティ王女、何をされているんですか?」

「うふふっ、可愛いでしょ?」


 そういいながら、腕に巻きつけた白蛇(ニクス)を見せる。本来のサイズではなく、アミティ王女の手首にちょろんと巻きつくほど小さい。大人しくしていたら、手に布が巻き付いているようにさえ見える。


「……はぁ。お姉さま、行きますわよ」

「ふふ、わかりましたわ」


 妹王女であるリスティに半ば呆れられながらたしなめられ、彼女の召喚獣である白狼(ネージュ)にゆられて行ってしまった。そんな彼女達を見ながら、俺の前にすわっているフローリアが苦笑を漏らす。


「仕方ないですわねアミティ様は。でも、私も少しはわかりますね」


 そう言って彼女も、指輪から自身の召喚獣である白蛇(サラスヴァティ)を小型化して呼び出し、同じように手首にまきつける。そして、もう一匹白インコ(アルテミス)も呼び出す。こちらは俺達のまわりをくるくると二周ほどして、スレイプニルの頭にちょこんとすわった。フローリアの愛馬であるプリマヴェーラとも仲がよく、同じように頭の上にすわっているのを度々見かけたことがある。


「ふふっ、せっかくなので全員呼んでみましたわ」

「あっ、それなら私も──」


 その様子を隣で見ていたミズキが慌てて声をあげる。


「まてミズキ! お前の場合は島についてからの方がいいだろうが」

「あー……うん、それもそうか」


 そう言って、召喚しようとしていたのをやめる。おそらくペンギン(ペトペン)でも呼び出そうとしたのだろう。……まさか、ここでスライム(クリン)を呼び出そうとしたとかないよな?

 そんな俺達の一連の会話を、ミズキの後ろに乗ってみていたエリカさんが、


「しかしカズキくん、色々とんでもない獣魔を所有してるわよねぇ」

「ま、まあ……ね。ははは……」


 どう説明していいのか困って、とりあえずなぁなぁでごまかした。エリカさんやユリナさんから見れば、俺の所有している獣魔は明らかに異常なんだろう。でもまあ、二人との良好な関係のおかげで、そのあたりはなんとなくですんでいるのが幸いだ。


 そんな風にあまり身にならないような雑談をしているうちに、目的地である島──『白巳島(しろみじま)』へ到着した。

 正確にはまだ島には上陸してないが、島から一番近い対岸に到着だ。潮はまだ完全に引いてないが、俺達の召喚獣は皆飛ぶことも可能なので問題ない。あまり派手に飛ぶことは普段はしないが、ここはまあ海上をそっと飛んで渡ることにする。その際、光を屈折する魔法で周囲を覆い、余所からは見えないようにする。馬とか獣が海上を闊歩してるように見えたら変な噂になるかもしれない。


 対岸から島へと渡り始め、半分ほど過ぎたあたりだろうか。


「……カズキ。うちの子(サラスヴァティ)が、何やら感じとってますわね」

「ふむ。わしも感じるのぉ……(まご)うこと無くこれは蛇じゃな」


 隣を進むヒカリのペガサス(セレーネ)に乗ったヤオが、フローリアの言葉に同意する。何よりヤオほど“蛇”の感覚に鋭い者はいないだろう。

 見ればアミティ王女の白蛇(ニクス)も、何か感じるのかずっと鎌首を島の方へ向けている。


「島の前の通り“白い蛇がいる”という事なのでしょうか?」

「多分そうだろうな。……となると、恋人を分かれさせるって噂も──」


 真実なのか? と口に出そうとすると、周囲からさまざまな意味を含んだ目で睨まれた。もちろん信じてないよ? というか、そんな悪いことをしている存在がいるなら、ちょいとばかりお説教でも……っていうつもりなんだから。なんせこっちは、蛇となれば三匹……もとい、三者も味方がいるんだから。


 ほどなくして俺達は島へと到着する。潮が引いてる時はここから上陸するんだな……という場所から島へと入る。


「!?」


 ──瞬間、何かを通り抜けたような感覚を僅かに感じる。

 俺に続いて島に上がった者たちも、一瞬何か驚いたような表情を見せる。そしてマリナーサとエルシーラが同じ感じをうけると。


「これは……ですわね」

「ええ、微弱な結界ですね」


 それを聞いて俺は思い出す。エルフの里に、同じような結界が張り巡らされていたことを。それを二人に聞いたところ、こちらは侵入者を拒むものではなく察知するためのものらしい。いわば、侵入者感知センサーというところか。


「……ということは、私達が島に来たということを認知する存在がいるって事ですね」

「まぁ、そうことじゃな。そしてそれはおそらく──」


 ヒカリの言葉を肯定するヤオが、視線を島の中央にそびえる山の頂に向けられる。おそらくは、そこに何かがいるということだろう。


「とりあえず、行ってみようか」

「そうですわね」


 ここからは、島とはいえちょっとした山道だ。そのまま飛んでいくという手もあるが、幸い道は普通にあるので歩いていくことにした。一応、用途は感知だが結界内なので、召喚獣での飛行は少し様子見したほうがいいだろう。


「よし。それじゃあヤオ、先頭をお願いしていいか?」

「うむ、我にまかせておくがよ──」

「うふふっ、ではまいりましょうか~♪」

「ぬぉ!? な、なんじゃお主は、っておおおおおっ?」


 ヤオの快諾にかぶせてきたのは、やはりアミティ王女だった。

 出発時の俺同様に、彼女に腕をとられたヤオが驚いている間にずるずると引きずられて山道を歩き始める。

 ってか、アミティ王女って……普通に一国の第一王女様ですよね? なんでそんなにもパワフルなんですか?

 俺達の見守る中「ぬおおおぉぉぉ……」という声が少しずつ遠ざかっていく。それを巳ながらフローリアがポツリと漏らす。


「……なんでしょう。あのお二人だけで行かせたら、きっとこの島に巣くう者も泣いて許しを乞いそうですわね」

「ええっと……皆、いこうか」


 俺の言葉に皆、どこか引きつった笑顔で頷いてくれたのだった。



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