381.そして、試合う事になるのだが……
4/18(土)更新分は4/19(日)に更新となります、申し訳ありません。
「……さて。どういうつもりか説明してもらおうかのぉ?」
「こらこら、そんな威圧的な物言いするんじゃない」
闇に乗じて……というほどではないが、襲撃の定番ともいえる闇討ちを仕掛けてきた──正確には“仕掛けてこようとした”者達が目の前でおとなしく正座をしている。
とりあえず話を聞こうという事なのだが、とりあえずこちらの技量を推し量るべくやった事というのは理解している。問題はその動機だ。
「さて……と。とりあえず話をしたいんだけど……リーダーというか、代表は?」
「はい。私、ハヤテです」
「ハヤテさんですか。なんだか、いかにも忍びっぽい名前だ」
七人の中でも一人前に出ていたこの男性、およそ二十歳前後だろうか。このハヤテさんは最初に苦無を投げてきた人物だ。とても正確だったけど、いかんせんGMキャラ特有の物理全無視判定で何もせずに無効化してしまった。
そのせいで向こう側の対応が予想外の行動になったのだろう。それに乗じて俺とヤオはあっさりと七人中五人を昏倒させたというわけだ。
「それで、狩野の方たちがなんで俺とヤオに襲撃したんですか? 先ほど技量試しみたいな事をちょろっと聞きましたけど」
「……はい、その通りです。私達はゆら様とゆき様の主人となる貴方の実力を知りたく、長より今回の事を認めて頂きました」
「長ってのは……十兵衛さん?」
「はい」
「……ほほぉ」
ハヤテさんの返事を隣で聞いていたヤオが、どこか舌なめずりでもするような感じで言葉を漏らす。それはまるで、腕白な子供をしかりつけるかのような色合いを感じさせる声色だった。
「要するにこの催しは、あの小僧が呼び込んだ戯れじゃというわけか」
「十兵衛さんを小僧って……」
「あんなもん小僧以外の何でもなかろう。わしに認められたくば、主様のようにわしより強くあれと」
かかかっと笑い飛ばすヤオを見て、ハヤテさんたちは唖然としている。先ほどの戦闘にて、ヤオの実力が並大抵ではないとは実感しただろうが、それでも十兵衛さんを“小僧”呼ばわりするには驚きを隠せないのだろう。
先ほどまでじっと黙っていた人達も
「長を小僧呼ばわりとは……」
「でも先ほどの様子を見れば納得できる……」
「いや、それよりもカズキ殿は自分より強いと……」
なんか色々と聞こえてくる。おっと、俺の名前も当然だけど知ってるのか。
その時だった。視界に移るUIのマップに、新たなマーカーが一つ高速で近寄ってきているのを映し出す。色からみて友好だが、今ここに来ると思われる人物は一人だ。
「主様よ、わしが相手してもええか?」
「……わかった。でも、ちゃんと手加減しろよ」
「当然じゃ」
そう言い残して姿を消すヤオ。その動きを目で追えなかったハヤテさんたちは、目の前で消えたようにしか見えず困惑する。そして、それ以上に困惑しているのは。
「あ、あの……何かこちらに近づいてきているのですか?」
「うん。こっちに十兵衛さんが向かってるよ」
「「「「ええっ!?」」」」
俺の言葉に全員が素で驚く。聞くと七人の内、誰一人と十兵衛さんが近づいてきてる事に気付かなかったらしい。
まぁ、俺のコレはチートとか言うレベルじゃない代物だしな。
「えっと……とりあえず、見に行く?」
俺の言葉に全員が素直に頷いた。
ヤオの後を追って……というより、マップのマーカーが表示されてる場所へ向かうと、近づくにつれて空気を切り裂くような音が聞こえてきた。俺にはもう存分に聞き覚えのある音で、ヤオが鞭を振るっている時の音だ。
にしても、中々激しく沢山の音が鳴っている。これは相手になっている十兵衛さんがよほどの強者だという事だろう。
だが、それでもただ立って鞭を振るっているだけのヤオにまともに攻撃を繰り出せずにいた。その光景にハヤテさんたちは、今日何度目かの驚きを顔に浮かべる。
誰が見ても優劣が明らかな状態なので、もういいかと俺は声をかけた。
「とりあえずヤオの気も済んだようなので、このくらいにしますか?」
「……あ、ああ。そうしてくれると、助かる……」
疲れ果てた様子の十兵衛さんが返事をしてくれる。対するヤオはまったくもって元気いっぱいで、鞭を空にヒュンヒュン回して遊んでいる。ちなみに使っているのは両手の8本のみで、足の8本は巻き付けたままだ。
着たばかりで疲れてしまい座り込む十兵衛さんの近くに寄る。
「ダメですよ十兵衛さん。俺とヤオは以前、別の国の温泉街でも夜襲に会っててイヤな思い出があるんですから」
「そ、そうだったのか、すまぬ……」
狩野の若者たちの中には、実際に俺の実力を知らなければ、ゆら──エレリナやゆきとの中を認めたくない……そんな考えのものも居たそうだ。結局それが十兵衛さんを説得し、こうやって闇討ちまがいの行動で実力を推し量ろうという話になったらしい。
もっともそれも最初の接触で、既に霧散しているとの事。さすがに一合すれば、相手がどれほどの高みなのかは理解できるとか。
ただ、ここで予想もしてなかった要望を出された。
ならば俺とヤオによる、本気の手合わせを見せて欲しいとの事だ。そして、折角だからここに居るものだけじゃなく、狩野の者たちすべてに見せて欲しいと。
……うーん、まぁそうだなぁ。
こういう話の流れになったら、断ることなんて出来そうにないか。
少し間が開いてしまい申し訳ありませんでした。
その間、世間の流れに沿うようにテレワーク(在宅勤務)の流れとなり、先日より開始しております。……ですが、コレって下手すると会社いくより仕事時間やばいかも、納得できない場合深夜まで仕事してしまいます。おかげで本日すごく遅れてしまいました。もう少し効率よくやって更新をあまり遅らせないようにしたいと思います。




