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34.それは、湧き上がる希望なので

今回は終始がっつり主人公の一人称なうえ、他者の登場も会話もありません。

次回からの前準備になる説明回のようなものになっております。

 LoUのホームであるグランティル王国の友好国であるミスフェア公国。そこへ出かけようと、フローリア様は事も無げに言った。

 このサービス終了半年前に実装されたミスフェア公国だが、ちょっとした裏話的なものがいろいろとあった気がする。

 そのあたりは流石に覚えてない……というより、まず知らなかった段階かもしれない。

 なので現実(リアル)へ戻ることにした。当時の資料の中から、ミスフェア公国についてのデータを漁ってみるつもりだ。

 それに少しやりたい事も増えたしな。




 戻ってきた俺がまず探した資料は、当然ミスフェア公国のものだ。だがこのミスフェア公国、実は少々変わった経緯が設定されていた。

 というのもこのミスフェア公国。場所はグランティルの北北東に位置するのだが、その位置はバフォメットが守護する森林地帯よりもはるかに先だ。元々グランティルの王都はかなりの内地にあり、王都の市民の中には海を見たことがない者も少なくない。

 そんなグランティル王国が懇意にし、各種貿易による恩恵を材料に支援をうけているのがミスフェア公国なのだ。

 元々ここはどこにも属さない港街だったが、立地とその有用性を見出されたため、王国領土内ではあったが、貿易を主眼とした貿易国として独立することになった。

 その際公国納める領主を決めなければいけなくなった……という、設定までは覚えている。しかし、当然公国が成り立つには領主は決まっているはず。もしかしたら俺が知らないだけで、外部仕様として資料には残っているのかもしれない。


 各種ドキュメントのフォルダを覗いてみる。その中にミスフェア公国の名の付いた資料があった。

 それを見てみると、設計段階から実装までの色々な経緯のほか、領主や主な施設などのデータがまとめられていた。

 えっと、何々……ミスフェアの名前の由来は、もともと“水辺”が“ミズベ”“ミズフェ”と(なま)ったり濁点が消えたりして“ミスフェア”に……どうでもいい内容だ。

 そういうんじゃなくて、領主の名前とかそういうのは……あ、これかな。


 ミスフェア公国の領主は、クラディス・ゼイル・アルンセム。アルンセム公爵と呼ばれており、グランティル王国の国王アインハルト・ハイネス・グランティルの弟。

 ……っていうか、俺国王様の名前も知らんかった。そういえばフローリア様のフルネームも知らなかったしなぁ。開発中は名前じゃなく、グラ王とかグラ姫って呼んでた気がする。

 まあそれはいいや。えっと、国王の弟であるアルンセム公爵が領主となって納めているのがミスフェア公国で、当然グランティル王国とは非常に良好な友好関係にあると。

 他には……ああ、こっちにも姫様がいるのか。いや、公爵令嬢か。名前はミレーヌ・エイル・アルンセムで、年齢は11歳。フローリア様とは旧知の仲で、やっぱり仲良しか。この辺りの設定を書いた人も、さすがに捻くれた設定はしなかったようだな。


 それにしても、地図で確認するとやっぱり遠いな。

 あの世界のカズキは、ミスフェア公国への【ワープポータル】使えるかな? もし使えないなら直接行くしかないか。


 後は……そうそう。GMのログインに機能追加しておきたかったんだ。

 今まではGMだろうが何だろうが、普通のプレイヤーキャラと同じでキャラ毎にインアウト位置を記憶していたけど、今回GMは同アカウントでのイン時は、出現位置を他キャラの座標に切り替える事ができるようにしようと思う。

 今までは王都内だからよかったが、今後遠出をした場合に非常事態に陥ったら、GMの到着が間に合わないなんてことも考えられる。GMの出現位置を調整する機能は、開発時のデバッグで仮実装されていたけど、それの可否を決める前にサービスが終わってしまい、結局放置凍結していた。なので今回それを実装しただけだ。なので特に問題もなさそうだ。


 ……よし、今日はもうこっちで過ごそう。

 ミズキとフローリア様は、まだ『憩い広場』にいる状況だろうけど、こっちの準備とかが全部終わってから話をしに戻ろう。

 というわけで、俺は部屋の掃除を始めた。ここ何日か掃除を怠っていた気がするから、何もないはずなのに埃がたまっているような気もする。部屋には空気清浄器も置いてあるけど気休め程度だ。

 それでもやっぱり一通り掃除をするとスッキリするのは、プラシーボ効果みたいなもんだろうな。

 せっかくなので、この気持ちのまま風呂場やらキッチンやらも掃除しておいた。おかげですっかり疲れてしまい、早々に寝ることになってしまったのは無念だ。




 翌日、思いのほか早く起きたが結構スッキリした目覚めだった。基本的に向こうで寝るように決めたけど、やっぱり長い間使った枕はおちつくのかもしれん。

 早速だが、プログラムでやりたかった事のもう一つに着手する。

 それは召喚獣のパートナーだ。ペトペンやアルテミスなどは、あくまでペットである。だが今回正式に実装するつもりなのは、一緒に戦闘などをこなせるパートナー機能。

 能力も大事だが、その制御プログラムに関してもかなり重要だ。

 例えば召喚獣の動力源。ペットと同様に主の魔力を使うのだが、戦闘となればその消費は段違いになってくる。動作が激しくなることによるエネルギー消費の増大は当然だが、もしパートナーが特殊能力……そうだな、火を吐くとか雷を撃つという攻撃があれば、当然魔力消費も大幅に跳ね上がる。

 ましてや、怪我やHPの自動回復とかされたら召喚獣に魔力を全部奪われてしまいかねない。

 そういう事態にならないように、消費魔力の最大値を設けたりして制御するべきだろう。


 後は……そう、どんな種族を召喚獣として設定するかだ。それによって消費魔力のベースも変わってくる。

 あたりまえだが、ドラゴン種なんかを設定したら魔力なんて速攻で枯渇する。

 GMのパートナーなら問題ないだろうけど、プレイヤーキャラには荷が重いだろう。

 とりあえずミズキやフローリア様のペット実装で、鳥類なら安定しそうだから(たか)(わし)にでもするか。芸がないかな?

 まあ必ず呼び出すわけじゃないし、データ実装だけでもしておこうかな。


 こんな感じであれこれ考えながら、試行錯誤して実装しているといつのまにやら昼をまわっていた。

 昼食は適当にインスタント食品でいいや……と考えた時。



(向こうの世界でインスタント食品って便利じゃないか?)



 などと思ってしまった。

 確かに便利だ。もしカップ麺なんかがあればお湯を注ぐだけですぐ出来るんだから。なんだったら固形の麺だけで、器は自分で用意してそこに入れてお湯をそそぐ形式でもいいかも。

 ただ……練った小麦粉生地を、細く切ったり高温油で揚げたりしないとダメだった気がする。向こうの世界に、それだけの事ができる設備や技術があるだろうか。……保留だね。


 昼食後は再びパートナー用のプログラムとデータの実装作業をした。

 といっても完全に真新しい事をはじめるわけではないので、今迄やってきたことなどを思い返しながらの作業。気楽なもんだ。

 会社にしばられての仕事であれば、当然ノルマがこなせなければ会社に泊っての残業もあたりまえだった。予期せぬトラブルで急遽泊まり込みなんて、それこそ日常茶飯事の世界にいたんだ。


 しかし今は会社も無くなってしまい、気軽な身。

 ある程度の蓄えもあるし、今迄作ってきたソフトやアプリのおかげで、未だに生活するには十分な収入もある。この生活感覚のせいで、向こうでも何か商売みたいなことに手を出したくなったのかな。

 なんか、あっちの世界で普通に冒険者してるのもいいけど、何か商売的な事にも手を出して見たくなるんだよな。

 そうなってくるとミスフェア公国って、海産物は豊富そうだな。

 あっちの世界って、刺身っていう文化あるのかな。それ以前に鮮魚をそのまま食べるってことが出来るレベルの海かどうかを調べないと。

 ……もう少しミスフェア公国の特産品とか、そういった事が書かれてないか調べておくか。




 こんな感じで色々やっていたおかげで、最終的に『憩い広場』にいるミズキとフローリア様の所へ戻ったのは、さらに翌日になってからだった。


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