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33.そして、大空と海へ

先日は更新できなくて申し訳ありませんでした。

「うふふ、アルテミスが楽しそうでなによりです」

「ホントホント、ペトペンもはしゃいじゃってるし」


 俺の目の前で、セキセイインコとペンギンがそれは楽しそうにじゃれている。

 どちらも鳥類でありながら、その身体はまったくことなる二匹だが、旧知の仲のように思えるほどに楽しそうだ。

 おそらくはお互い召喚獣という特殊な立場であり、なおかつ自分達の主同士が友人なので、そのペットである二匹も気の置けない仲のようになっているのだろう。


 さて、何故こんな状況になっているのか。

 ギルド依頼のクエストを終えて王都に戻ると、東門の所で待っていたミズキに捕まった。

 なにやら怒っているようなので、どうしたらいいかと思い悩んでいたのだが。


「ミズキさん!!」

「へ? な、なっ!?」


 俺が何かをするより先に、フローリア様がミズキのところへササッと駆け寄っていく。

 おいおい、いきなり何する気だ? と思ったのだが、ミズキの手をさっと握り。


「ミズキさん、一緒に遊びませんかっ!?」

「……はい?」


 それはもう邪気の無い満面の笑みで、一緒に遊ぼうと言わはりました。

 一瞬どうしたフローリア様! と思ったが、まあ同じ年頃の友達がいままでいなかったのだろう。そういえば、LoUの世界での学校教育に関しての資料とかなかった気がする。つまりフローリア様は学校なり学園なりに通って、そこで同年代の人たちと学ぶという経験をしてないんだな。

 普通のMMOの中で学校とかそういった要素は、それがゲーム舞台に絡んでこないかぎりあまり重要視してないものなんだろうな。そういった冒険とかの裏側の生活云々も、もう少し考慮するともっとリアルになるかもしれない。

 まあ、それはともかく。

 俺とミズキは、フローリア様の勢いにおされそのまま遊ぶことに。だがその前に、俺はギルドへ報告に行かないといけないことを告げる。なのでその間、ミズキとフローリア様は『憩い広場』で待つことになった。

 そして到着するまでの間、二匹のペットは意気投合したのか冒頭のようにじゃれ合いはじめたのだ。そんな微笑ましい光景を見てから、俺は冒険者ギルドへ向かった。




「つまり王都の北東にある森林には、あまり無闇に立ち入らないほうが良いということか」

「はい。あの辺りには、周辺の土地を守る特異な悪魔種がいます。幸いにも、人間を襲うことはない特殊な存在ですが、周辺を荒らしたりこちらから手を出すといらぬ争いを引き起こすことになりかねません」

「うーん……」


 ギルドにて俺は重要な話があると、ギルドマスターのグランツに話を通す。

 内容としては結構重要なことで、ヘタをするとギルドマスターでも判断のつかない事なのかも。


「しかしまあ、どこからそんな話になったんだ。そもそも他にこの事を知っているのは?」

「それなら、えっと……フローリア様が」

「あの王女様か……。一見おしとやかな聖女に見えるが、相変わらずのお転婆ぶりだな」


 深い深~いため息をグランツはする。

 どうやらグランツもフローリア様の冒険者ランクを知っているようだ。あと、意外とはちゃめちゃする性格も。


「そんなワケで、今の話の信憑性はフローリア様に確認してもらえれば」

「お前の報告を疑ったりはしない。ただ、流石に内容が内容だからな。……そういえば、守護をしているっていう特異な悪魔種ってのは、いったい何者なんだ?」

「バフォメットと呼ばれる悪魔だ。よその国の宗教に関わる悪魔だと記憶している」

「なんでそんな存在が王都の傍に……」


 確かLoUでの実装話は、悪魔信仰の象徴としていくつか挙げられた中の一つだった気がする。やっぱりヤギの頭のビジュアルが、異端審問とかサバトのイメージを呼び起こしやすかったからだろう。


「詳しくは分からない。ただ、遥か以前からあの土地を守護している存在で、無用な殺生はしないが土地を荒らす者には容赦ないようだ。つまりバフォメットが守護する土地を荒らすようなことがなければ、こちらに被害はないのだろう」

「……それは信じていいのか?」

「信じるしかないだろう。信じないと言って、そこに兵や冒険者を送り込んでみるか?」

「…………やめておこう」


 暫し考えた後、グランツははっきりと述べた。

 何より会話ができる相手が、無駄に血を流すことは望まないと言っているのだ。そこに何か真意があるとしても、ギルドマスターという立場上決断しないといけないのだろう。


「それでは王都北東の森林地域には、立ち入らないように冒険者たちに通達して欲しい。そこにフローリア第一王女の名前を添え、王命だと記して構わないと言われている」

「そうか。そういうところは流石だな、ありがたい」


 これで森林地域への立ち入り制限も大丈夫だ。

 ギルドから公布される書簡には、王命による捺印が施される。これは王都のギルドマスターが所持しているもので、王都内にて絶対遵守を意味する内容となる。これに反した場合は、そのまま王に反したとみなされて厳重処罰を与えられる。


「これで先の召喚事件も終息かな」

「そうだな。今回といい、先の時といい感謝している」

「気にしないでくれ。俺はここが好きでやっただけだから」


 そう。このLoUに対しての愛着においては、この王都にいるどの人々よりも絶対上だと自負してる。




 ギルドでの報告を済ませ、とっとと『憩い広場』へ向かう。

 あそこも段々と施設が充実してきており、オープン当初は飲み物くらいしかなかったカフェだが、今はサンドイッチやホットドッグの様なパン系軽食なども増えてきた。

 最終的には、現実(リアル)世界での喫茶店レベルになって欲しいかも。パスタ系ってこっちにあるのかな。


「お兄ちゃーん、こっちー」

「カズキ様ー」


 テーブルについているミズキとフローリア様が、俺に気付いて手を振る。うん、目立ってるね。

 普通ならこんな美少女二人がいる状況、ナンパの一つ二つというところなんだけど、どうやらこの世界……というかこの国では、フローリア様って結構ふらりと出歩いてると認知されてるのかも。

 周囲からの視線を見ても、遠巻きに眺めているけど話しかけてくるようなことは無いようだ。まあ、王女だと知ってナンパしてくるようなヤツは、文字通り決死の覚悟の自殺行為なんだろう。

 だから直々に呼ばれる俺ってのは、羨ましがられる存在として目だってしまうわけで。

 そんな視線を受けながら二人の所へいくと、何故かテーブルの上で手を重ねている。

 えっと、そんなに仲良しさんなの? 違う方向に仲がいいんじゃないよね?


「なんで手を重ねてるんだ?」

「あ、これ? ふふーん、なんでだと思う?」


 うわ、うぜえ。俺の妹がうざいです。

 なんかフローリア様っていう友達ができて、色々と視野や価値観が広がったのはいいけど、ついでに奔放さも上昇した気がする。


「……フローリア様、何故ですか?」

「ちょ! お兄ちゃんっ」

「ふふふ、それはですね……」

「あっ! フローリア様もそんな簡単に……」


 なんとも賑やかしい光景に、俺達だけじゃなく周囲からも優しい視線が届く。なんかこの国、というよりこっちの世界に人って純朴な人多過ぎじゃね? 漫画とかドラマとか、そういった手頃な物語文化がないせいかな。


「実はですね……あ、カズキ様も実際にやってみればわかりますね」

「ん? やってみる?」

「はい。私の手にカズキ様の手を重ねて下さい」

「えーっと……」


 なんか女の子に手を重ねて、とか言われて少しドキッとしてしまった。ただ何も他意はないらしく、ミズキもほら早くという感じでこっちを見てる。

 おそるおそるフローリア様の手に自分の手を重ねる。……あ、柔らかい。


「ではカズキ様。目を閉じて、リラックスして下さい」

「はい……」


 言われたとおりに目を閉じ気持ちを落ち着かせる。まあ、フローリア様なら、ここでちょっとイタズラを仕掛けてくるとか……そんなことはしないだろう。

 大人しく待っていると、フローリア様の手が少し動くような感じかして、なにか立ち上がったような気配がする。そしてそのまま近づいてくるような……。


「ちょ!? フローリア様、何してるんだすかあッ!?」

「しー! ミズキさん。ここは黙っててくれないと」

「何言ってるんですか! いいからはやく座って下さい」

「はぁーい」


 ……ねえ、何しようとしたの? 何か日に日にフローリア様の中の聖女成分が稀薄になってないか。あの外見で中身が小悪魔とか、こわすぎだろおい。


「こほん。ではカズキ様、いきますね」

「は、はい」


 今度はミズキは何も言ってこない。なら、今度こそ本当にやりたかった事ということか。

 すると重ねていた手から、魔力の流れの様なものを感じた。そして、閉じているはずの目に何かを映し出す。これは……空か? 空から見た映像か?


「フローリア様、この空はいったい……?」

「ふふ、見えましたね。これは今、上空に飛んでいるアルテミスが見ている景色ですよ」

「えっ!?」


 召喚獣の視界と同調できるのは知っていたけど、それを他人にも見せられるのか。これは使い方によっては、色々とできるかもしれないな。

 フローリア様から送られてくる映像を、俺とミズキは感心しながら見ていた。そして最後にアルテミスは、俺達のテーブルに戻ってきた。……おお! 目を閉じている自分を、リアルタイムで見るなんて経験は初めてだ。

 十分に上空からの世界を堪能した後、ふとミズキが言った。


「ねえお兄ちゃん。もしかして、私もペトペンの見てる景色を見れたりするの?」

「ああ、そういえばそうだな。出来ると思うぞ」

「ホント!?」

「本当ですか!?」


 俺の言葉に、ミズキだけじゃなくフローリア様も食いつく。


「ペトペンって水の中は入れるんだよね?」

「ああ、ペンギンだから水中を泳ぐのは得意だろうな」

「それなら私、水の中を見てみたい!」

「私も、よろしければその景色を見させて頂きたいです!」


 ああ、なるほど。どうやら二人は、先ほどの大空のように今度は水中を見たいわけか。確かに大空ってのはなかなか見れないけど、水の中となるともっと困難だろうな。特にこっちの世界じゃ、まともに見る方法なんてなさそうだ。


「じゃあどこか、手頃な川か池にでも……」

「いいえカズキ様。せっかくですから、もっと広いところに行きましょう」

「広いところ? 海にでも行くとか?」

「はい! グランティル王国との友好国である、ミスフェア公国なら海があります」


 フローリア様の口から出たのは、サービス終了の半年前に実装されたミスフェア公国。記憶では綺麗な海があり、それにちなんだ海洋モンスターも多い設定だった国だ。ただ公国という設定だったが、現在の君主が誰なのかとかは決めてなかった気がするけど。


「というわけで、カズキ様、ミズキさん。海、行きませんか?」


 とても嬉しそうに聞いてくるフローリア様。俺ってもう何度も笑顔に流されてる気がする。

 まあでも、ミズキもすごく期待に満ちた目をしてる。

 もしかしてこの世界って、男は弱いのかな?


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