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323.そして、山頂にて待ち構える者は

追記:10/04更新予定分は10/05に行います。

暫くは更新が遅れる日々が続きます、申し訳ありません。

 召喚獣達に騎乗した俺達は、いつものように雑談しながら山頂へ向かう。召喚獣たちの魔法の障壁と、フローリアが持っている氷結不死鳥(アイスフェニックス)の羽。これによって、雪山とは思えない気軽な登山風景になってしまっている。もっとも、登山といいながらも飛行しているので、一般的なソレとはまったく異なるものだが。

 ともかく、さして防寒着を過度に羽織ることも無く、女子5人の念会話をBGM代わりに進行指揮をとる……という状況。そんな中、ゆきがふと周囲や上を見て何か疑問を持ったらしく、俺に名指しで質問をしてきた。


「ねえねえカズキ?」

「どうした?」


 すっとゆってきたゆきが話しかけてくる。風の魔法障壁に囲まれているため、この中にいると結構声が届くようで、ちょっと離れていても普通に会話できるようだ。


「今ふと思ったんだけど……ここって結構高い山の上空なのに、上にあるのって雪雲だよね?」


 そう言われたので、あらためて上を見上げてみる。なかなかに分厚い雪雲が滞在しており、ちょっとやそっとじゃどこうとしないほど重厚な雪雲だ。


「そうだけど……もしかして、山の上なら雲より高いんじゃないかと思っていたとか?」

「うん、実はそう思ってたんだけど……違うんだねぇ」

「いや、単純に高度……高さの問題だと思うぞ? 雪雲ってのは大体二千メートルくらいの上空にあることが多いから、ここがそれより低いってことだろ」

「そうなの? 高さの数値は知らなかったけど、結構高いところまで飛んできたと思ったのになぁ」


 そういいながら山の裾野の方へ目をむけるが、結構な吹雪と白一色の地表が続き、ぱっと見ただけでは高いのか低いのかもわからない。


「標高が雲の高さより低い山々が連なってるんだろうな。この付近が極寒地なのは、標高の影響とじゃなくこの土地特有な理由か何かだろ」

「そうかもね。スレイスもあの火竜がいないと結構寒かったし。あれ、もしかして緯度が……」

「高いかもしれんな」

「あ、あの~……」


 ゆきと気候考察をしていると、少し遠慮したようなミレーヌの声が。


「ん? どうした?」

「その……お二人の会話を聞いていると、色々知らない知識が含まれていて凄いですよね」

「はい。内容もそうですが、知らない言葉とか色々出てきたりしますし」

「まぁ……そうかもな。俺とゆきは、現実(あっち)の学校で色々と──」


 そこまで口にして、俺はふと何かに引っかかる。なんだろう……さっきまでの会話になにかあったか? それとも学校? そんな事を考えていると、ゆきが何か思い出したのかこっちを見て、


「学校といえばカズキ、ヤマト領に学校をつくるとかって話どうなった?」

「あぁ、それだ!」


 思わず声に出てしまった。領地運営の一項目として学校の設立があったが、運営開始当時では時期尚早かと思って保留にしていたのだ。なんせ学校ともなれば、多くの生徒が必要になる。なのでまずは、領地にしっかりと腰を下ろしてくれる領民の確保が最優先だからだ。そのためにも、温泉をはじめとした人を呼べるものを用意する必要があった。

 とはいえ、学校という教育を行える施設があるというのも、強みといえば強みである。ならば、ある程度観光地化の目処が立ったら、次はいよいよ学校関係に着手するのもいいだろう。同時に領地拡大と、より多くの領民を迎え入れるべくベッドタウンも増設せねば。

 ……なんか、リアルで街育成ゲームをやってるみたいな気分になるな。失敗してもリセットができないのは、かなりのハイリスクなんだけど。


「施設の建造はそろそろ着手してもいいかもな。広場の整備が終わったら、次は学校関係施設の仕事を依頼してみるか」

「……そうなりますと、狩野(うち)の方で選んだ者達にも、そろそろ正式に通達しておいたほうがよさそうですね」


 言葉を挟んできたのはエレリナだ。以前彼女とゆきの二人には、狩野一族の中でも教育等に有能な人材がいたら、学校設立の際には教師として雇いたいという話をしていた。


「そうだね。その辺りの話は、水の憩い広場の作業が終わり次第進めていこうか」


 皆を見渡しながらそう言うと、全員「はい」と返事をして頷いてくれた。やはり領主はやること多くて大変だなぁ……なんてね。




 またしばらく雑談に興じていると、ゆっくりとスレイプニルが高度を下げていくのに気付いた。

 なんだろうかと思った時、前に座っているフローリアがこちらに振り向く。


「……カズキ。先程までに比べ、視線より高地な箇所が無いように思います。おそらくはスラブルフ山脈で一番高い場所──グラーゼの頂上付近だと思います」

「そっか、こんな吹雪の中だというのによくちゃんと来れたものだな」

「ふふ、流石ですわね」


 笑顔のフローリアは、スレイプニルの首筋をそっと優しくなでてやる。それが心地よいのか、少し自分からも首を寄せたりしている。


 そして山頂付近というだけあって、天候は結構な吹雪である。だが俺達が……正確にはフローリアの持つ氷結不死鳥(アイスフェニックス)の羽が動くと、その範囲だけは雪も風もパッタリと止んでしまう。


「……本当に、この羽には感謝だな」

「ですね。次にまたお会いしましたら、何かお喜びになりそうな事にお誘いしてみますか?」


 喜びそうなことねぇ……不死鳥の喜びそうなことってなんだ? どこかの国の伝承で好物はトウモロコシとリンゴ、って聞いたことあるけど多分違うだろうな。

 そんなことを考えていると、視力パラメータの高さを生かして前方注視をしていたミズキが、何かを見つけたように立ち止まる。


「お兄ちゃん。なんか前方の地面……水晶みたいなものが生えてるように見えるんだけど」

「おお、どこだ?」

「ここを真っ直ぐ行ったところだよ」


 その言葉を受け、俺達は少しゆっくりと歩みを進める。ただ、その歩みはすぐに止まる。先頭をいく俺が立ち止まったからだ。


「カズキ、どうした──」

「しっ。皆静かにここで待機しててくれ。ミズキはキークと一緒についてきてくれ」

「……わかった」


 ミズキ以外の皆がその場に待機して、ミズキとその召喚獣である麒麟(キーク)だけが付いてくる。フローリアからしだいに離れることで、ちょっとずつ吹雪の影響を受けやすくなってくる。ただ、キークの風魔法障壁があるので、何も無いに比べたら非常に動きやすい状態だ。


 ゆっくりと進むと、先程よりは多少悪い視界の先……そこに水晶が地面に生えるように有るのが見える。ただ、そこにあるのはそれだけじゃなかった。


「ねぇ、お兄ちゃん」

「……ああ。間違いなく、何かいる」


 俺の返事が終わるのと同時に、地面が大きく揺れ始めた。一瞬雪山ゆえの雪崩かとも思えたが、よくみるとゆれているのは俺達がいる場所の近くだけだ。そうなれば怪しきは唯一つ。


『前方に何かいる! 全員警戒!』


 俺の念話に全員から『はい!』との返事が返ってくる。どうやらちゃんと後ろからでも見えていたようだ。念のためにと、ゆきとエレリナは召喚獣に騎乗して槍を構えているようだ。


 そして──前方、俺達が見ていた地面の水晶より少し手前あたり、その地面が突如隆起した。……いや、地面ではなく、雪の塊が立ちふさがるように目の前にそそり立った。そしてその雪の塊とおぼしきものに、ピシリとひび割れが入ったかと思うと、ボトボトと雪塊が崩れ落ちていく。

 そこから現われたのは……身の丈が5メートルはあろうかという巨大な石像……いや、雪像だった。だがその表面の雪は、雪というよりも磨かれた鏡面のようだ。


「……大きい」

「スノーゴーレム……じゃないな、アイスゴーレムか」


 そういやギリムは、少ないけど魔物も居るとは言っていたか。でも、これって普通の魔物の類とは違う気がする。

 そんな事が脳裏をよぎったが、俺にはそれ以上思考に耽る時間はなかった。

 なんせ目の前のアイスゴーレムが、すごい速さでこっちに近寄ってきたのだから。



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