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301.それは、友好の贈り物として

追記:8/8の更新は翌日8/9に変更します

 仲間内以外への召喚獣プレゼントは、彩和の広忠(ひろただ)にシロブンチョウの雪華(ゆきは)をあげて以来になる。アミティ王女とリスティ王女の希望を確認した後、俺達は休憩も兼ねて別室へ案内された。よければ食事も一緒にどうかと問われたが、それに関しては丁寧にお断りをした。

 なぜならば、これからちょっと遠出(・・)をするからだ。


『ヤオ、今大丈夫か?』

『おぉっ、どうした主様よ』


 繋がるかなーと思って念話を送ったが、すぐに返事が返ってきた。今も温泉でまったりしてると思ったから、こんなに反応が早いとはと驚いてしまった。


『これから少し現実(あっち)へ行こうと思っているんだが、そっちは大丈夫かなと思って。てっきり温泉に入っていると思ったから』

『ああ、そういうことか。今は丁度温泉から出ておるぞ』

『そうか。じゃあ一度あっちに戻っても大丈夫だな?』

『うむ。久しぶりにアニメとやらの続きを見せてもらおうかの』


 そうヤオが返事を返すと、念話を聞いていたフローリアとミレーヌが「私も私も!」とこっちに強い視線を送ってくる。ヤオを含めたこの三人は、本当にそういったものが大好きなようだ。


『それじゃあ今から向こうへ行くから』

『了解じゃ』


 ヤオとの念話を終え、俺は皆の方を見る。皆はどうするか……と確認しようとしたが、既に俺の服や袖などをつかんだりして全員が行く姿勢だった。まぁ、これで置いていかれるのも嫌だろうけど、俺も置いていきたくないしな。


「じゃあ戻ろうか」


 俺の言葉に皆が頷くのを確認し、俺達はログアウトした。






 久々に感じる浮遊感にもにた感覚。視界が白から自分の部屋になっていき……同時に、周りに皆がいる。後、俺のログアウト時は一緒についてくるヤオも──


「な、な、なっ……」

「ふむ。こちらに戻るのも久しいの」


 言葉が出ない俺に対し、呑気に部屋を見渡すヤオ。そして、俺と同じように声を出せずにヤオを見ているミズキたち。


「なんでお前──裸なんだよッ!?」


 ようやく絞り出した声は、軽い困惑を含んだ罵声になってしまった。なんせ今目の前にいるヤオは、一糸まとわぬ姿──素っ裸なのだから。


「カズキ、見るの禁止!」

「ぅぐっ!」


 隣にいたフローリアが、とんでもない速さで俺の首を真横に向ける。軽く筋を違えたんじゃないかってほどだった。強引に顔を横に向けられたその正面に、ミレーヌが回り込んできた。


「カズキさん! なんでヤオさんは裸なんですか! わかってて連れて来たんですか!?」

「違う違う! 俺はちゃんとヤオが温泉から出ているって言ったから……」

「うむ。わしは温泉から出て、屋上の風で涼んでおったからのぉ」

「…………え」

「「あー……」」


 間抜けな声をあげた俺と、「そういうことかー」と呆れた声を漏らすミズキとゆき。フローリアとミレーヌはまだ「?」という感じで、エレリナは「なんとなく予想してました」との事。

 要するに“温泉から出てる”という言葉を、俺は“風呂を出て外にいる”とうけとり、ヤオは“湯船からは出ている”という意味で言ったのだ。温泉という言葉の範囲を、考えなかったミスだ。

 とりあえず、俺はこっちに来て早々正座でしばらくお説教だった。悪いとは思ったけど、事故じゃないのに……。それにヤオのを見ても別に何ともおもわないし。俺に合法ロリ属性はないからな、ハハハ。




 とりあえずお説教が終わり、お詫びという名の脅しでケーキをおごらされることに。ただ、俺はアミティ王女とリスティ王女に渡す召喚獣を用意しないといけないから、お金をゆきに渡して皆で行ってもらう事にした。年長者ならエレリナだが、やはりこっちでの習慣を考えるとゆきにお願いするのが一番だ。

 そんな訳で、俺以外はさっそく外出していった。それじゃあ、ちょっとばかし追加の召喚獣データパッチでも作ろうか。


 とはいえ、既に大凡のディティールは決まっている。

 まずアミティ王女に関しては、白蛇一択だろう。勿論俺から贈る白蛇の召喚獣は、彼女を助けた思い出の城蛇とは違う。でもフローリアの白蛇聖魔獣(サラスヴァティ)にあれほどの好意を向けたのならば、きっと贈る白蛇も気に入ってくれるだろう。


 まずはLoUにある大蛇のデータをエディタに読み込む。うまい具合にカラーパレットが整理されており、鱗を構成するカラー値を白系に変化させるだけで、ほぼそれっぽい感じになった。あとは、鱗の隙間や目や舌、そういった部分のカラーリングを調整してモデルは完成だ。

 次の召喚獣としての性能だが……それなりにしておくか。俺規準でいう所の“それなりに”だ。

 まず実サイズは、アミティ王女が抱きしめられるサイズがいいだろう。サラスヴァティに対して、本当に愛おしそうに触れていたとも聞いている。だが、もちろんその大きさだけでは不便だ。普段は二の腕に巻き付けるタイプのアクセサリになってもらう。あとは、腕全体に優しくからまるサイズの状態にもなるようにしようか。常に場所をとれるとは限らないので、軽く撫でてあげられるようにしておこう。

 こうして形態を3つほど設定する。その切替は主が任意で指示できるようにした。


「……ほぉ、白蛇の召喚獣か。これをどうするのじゃ?」

「これはラウール王国のアミティ王女に贈る────って、はぁッ!?」


 いきなりかけられた声に驚き振り返ると、なぜかそこにはヤオがいた。


「お、お前なんで……一緒に行ったんじゃなかったのか?」

「いや、わしは向こうの部屋でジュースを飲んでおった。それでアニメでも見ようと思ったから、また何かお奨めでもあったらと思ってな。ホレ、あの魔法で戦うヤツはあやつらと一緒に見る約束をしておるから勝手に見進めるわけにはいかんのじゃ」


 そう言いながら、興味は俺が設定している作業中のモニタに向いている。そういや、さっきこれをどうするかって聞いてたな。


「この召喚獣は、アミティ王女に贈るんだよ。なんでも彼女、幼い頃に野犬に襲われそうになったところを白蛇に助けられたとか。それ以降蛇が好きになったらしく、フローリアがサラスヴァティを呼び出したときも歓喜に打ち震えていたぞ」

「ほぉ、それは見どころのある娘じゃな! ならばわしも歓迎してもらえそうじゃな」

「そうかもしれんな。今の姿で歓迎されることは多いかもしれんが、本来の姿で喜ばれるってのは珍しいかもしれんな。近いうちにヤマト領へ遊びに来る事になってるから、その時には姿を見せてやったらいいんじゃないか」

「うむうむ、ではその時を楽しみにしておるぞ」


 そう満足そうにうなずくヤオはどこか楽しそうだった。その後、幾つかアニメのお奨めを教えてリビングの方へもどらせた。やっぱみられてると作業しにくいからな。


 さて……次はどうしようかな。

 リスティ王女から、召喚獣の中でも一番のお気に入りはホルケだと教えてもらった。つまり、あれほどの充実したモフモフ感が欲しいのだろう。別に騎乗はできなくてもかまわない、むしろ抱っこできるならそれで! とも言われた。

 それならば……と、俺はLoUのモンスターDBからデータを探して取り出す。それはペット実装時用に向けて用意された仮データで、狼系モンスターの子供形態のデータだ。そのデータも使い、こちらもさっきの白蛇同様に3形態を設定する。通常の形態──ホルケと同じ感じの形態と、子供形態のかわいらしい子狼……サイズとしてはぬいぐるみ程の大きさだ。それと腕に巻き付くブレスレット形態。こうしておけば、こちらも場に応じた形態にできるだろう。

 それじゃあカラーリングはどうしようかなぁ……。白蛇に合わせて白狼とかいいかも。そう思って普通にネット検索してみると、ホッキョクオオカミという白い狼が出てきた。……何コレかわいい。なんか俺が知ってる狼より愛らしいんだけど。よし、真っ白な狼で決定だな。


 こうして2体の召喚獣を設定し、おまけでちょっとした機能も付けておく。

 最後にデータとデキュメントをホルダにまとめ、追加パッチ生成の処理を走らせる。……うん、なんか久しぶりにLoUの実データをいじった気がするな。今にして思えば、ペット機能を実装してユーザーの反応を見てみたかったなぁ……。

 そんな事を考えていると、玄関が開く音が。


「お兄ちゃんただいまー」

「おいしかったー」

「カズキの分も買ってきましたのでいかがですか?」

「お、あんがと。んじゃいただこうか」

「あ! ヤオさん何を見てるんですか!?」

「安心せい。続きじゃなく別のアニメじゃ」

「あー、私もみたいー!」


 あっと言う間に賑やかしくなった。ただ、今はこれがすごく居心地が良い。

 それじゃあ、お茶とケーキを頂こうかな。



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