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294.そして、夢を少し叶えてみたり

昨日の投稿時、直前になって修正をはじめたので取り下げました。

大した内容ではありませんが、後書きに記載してります。

 砂漠の西にある大森林は、その名の通りかなり大規模な森林らしい。商品の流通となる主道はあるのだが、それ以外はほぼ皆無と言っていい感じだ。これが開けた土地であるなら、商業上の中継街などをもうけるのかもしれないが、そんな余裕すらないほど視界を多い尽くす木々ばかり。そのため、どんな者であっても一度はこの大森林で一夜を明かすこととなる。……勿論、俺達は例外だ。

 ともかく、合流してから随分と西へ移動したが、日が落ちるまでに大森林を抜けられるはずもなく。


「フローリア……ふ、ふふっ。本日はこの辺りで夜を、うふふ、明かそうと思うのですが……ふうふう、いかがでしょうか?」


 馬車を止めて降りてきたリスティ王女が、スレイプニルを撫でながらフローリアに進言してきた。なんか気持ちが違うほうに篭っているようで、なんかちょっと危ない人っぽい感じになってる。王族じゃなきゃ案件だなコレ。

 そんなリスティ王女をやれやれ……という目で見るフローリア。


「そうですね。では……この辺りで川などの水源はありますか? あればその近くで野営を設置しようかと思いますが」

「いいわね。この近くに野営に向いた場所があるか調査を」

「「「「はっ!」」」」」


 王女二人の指示により、ラウールの護衛騎士が返事を返して動く。本来なら俺達は、夜は家に転移帰還する予定だった。しかし、リスティ王女達の事を考慮して一緒に野営することにした。それでもてっきりお風呂くらいは転移して入ってくるのかと思ったが、それをやると騎士達はともかくリスティ王女や侍女には何かしら気付かれてしまうとか。女性ってのは男が思っている以上に、そういった事に関心が高いようで。

 ならいっそ、二人も連れて転移するのは……とも思ったが、どうやらリスティ王女をヤマト領に招待する時は、こんな突発限定ではなくちゃんとラウール王国へ行って心構えをしてからにするらしい。まあ、今転移でヤマト領へ行ってお風呂入っても「???」となるだろうし。


 そんな訳で今夜は大森林の中で一夜を明かした。

 特に面白いエピソードもなく、ごく普通に食事して、歓談して、睡眠をとっただけだ。一応護衛騎士の方達は交代して見張りをしていたけど、俺達はフローリアの召喚獣である白蛇の聖魔獣(サラスヴァティ)に見張りをしてもらっていた。どうやらホルケ(フェンリル)と同じように、そこに居るだけで下級の魔物はよってこないらしく、結構深い森でありながらまったく静かな夜だったそうな。

 ちなみに、初めてサラスヴァティを皆に見せた時は全員驚いたが、すぐにリスティ王女がサラスヴァティの胴をナデナデしたのは驚いた。ある意味での怖いもの知らずって感じだな。




 翌朝、しっかりと休みを取れた俺達は日が昇ると出発することに。

 ミズキやゆきはしっかり寝ていたのに、実際半分の時間しか睡眠をとってない騎士達より眠そうにしている。ああいうのって本当に日ごろの行いと、気持ちの持ちようだよね。ゆきは職業適性上、本気になれば3日ほど丸々寝ないでも過ごせるらしいが、この面子+前世の記憶という組み合わせがあると、とことん惰眠をむさぼる気質らしい。最近では、時々わがままが過ぎてエレリナにたたき起こされてるとか。


 ……と、ここで少し問題──ではないけど、ある事が。それは、


「お願いです! どうか一度、そちらの白銀狼(ホルケ)に乗せてはいただけませんか?」


 手を前でくんで、それはもう必死の懇願をするリスティ王女。聞けば、ラウール王国へ戻れば存分に触れさせてはもらえるとの約束だが、この森林の中を背にのって駆け抜ける気分をどうしても味わいたいとの事。確かに昨日の走行時も、ずっと馬車の中から召喚獣たちに熱い視線を送っていた。時折、それに気付いたフローリアがこれ見よがしになでたりしてからかっていたし。そんな中、一番凝視していたのはホルケだった。やはりふさふさな毛並みが興味を引いたのか、ショーウインドウに飾られたおもちゃをへばりついて眺める子供を思わせるほどの陶酔ぶりだった。

 それにまあ、王女の申し出もわからないでもない。そこにいるもふもふを楽しむのと、それに騎乗して森を駆け抜けるのでは全然違うものだ。それを延々と見続けていて、さすがに限界だったのだろう。


「いかがでしょう皆さん。こちらの召喚獣に騎乗しての走行は、昨日の通りまったく問題はありません。それに騎乗した際には、召喚獣からの力で寝転がっても落ちることがありません。少しの期間であれば、どうかリスティ王女のお願いを受けたいと思うのですが」


 一度乗って満足してくれればと思い、侍女と騎士達に提案を述べる。少し逡巡したようだが、結局王女からの申し出ということもあり、最後にはよろしく頼むとお願いをされた。

 すると、何故かフローリアが馬車の方へ歩いて行く。


「それではその間、私が馬車にお邪魔させていただきますわね。では宜しくお願い致します」

「は、はい! どうかよろしくお願い致します」


 あわてて返事を返す侍女。どうやらお互い顔見知りのようだが、さすがに他国の王女と馬車同席というのは、色々と緊張するものではないのだろうか。リスティ王女も、どこか心配そうな視線を向ける。だがそれを知ってか知らずか、フローリアは笑みを浮かべたまま、


「それではアンヌさん。せっかくですので、中で最近のリスティの事を色々お聞きしたいかと……」

「ちょ、ちょっと! 何を聞くつもりよ! アンヌ! あなたも余計な事話すんじゃないわよ!」

「い、いえ、私はリスティ王女に迷惑をかけられた事など……」


 王女の侍女──どうやらアンヌさんという名前らしいが、そのアンヌさんはあわてて弁明しようとする。だが、フローリアはストレージから一つクッキーのような焼き菓子を取り出して、


「実はこれ、ヤマト領で作られた新作菓子なんですが……」

「ではフローリア様、馬車の中へどうぞ」

「はっ!? ま、待ちなさいアンヌ! アン──」


 必死に呼びかけるリスティ王女の声がするも、フローリアがのった馬車の扉は閉まる。その光景に皆どこか微笑ましい空気を感じてしまう。本当にアンヌさんが王女が恥をかくような話をするとは思ってないし、フローリアだってそんなつもりはない。ただ、こうして若き王女が微笑ましくしている姿が楽しいのだ。

 そんなリスティ王女にミレーヌが声をかける。


「さあリスティ様。そんな事より、ホルケに乗ってください」

「そんな事って、貴女……。はぁ、フローリアもですが、ミレーヌあなたも大概ですわね」

「ふふ、ありがとうございます」


 もちろん褒め言葉ではなく皮肉なのだが、だからこそ(・・・・・)のお礼を述べるミレーヌ。そして半ば諦めたような顔でホルケの元へいくリスティ王女。だがホルケの前までいくと、先ほどまでの憂鬱な気持ちなどどこへやらで、目を輝かせる。ミレーヌの言葉ですっと伏せをして背を低くすると、まずはミレーヌがその上へ乗る。


「ではリスティ様、私の前へお座り下さい」

「え? 前いいの? ありがとう!」


 さらに笑顔を見せてて、そしてすっとホルケの背に乗る。


「ホルケ、暫し宜しくお願い致しますわね」


 そう言いながら愛しむように易しく背をなでる。その言葉と行動に、やさしく吠えて返事をして立ち上がる。視線の高さは馬上よりは低いが、リスティ王女が自身の脚で立つよりも上だ。その視界におもわず声にならない声をあげる。


「ではリスティ王女、行きましょうか。ミレーヌ、宜しくな。騎士の皆さんもお願いします」


 皆へ声をかけて進み始める。みれば馬車の窓から、フローリアとアンヌさんがリスティ王女の方を見ている。最初は少し心配そうな顔をしていたアンヌさんだったが、さすがに昨日も一緒に走行していたしすぐに不安そうな色は顔からぬけていった。ただ、時々フローリアと談笑している様子を見せながら、ちらりとリスティ王女を見るので、その旅王女が「むっ」とか「んー」とか唸るのが面白い。ミレーヌも少々困り顔だしな。


『ねえ、お兄ちゃん』

『どうしたミズキ』


 ふと隣に麒麟(キーク)に乗ったミズキがやってきた。だが、直接話すのではなく念話を使う。


『なんか、お兄ちゃんが誰かを乗せてないのって違和感あるよね』

『は? なんだそりゃ?』

『あー、わかるわかるー』


 すると反対側からペガサス(ルーナ)に乗ったゆきが寄ってくる。


『なんかカズキって、常に誰かを自分の前に座らせてるイメージだもんねぇ。主にフローリア様かヤオちゃんなんだけど』

『私達のうち誰かなら別にいいけど、他の子たちだったりすると……ねぇ?』

『大丈夫ですわ。そこは私の席ですから』

「!?」


 思わず声をあげそうになり、あわてて馬車を見ると窓からこっちを見るフローリアが。当たり前だが、側にいないフローリアにも念話の声は届く。ふと見れば苦笑いを浮かべるミレーヌとエレリナの顔。この旅での念話は、基本的にヤオ以外には通るようにしているのだろう。

 そんなフローリアから、念話が届く。


『そうそう。折角の機会だからとアンヌさんから、色々とリスティのお話を聞けて楽しいです。よろしければ、今度皆さんにもお話して差し上げましょうか』

『…………ほどほどにな』


 そんなリスティ王女は、ミレーヌと談笑しながらホルケを撫で、楽しそうにラウール王国への帰路を進んでいくのだった。



昨日の投稿直前に修正をはじめてしまったので、一旦投稿を取り下げました。

今回の話と違い、以下のようになっていました。

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夜になって野営ではなく、ラウール王国側の人も全員でヤマト領へ転移帰還し、食事と風呂と睡眠を取る。転移できない馬車と騎士の馬達は、召喚獣の見張りをおいて森の中に待機させておく。

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こういった違いがありましたが、これによりリスティ王女が初めてヤマト領へ来たときの感動が薄れるとか、「まずラウール王国へ向かう」という主人公側の目的がブレると思い、書き上げてありましたが変更いたしました。

今後もこのように、直前になって修正することもあるかもしれませんが、ご理解の程宜しくお願い致します。

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