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283.そして、ようやくの新居です

追記:276~283話のサブタイ番号にミスがあったので修正しました

 以前であれば現実(こちら)に来たら、ここ最近の主なニュースとかをチェックしたり、自分宛の連絡等の有無を確認していたのだが、最近ではあまりそれに必要性を感じなくなった。

 それよりもホームセンターとかへ出向き、家のパソコンをはじめ各種家具の耐震道具などを買ってきて補強したりすることの方が優先だった。おそらく今後は、今まで以上に異世界(あちら)にかかりきりになるので、こういった不慮の事故を何より警戒すべきだろう。


 それらを行った後、さあどうしようかと思い自室でボーっとしてしまう。思えば、ここ最近の自分の生活はほぼ全てが向こう側だった。着々と進めてきた領地に関しても、そろそろ本格的に始動する。そうなったらさら向こうにかかりっきりだ。

 とはいえそれを悔やむつもりは毛頭ない。寧ろ楽しんでいるし。


「……さて、それじゃあやっておくか」


 思わずでた独り言に、自分で自分を笑ってしまう。以前は自室に篭っている時、独り言をよく口にしていたような気がするが、ここ最近ではだいたい誰かと一緒にいた。そんな自分の変化を心地良く思いながら、俺は久しぶりにLoUの過去データを漁り始めた。かつて企画設計までしておきながら、正式実装にはいたらなかった仕様のみ埋もれてしまっているデータを。

 これを機にどうしてもやっておきたい事があったから。




 氷結不死鳥(アイスフェニックス)に会い、そして一度現実(あちら)へ行って帰ってきてからは、ヤマト領の正式な運営開始へ向けて大忙しだった。

 ヤマト領は、もう既に普通に運営できるレベルにまで整備が進んでいた。道路は無論、宿泊の宿屋に食事をするための店、観光地として十分な景観をみせられる場所もあり土産屋も充実。

 そして何より、魔石を使って清潔な上下水道を実現させた居住区は、ようやく人々が生活できる施設が十分に建設された。まだ建設をされてない場所も大方は既に売約済みで、順次家が立ち並んでいく事は決定している。


 そんな折、今日は全員でヤマト領へ来ている。なんでも領営のメイン宿となる温泉宿が完成したとの報告を受けたからだ。これはヤマト領での一番の温泉宿であると同時に、最上階は俺たちの住む場所となっている。要するに、ここヤマト領での我家でもあるわけだ。

 なので早速皆で見に来た。いつものように王都から、ヤマト領へ転移をする。今は領地中央に当初から設置されている一般宿屋前に転移しているが、次回からは俺たちの家の前に転移するようにしよう。

 さて、それじゃあ見に行こうかと思ったら。


「あっ、ミズキちゃーん! ゆきちゃーん!」

「へ? ああ、アリッサさん!」

「皆さん、こんにちはです」


 ミズキとゆきに声をかけてきた人がいた。みるとアリッサさんたちである。


「こんにちはカズキさん。……あ、ヤマト公爵って呼ぶべきでしたね」

「カズキでかまいませんよ。本当はそうすべきかもしれないんですけどね。アリッサさんたちは、もうこちらに引っ越してきたんですか?」


 4人でいたのでそうなのかと思ったのだ。


「そうなの。でもあの部屋っていいわね、気に入ったわ」

「でも私達のいるのって独身専用よね? もし結婚とかしたら出て行かないといけないの?」

「あの部屋は居心地がいい。よって結婚はしなくていい、うん」

「いやいや、そんな後ろ向きなこと言わないで下さいよ」


 特に同じ独身部屋に入るギルドマスターの姉妹には、絶対そんなこと言わないで下さいね。

 この後、俺たちは自分たちの新居を見に行くといったが、さすがにそれに同行するのはと遠慮された。まあ他人の新居を見に行くのは、面白そうだけど遠慮はするかな。


 4人と別れて領地の中央道に沿って歩いていく。遠くに見える大きな建物が俺たちの新居である温泉宿だ。建物としては現代風のホテルみたいになっており、なかなかこちらの世界ではお目にかかれない。

 そちらへ向かって歩いていると、すれ違う人たちからちょいちょい声をかけられる。今こちらに移ってきている人は、多くが俺の顔を知っているからだ。中にはフローリアやミレーヌに声をかける人もいるが、比率的には俺の方が多いのは自分でも驚きだ。


「ふふ、カズキも大分こういった対応になれてきましたね」

「これからはもっともっと増えていきますよ」


 そう言いながらミレーヌが腕に抱きついてくる。そういえばミレーヌは領主令嬢だったな。


「ミレーヌのお父さんも、ミスフェアを歩いてると声をかけられたりするの?」

「んー……どうなんでしょう? 私が一緒だと皆私の方に声をかけてきますので」

「ああ、なんとなく分かる」


 アルンセム公爵が声をかけづらいわけじゃないけど、ミレーヌの方がアイドルに声援を送るみたいで気軽なんだろうな。

 そんな話をしている間も、何度か声をかけられる。返事をしたり手を振り返したりしているうちに、目的の温泉宿……というより、まあ我家だね、このヤマト領での自分達の家へ到着した。

 間近で見上げると、中々この世界では見られないビルのプレッシャーみたいなものを感じた。うん、これはこれでいいかも。


「じゃあまずは我家への直通口へ行こう」

「え? そんなのあるの?」


 驚くミズキの言葉に皆が頷く。この建物の細かい設計とかは皆は知らないし、最終的な調整は本当に俺しか知らないこともあるからな。たとえば俺たちだけが使える専用の入り口とか。


「宿の玄関とは別に、家族だけが使える玄関だよ」

「家族……うふふっ」


 家族という単語にくいつくフローリア。ああ、そういう言葉を拾うのね。よく見れば、言葉にしてないだけで皆どこか嬉しそうだ。改めて言われると、俺はちょっと照れくさいかも。

 俺たちは建物の反対側に回ってきた。とはいえ、宿の裏側という感じではなく、そこはそこで家の玄関庭としてちゃんと区分けされている。


「さて、それじゃあ……ただいまー……」


 まだ自覚がないけど自宅、という少し気恥ずかしいただいまの言葉を言いながら入る。他の皆は「はー」とか「ほー」とかいう感じで入ってくるが。

 入った部屋は6畳ほどの広さの部屋。だが、他にドアがあるわけでもなく、家具もみあたらない。


「カズキ。ここって玄関……というよりも、上へ通じる転移部屋ってこと?」

「ああ、そうだ。まあエレベーター部屋みたいなもんだって思ってくれ」

「エレベーター……ああ! デパートとかにあったフロア移動する小部屋ですね」


 ゆきは無論だが、皆も何度か現実(あっち)でデパートへ足を運んでいる。その際、エレベーターやエスカレーターは何度か使っている。まあ、実際のエレベーターとかは設置できないし、寧ろ転移部屋の方が効率はいい。

 玄関部屋に全員入ったのを見て玄関を閉める。そして壁にあるパネルのようなものに手をかざす。ここに魔鉱原石の欠片が組み込んであり、そこにここと最上階だけ登録した【ワープポータル】が記憶されている。使用条件はここにいる者だけ。他の人は玄関部屋にさえいてくれれば移動するけどね。

 ちなみに宿側の階段を使って俺たちの家へ来る事もできる。無論そこにも制限はかけてあるけど。


 転移すると、先ほどと同じくらいの部屋へ出る。だが明らかに違う部屋だとわかるのは、玄関らしく靴箱などがあり廊下も続いている。


「おおー! それっぽい!」

「なんか凄いね……」

「あのカズキ、これは?」


 玄関から伸びる廊下の手前に並ぶスリッパ。ああ、そうか。こっちではあまりこういったつくりの家はなかったからな。


「これはスリッパといって室内で履くんだよ。この家では、上がるときに靴は脱いでもらうから」

「あー、なんか懐かしいな。彩和でも似たような感じだったけど、スリッパがあるとより実感する」

「そうですね。母屋で過ごすときも、足袋や素足でしたから」


 やいのやいのといいながら、靴を下駄箱にしまってスリッパを履く。ただ足を通すだけなので、最初は少し脱げそうになるも、すぐに皆ペタペタと慣れた歩きを見せる。


「よし、それじゃあ順番にいろいろ見ていこうか」


 俺の提案に皆が「はい」と返事をする。


「うふふ。一緒に新居を見るのって楽しいですわね」


 フローリアが下から覗き込みながらそんなことを言ってくる。

 確かにそうなんだよな。これからここで何があるのかなって思うと、それだけでワクワクしてくる。

 そんな高揚した気持ちで、俺達は新居を見て回りはじめた。



新たに書き始めた作品を投稿開始して1週間たちました。今後はこちらと交互に投稿していく予定です。週3回ほどの更新となります。今後とも宜しくお願いします。

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