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274.それは、遠くない未来の約束

6/6の更新はお休みします。次回は6/7の予定です。

 フローリア15歳の誕生祭も無事終了した。

 その締めくくりにもなった花火化粧の夜空の光景は、その日王都にいた人達すべての心に刻まれた。あれだけのものを用意した人物=ヤマト公爵という事はすぐに知れ渡り、未だになんとかフローリアをと画策していた者達を完全に沈黙させるに至った。

 またこれは後日となるが、俺が奥ったネックレスのダイヤモンド……その宝石としての希少性や価値は、今のこの世界では値段が付けられないとの査定が下った。ならばそんな貴重品を身に着けていては、フローリアが危険なのでは……と思うかもしれないが、あまりに貴重すぎて唯一無二。だから何かの手違いて奪われたとしても、それが世に出た時点で御用となってしまう品である。結果この世界では、フローリア以外は身に着ける事かなわずという事に至った。

 そんな事もあり嬉しさ有頂天のフローリアは、翌日には全員で彩和へ行くことにしていた。理由は君主である松平広忠様に会うため。ここ暫く会えない間に、フローリアの15歳の誕生日、俺の爵位授与と正式な領主認定など、いろいろと動きがあったからその報告だ。

 それと、もう一つ。


「久しぶりに広忠に会えます……嬉しいです」


 今日会ったときからずっとニコニコ笑顔を絶やさないのはミレーヌ。彼女は異国の大親友である広忠に会えるのが、嬉しくて仕方がないようだ。

 とりあえず夜になって、改めて皆で集まった。その理由は彩和へ行くためだが、まずは一旦睡眠をとってから行くことになった。ここ王都と彩和での時差はおよそ10時間。なので今いけば丁度朝の時間帯。そんな時は──という訳で、皆で一度ログアウトした。




 久々に現実(こちら)側へ皆でやってきた。全員一緒なのは北海道旅行以来か。

 ただその辺りを明確な境として、俺の生活比重は異世界(あちら)の重きを置く様になった。こちらでの部屋は、ちょっとした別宅という感じになってきている。ただまあ、エンターテインメントに関してはどうしてもこちらの方が充実しているし、食事などのほか健康や衛生などの管理知識など、どうしても生きる腕て必要な情報もまだまだ比較は及ばない。なので、相変わらず頻繁にこちらへは来ることにはなると思う。

 さて、そんな感じで久々にやってきたこちら側だが、さすがに現地時間にして夜10時をまわっている。元気楽しみという気持ちで多少はもっているが、ミレーヌはそろそろ寝たほうがいい時間だろう。本日の主役であるフローリアも、いわば15歳なりたてなので身体的にはそろそろきつい時間か。

 なので二人は明日のことも考え、先に寝てもらった。別段二人を仲間外れにしているわけじゃないことは、十分理解してもらえているので渋々だが了承してもらえた。うん、おやすみ。


 その為現在リビングには、俺、ミズキ、ヤオ、ゆき、エレリナの5人がいる。そんな中、ヤオとエレリナは前回の旅行で買ってきたお酒を飲みかわしていた。旅行先でこちらでの日本酒のうまさに目覚めたのか、元々飲めるほうだったのだが、アレ以来寝る前の晩酌は欠かせないという感じらしい。


「お兄ちゃん。今日見たあの……ハナビだっけ? ゆきちゃんに聞いたけど、あれって彩和の?」

「ああ、そうだ。彩和でもそうだが、ここ日本にもある夏の風物詩だぞ」

「そっかぁ。凄くキレイだったね。特に最後とか」


 純粋にミズキが感心したと言う。おそらくは、王都にいた人ほとんどがこんな感じだろう。


「ねぇカズキ。最後のって三尺玉ってヤツ?」

「正解だ。できれば四尺玉にしたかったが、まだ彩和ではそれを扱える技術はなかったからな」


 彩和が今もっている花火技術では、頑張っても三尺玉までが限度だった。それでも、あちらの世界の人々にとっては見たこと無い光景であったのだけれど。

 そんなゆきと俺の会話を聞いて、ミズキが質問してくる。


「……よくわかんないけど、アレよりもっとすごいのがあるの?」

「あるぞ。……そっか、今度こっちでやる花火大会にも、皆で見に行ってみるか」

「賛成! 楽しみ!」

「私も!」


 今思い付いたばかりという提案を述べると、


「面白そうじゃ。わしもよいぞ」

「無論、私も賛成です。ここにはいませんが、フローリア様とミレーヌ様も賛成かと」


 まったりと酌み交わしていたヤオとエレリナも、こちらを見て賛成を述べる。……ふむ。ならば今後の花火大会の予定でも少し調べておくか。これならば近郊でも幾つかあるだろうし、以前の旅行ほどの手間もかかならいからな。


「そうそう、誕生祭で思い出した。そういえばさぁ……」


 ふと何かに気付いたようにゆきが俺の方を見る。


「どうかしたか?」

「フローリア様に送ったネックレスってダイヤって、どうやって用意したの?」


 ゆきは前世の記憶があるから、ダイヤモンドに関しても他の人よりは理解している。だからこそ、どうやって用意したのだろうという疑問がわいたのか。あちらの世界で地下深く掘ることの手間を考えると、手っ取り早いのはこっちで購入したって思うんだろうな。だけど──


「まぁ、アレだ。ちょちょいっと……」

「ちょちょいと?」

「………………作った」

「はあああぁっ!?」


 思いっきり大声で驚かれた。まぁ、それが普通の反応だな。案の定他の人たちは「?」という感じで見ているけど。

 驚いたゆきはそのまま俺の所へ来てぐいっと襟をつかむ。まてまてまて、落ち着け。


「作ったって、一体どういうことよ!」

「いや言葉の通りだってば。あとフローリアたちやご近所に迷惑だ、おちつけ」

「うぅっ……で、でもでも! ダイヤ作ったって、どういうことよ!」

「ねえゆきちゃん。その“ダイヤ”ってのは、作れるとおかしいの?」

「おかしいわよ!」

「それがお兄ちゃんでも?」

「………………どうだろ?」

「おい」


 なんかヘンな俺評価がされている。そりゃあヘンといえばヘンではあるけど。

 すると話を聞きながらも大人しくしていたエレリナが、興味をもったのか聞いてきた。


「カズキは、その“ダイヤモンド”というをどのようにして作ったのですか?」

「そ、そうそう! どうやって作ったのよぉ!?」

「それはだなぁ……ダイヤモンドが炭素で出来てるってのは知ってるよな?」

「うん。さすがにそれくらいは」


 俺の質問に返事をしたのはゆきのみ。他の人達は「炭素?」という感じだ。


「ええっとだな──」


 とりあえず簡単に炭素というものを説明した。元になる成分は石炭とかと同じで、それに対して高圧高熱を加えてとてつもない圧縮をすることでダイヤモンドになる……と、まあかなりおざなりだが。


「ってことは、お兄ちゃんに頼めば皆にもダイヤを……」

「んー……まあ、そうなんだけど、それは少し待ってくれないか?」

「うん?」

「フローリアにあげたダイヤモンドあるだろ? あの大きさのダイヤモンドを作り出すためには、とてつもないほどの炭素鉱石が必要なんだ。今回、それをドワーフ族にお願いして融通してもらった。また、それがあっても特殊方法で圧縮をかけないととてもじゃないけど人工ダイヤモンドなんて作れない。それにもまた、ドワーフ達の鉱物を取り扱う機械が必要だった。そして、その動力源に俺の──いや、GMキャラの膨大なMPが必要だったんだ。それだけかけて、出来上がったのがやっとあのサイズな。さすがに大量生産というわけにはいかなんだよ」


 そう言うと、ちょっとばかり残念そうな顔をしてしまう。申し訳ないけど、さすがにな。

 少しばかり暗い雰囲気になっていると、軽く息をはいてヤオが周りをみわたして言う。


「別にカズキは『やらない』とは言っておらんじゃろうが。『少し待ってくれ』と言うからには、そのつもりがあるということじゃろうて」

「あ!」

「そうか!」

「そう……なのですか?」


 ぐいっと強い目力(めぢから)が3組俺の方へ来た。うおっ、やっぱ宝石とか好きなん?


「ま、まあ……今すぐってわけにはいかないけど」

「やった!」

「了解しました」

「いつだろう? 誕生日? それともそれとも……」


 とたん喜色一色の状態で、わいわいと騒ぎ出す。その様子に、苦笑しながらも愉快だと笑みを向けるヤオ。まあ、俺としてもその予定ではあったし、踏ん切りがついたとでもいうべきだろう。


「ほらほら。皆もそろそろ寝よう。起きたら皆で彩和へ行って、弘忠様に挨拶にいくぞ」


 そう言ってリビングから皆を追いだして、最後に電気を消して部屋にもどる。途中廊下で別れる時におやすみの挨拶をしたが、まあ皆さんいい笑顔。

 部屋にもどった俺もすぐにベッドに横になる。段々と自分のベッドが久しく感じるようになった今日この頃だ。

 横になりながら先程の会話を思い返す。俺が言った“少し”は、そう遠くないつもりだ。

 きちんとした約束の意味をこめた、大切な贈り物として用意する機会は──。



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