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232.そして、洞窟調査は終了する

 ヤマト洞窟の4階層目、地底湖のある場所へ戻ってきた。

 理由としては、一応の探索を終えたので簡単な総括と戻り準備が一つ。

 もう一つは最奥にいたスカルドラゴンのボスとしての位置づけ確認だ。あれほどまでに強力な固体が、毎回ここのボスとしてポップするとは流石に考えがたい。もしそうなら、5階層への立ち入りを厳しく制限しないといけなくなる。

 だがどうやらそういった事態にはならないようだ。まずユリナさんの話では、スカルドラゴンは強力だが、先ほどのような物理攻撃への異常な耐性は聞いたことがないとか。寧ろ魔法耐性が高く、戦うときは物理攻撃を主体にするのが通例らしい。

 その異常な物理耐性だが、これに関しては少しばかり組み合っていたヤオが感じたことがあるとか。なんでもスカルドラゴンから、精霊の魔力波動のようなものを感じたと。あたりまえだがスカルドラゴンが精霊魔法などを行使するはずがない。ならば何か……と思った結果。


「……ふむ。やはり、この湖から漏れ出る精霊の気に近いやもしれぬ」


 地底湖のほとりにたつヤオが、湖からゆったりと流れてくる空気を全身で受けながら言う。つまりここの精霊の力がやどった空気に、長い間晒されたスカルドラゴンがあのような力を持ってしまったのではにのかと。また、スカルドラゴン自体も、魔石ではなく魔輝石──もとい魔輝原石をもっていたことから、希少種だった可能性がある。その特異とする偶然が重なった結果、あのような強固な固体が生まれたんじゃないのかというのが、ユリナさんとヤオの言葉から推測した結論だった。

 それが本当かはわからないが、とりあえずリポップするボスモンスターを確認する必要がある。なので、それがこの探索での最終目的とした。

 そんなわけで、今はそれ待ちのため待機を兼ねた休憩中だ。


「綺麗ですね……。洞窟の中にひろがってるなんて、とても思えません」

「そうだね。スレイスで入った洞窟の温泉も綺麗だったけど、こっちは自然風景が洞窟にとりこまれたような、不思議な綺麗さがあるね」


 ミレーヌの言葉に返事をしながらも、洞窟奥にあった温泉を思い出す。あちらも不思議な美しさのある場所だったし、もしかしてこっちの洞窟っていろいろと綺麗な風景がねむっているかも。


「でも、ここは流石に水浴びをするような感じじゃないよね」

「くすっ、そうですわね。……そうだわ、アルテミス」


 すっと召喚ペットのインコを呼び出すフローリア。そして手を上にのばし、そこからすーっと飛び立つ。それを見てフローリアが目を閉じる。


「あ、私も見たい!」

「私も、いいですか?」


 ミズキやゆき、ミレーヌがわっとフローリアの隣にきて手を繋ぎ目を閉じる。湖上級からの見渡す景色をみたいのだろう。エレリナとヤオがすっと目を閉じてる四人の両脇に行く。特になにもないとは思うが、気を遣って護衛待機してくれたのだろう。

 しばし静かな空間を、白い鳥が優雅に舞うだけの時間が流れる。時折空中滞空しているのは、フローリアからの支持なのだろうか。時々聞こえる泣き声は、飛んでいる精霊と話でもしているのか。ともかく、洞窟には場違いなほどのおだやかな一コマだった。




「さて、そろそろボス部屋の様子をみてくるか」


 その言葉にみなが立ち上がる。とはいえ、ほとんど緊張した様子はない。帰る前に一仕事やっていくかーという感じだ。

 連れだって5階層へ。そして最奥の部屋へと向かうと……意外なことに、スカルドラゴンがきちんと“伏せ”をするような体制で待機していた。俺達が行った時は、ごろんと横たわっていたが、この形が本来のポップ&待機状態なんだろうか。

 そうなると、その性能も違ってくるんだろうなという考えに。


「ユリナさん、どうですかね。違いとか……わかりますか?」

「あの状態を見るだけじゃなんとも……。でも、若干固体が小さいような気もしますが」

「きちんと前まで行って確認しないとダメか。それじゃあ、誰がいく?」


 もしアレが普通に認知されているスカルドラゴンならば、物理攻撃が特異な人がいいだろう。それならば──


「はいはい! お兄ちゃん、私が行く!」

「……まあ、そうなるよな」


 元気良く手をあげぶんぶんふるミズキ。その手には既に魔力をこめた拳がはめてあり、やらせてオーラが全身からあふれている。


「いいよ。皆もミズキが行くってことでいいかな?」

「はい」

「了解です」

「がんばってー」

「ありはとう。では、いってきます」


 そういってボス部屋である広間へ足を踏み入れるミズキ。当然、それを察知したスカルドラゴンは立ち上がるのだが……うん、やっぱり少し小さいかも。というか、俺が戦ったのが希少種だから、あっちが少し大きいというのが正解か。

 一歩ずつ近付くミズキを、どっしりと構えて待つスカルドラゴン。そして、これ以上はスカルドラゴンの攻撃範囲内だという所まで近付いたところで、ミズキが一気に距離をつめた。


「いくよっ……ハァッ!」


 振り下ろされた爪をよけて、右足首を正拳で打ち抜く。インパクトの瞬間、拳に纏わせた魔力を放出して何倍ものダメージを呼び起こす。それにより、右足首は完全に崩壊し、スカルドラゴンの右足先は機能を失う。当然そのまま体勢を崩し、おおきくよろめき倒れそうになる。

 どうやらこの固体は、普通に物理ダメージが通るようだ。やはり先ほどのが異常だったのだろう。

 さて、ミズキはこの後どうするのかなと思っていると。


「キーク! お願いっ!」


 ミズキの叫ぶ声が聞こえた瞬間、その右手の拳に青い稲光を纏ったようになり、それが拳の中へ収まり青い光を煌々と漏れ照らす。

 その光景を見たことのあるゆきは、今からミズキが何をするのかわかって満面の笑みで叫ぶ。


「いっけーっ! ぶちぬけーっ!」

「はあああ……」


 声援を受けたミズキが地をける。その先には体勢を崩して下がってきたスカルドラゴンの頭が。


「やぁああああああッ!!」


 絶叫一閃。振りぬかれた拳がスカルドラゴンの頭に触れる。それと同時に拳にまとった輝きが、一閃の光の弾丸となって頭、首、胸、腰、尻尾と一直線に貫通した。あまりにも強力な一撃だが、壁に衝突した際には思った以上に静かに消えた。

 あのエネルギー弾は、ミズキの召喚獣である麒麟──キークの力だ。そのため、洞窟内での壁への衝突では、力を制御してとめたのだろうか。

 ともあれ、通常種のスカルドラゴンはこの階層までくる冒険者なら、十分相手になるレベルだという確認はできた。もし希少種が出て来ても、さすがに先ほどのような異常な力をもった個体にはならないだろう。もしそうなったら、こちらで倒せばいい。魔輝原石が増えてくれるのなら大歓迎だ。


「ふふっ、ミズキは本当にカズキが好きなんですね」

「えっと、それはどういう事?」


 今の様子をみていたフローリアが、俺の隣にきて笑みを零す。いみわからんと周囲を見るも、俺以外はみなうんうんと頷いている。んー、やはりわからん。どういうことかと改めて聞いてみると。


「先ほどのミズキの戦い方ですわ。まず右足首を攻撃して、態勢を崩し倒れこむ頭部に強力な一撃。先のカズキが行った戦い方を。そっくり再現してました」

「そうですね。私やゆきでは、似たような立ち回りを試みても、あのように一瞬の爆発力でそっくり真似ることはできません」


 フローリアが説明をして、エレリナが自分やゆきではあそこまでマネできないと言う。

 それを聞いて改めてミズキを見ると、こっちに気付いたのか少し照れながら笑顔で手をふっている。思わず手を振り替えすが、それを見た皆が少しニヤニヤしてきた。照れくさい。


「そ、そうだ。今のミズキが使った力は、新しい召喚獣の麒麟“キーク”の力だ。帰路に着く前に、一度みせてもらったらどうだ?」

「そうですわね。では、そういたしましょうか」


 そういってフローリアやミレーヌは、含み笑いを残してミズキの方へいった。それをみていたゆきが「ごまかすのヘタすぎー」と笑っていたけど、わかってるよ。自覚あるよ。


 ともあれコレで本当に洞窟調査終了だ。あの湖底の神殿は、また後日ゆっくりと調べよう。もしかしたら、先にニーベ湖へ行ったほうがいいかもしれないし。

 ……よし、戻りましょうかね。



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