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231.そして、石の意味と生まれた願い

追記:2019/04/12の更新はお休みします。次回は4/13の20:00を予定しています

 少しばかりの驚きもあったが、とりあえずは洞窟の調査探索は完了か。

 スカルドラゴンを確実に討伐できたのを確認して、俺はGMキャラから通常キャラに戻る。

 既に骨同志の連結も外れ、ただ大きな竜骨が散乱している中から核になっていたであろう魔石を見つけて拾ってみる。だがよく見ると少し違う。


「これは──魔輝石(まこうせき)?」

「え? うそ、本当!?」


 俺の声に真っ先に反応したのはユリナさんだ。そういえば、以前俺に魔輝石の事を教えてくれたのもユリナさんだったな。そんなユリナさんは、俺が手にのせている両手で余るサイズの魔輝石を凝視していうる。


「こ、これ……いったい何の魔輝石なの?」

「えっと、スカルドラゴンの魔輝石……なんじゃないんですか?」

「あぁ、ごめんなさい。そうじゃなくて、属性とか効果とか、そういう意味での何なのかしらってこと」

「そういえばなんですかね。俺なら一度ストレージに入れるとわかるので……」


 そう言って一旦収納して、UIでストレージの中を見る。先程入れた魔輝石は……



  『魔輝原石』x1



「あれ、なんだこれ。魔輝……原石?」

「魔輝原石ですってええええッ!?」

「うわっ!? な、なんですか!」


 そこに記された文字『魔輝原石』を口にした瞬間、ユリナさんが先程よりもさらに大きな声をあげる。あまりにも大きくて、スカルドラゴンの咆哮よりも頭に響いた。


「ちょ、ちょっ、カズキくん! 本当に魔輝原石なの!?」

「落ち着いて下さいユリナさん。ええ、確かに魔輝原石らしいです」


 俺の言葉を改めて聞いて、ユリナさんは「はぁ~……」と驚きと呆れと脱力と、という幾つもの感情ないまぜな声をあげる。


「ユリナさん、その魔輝原石ってなんでしょうか?」


 周りを代表してフローリアが質問をする。どうやら彼女だけじゃなく、皆知らないようだ。周囲からお視線をうけ、ようやく少し落ち着いたユリナさんが説明してくれるには。


「魔輝原石というのはね、いわゆる特殊能力が付与されてない魔輝石なの。通常であれば魔石は、魔物に宿っている時点である程度の特徴が付与されるのは知ってるわね。されないのはウルフなどの下級の魔物で、それらは討伐証として提示するくらいしか利用価値がないわ。そんな中極まれに、魔石に自身の能力が付与されなかったのか、『魔原石』が入手できる場合があるの」

「魔原石……別名、魔写石(ましゃせき)と呼ばれる石ですね」


 そう言ったのはエレリナだ。さすがにユリナさんほどじゃないけど知識が深い。


「そうでう。その魔写石ですが、希少価値はありますが実はそこまで重宝されているわけではありません。その理由は“魔石の能力を複写する”という性質のためです。つまり手元にある魔石を実質もう一つ増やすだけ、という石なの」

「それってつまり、よほど貴重な魔石をもってない限りは宝の持ち腐れってこと?」

「ええ。でも、出にくさの割には利便性も低いのよ。なんせ複写できるのはあくまで“魔石”だから。以前カズキくんが見せてくれた魔輝石、あれは複写できないし」


 なるほど、そうなると魔石の中でも貴重なやつの現物がないと意味が無いのか。俺が知ってる範囲だと浄化の魔石だけど、あれはミズキの召喚獣クリムのおかげで量産できちゃうし。

 あ、でも魔輝原石って名前からしてこっちは──そう思いながらストレージから取り出す。


「じゃあこの魔輝原石は、魔輝石の能力を複写できるの?」

「……と思うでしょ? でもね、実はそうじゃないの。こっちは“魔法を込めて使用することが出来る”ようになるのよ!」


 少々意気込んで言い放つユリナさんだが、俺は「ほぉ」という感じで関心しただけだった。だが──


「そ、そうなんですか!? そ、それは、それは……っ」

「すごいです! すごいです!」

「カズキ、カズキ! これに何を込めるの!?」

「お兄ちゃん、ねえ、お兄ちゃん!」


 俺以外がこぞって驚き騒ぎ始めた。え? なんでこんなにも盛り上がってるの? 不思議そうな顔をしていると、興奮しながらも少しだけ落ち着いているエレリナがそっと教えてくれる。


「例えばですね、この魔輝原石にカズキの【ワープポータル】を込めたと考えてみてください。そうすれば皆がカズキがやっているのと同じように、登録した場所なら転移が出来るようになるのですよ。その覚えた場所が、個人なのか石なのかはわかりませんが、とてつもない事だと思います」

「あー……それはなんかわかる気がする」


 ゆきをLoU時代のマイルーム機能の応用で、一方的な彩和→王都転移を可能したら、それだけでも皆が随分と羨ましがった。これが双方向転移が複数個所可能ともなれば、とんでもない事になってしまう。

 騒いでいた皆も、このエレリナのたとえ話を聞いて、より一層色めきだって騒ぐ。

 それを見ながら、逆に冷静になってユリナさんがやってきた。


「ふふっ、なんか皆すごく楽しそうね」

「そうですね。こんな洞窟の最奥で、あんまり騒がしいのもどうかと思うけど」

「大丈夫じゃないかしら。ここのボスは倒しちゃったんだし、今ここで一番強いはカズキくんでしょ」


 そう言って笑顔でちゃかしてくる。だが、その表情をすぐに引き締め、


「それで? さっきのあの姿、なんだったのかしら?」

「え? あー……アレですか……」


 すっかり忘れていた事を、ユリナさんが追及してきた。あの姿をこの世界の人に説明するのは、どうやっても難しい気がする。別にユリナさんならいいのかなぁとは思ったが、どこまで話してよいやら……という考えが強い。

 さてどうしようと少し困ってる俺を見て、ユリナさんがかるく溜息をつく。


「……言いにくいことかな?」

「すみません。言いにくいというか、いろいろと付随して複雑な事情が」

「わかったわ。おそらくあの姿って、カズキくんがフローリア王女やミレーヌ様、その他彩和の子たちや、エルフ族とか、色んな人と仲が良い事にも関係してるのよね」

「まあ、そうなりますかね」


 そう曖昧に答えるしかないので、申し訳ないが言葉を濁す。だが、それを聞いたユリナさんは。


「うん、わかったわ。じゃあ私はもう聞かないし、もし他の人達から追及されたときは冒険者ギルドで対処します。それでも無理そうなら……」

「その時は私が王女として、きちんとおさめますので」


 いつのまにか騒ぐのをやめてフローリア達が傍にきていた。


「フローリア王女、王都ギルドのサブマスターとしてもお願い申し上げます」

「もちろんです。それと、ユリナさんは私たちの大切な友人です。そんな肩書などなくとも、いつでもご相談下さい」

「はい、お気遣い感謝いたします。そして……ありがとうね、フローリア様」

「はいっ」


 その光景を見ていた俺は、いつしかユリナさんも随分皆とうちとけたなぁと感じた。これならヤマト領がきちんと動き出した時のギルドも安泰かな。


「だったらさ、いっそのことユリナさんもカズキのお嫁さんになればいいんじゃない?」

「え? 私がカズキくんの……?」

「はぁ!? いやいや、さすがにもうこれ以上は……」


 ゆきの発言に思いっきり驚く。なんかもう、随分親しい感じだけどユリナさんはそうじゃないんだよ。それにきっと、その話お流れだとエリカさんも入ってくるだろうに。


「んー……カズキくんのお嫁さんねぇ……」


 軽く天井をみあげながら、んーっと考えているユリナさん。いや、嫌いってわけじゃ決してないけど、そういう範疇に絶対入ってこない人なんだよ。なんていうかなぁ……多少雑談もする商店街のおねえちゃん的な?

 そんな事を思って様子をみていたのだが。


「やはり私は辞退するわ。あ、エリカもきっと同じ事言うわね。それよりもどちらかと言えば……」

「えっと……何、かな?」


 どこかニヤリという擬音が聞こえそうな笑顔で、ユリナさんがこっちを見る。なぜだろう、どこか逆らえないし逃げられないような雰囲気がする。魔物とかクストとか、そういうのとは違い緊張が漂う。


「ヤマト領で私とエリカが、それぞれギルドマスターになるでしょ? その見返りといったら何だけど、ちょーっとだけお願い聞いて欲しいかな?」

「は、はい。なんですかね……」


 何だろう。賃金報酬のたぐいならいいけど、そんな話をユリナさんがするとは思えない。

 はて何を言われるのかとおもっていると──


「ヤマト領って色々と人の往来が多いでしょ? その中から私やエリカにいい人(・・・)を見つけ欲しいなぁって……ね? どうかしら!?」


 そういってすごい迫ってくる。その迫力ときたら。

 でも、ここで何か妙に腑に落ちた。

 ユリナさんとエリカさんの、ヤマト領地という新天地での再出発。実はそこに、婚活という目標が掲げられていたのだと。

 そうか……俺の領地は、婚活場所になるのかー。俺がそれを言うのもどうかと思うけど……結婚かぁ。領地が開かれる頃には、本当に考えないといけないかも。



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