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212.そして、忘れていた用件へ

追及:3/22の投稿はお休みします。次回は3/23予定になります

 紆余曲折あって、ヒュドラ……もといサラスヴァティがフローリアの召喚獣魔となった。これによりダークエルフ達が懸念していた問題も、予想とは違う方法であったが解決ということだ。

 だが気になるのはダークエルフ達の反応だ。実質これで被害は無くなると思うが、当初は討伐しようと思っていたヒュドラを従えてしまったことに、どんな反応をするのか。それがちょっとだけ気になる。

 ……なっていたんだけど。


「おぉ、これがあのヒュドラだというのか」

「なんとも清らかな気をかもし出す獣魔じゃないか」

「まわりの精霊達も、なんと穏やかな様相をしているのだ……」


 なんかすごい神聖視されてるんだけど。

 エルフの里で、古代(エンシェント)エルフであるご神木をフローリアが救った話は、ダークエルフ達にも伝わっており、こちらでも聖女フローリアは大歓迎で迎えられた。そのフローリアがヒュドラを浄化し、そして神の御遣いとも言える真っ白な蛇に生まれ変わらせて従えた、という事になっている。おおよそ事実だが、微妙に話の端々に神々しい要素がちりばめられている気がする。

 それに気になったダークエルフ側のヒュドラ被害だったが、基本的に彼らはヒュドラの生息域に近付かなかったので、被害は出てなかった。それもあって、ヒュドラを聖女の獣魔として認めることにさしたる抵抗がなかったようだ。


 ちなみにこのサラスヴァティも、他の召喚獣と同様に普段は指輪の魔石の中へ戻すことが出来る。契約した洞窟からダークエルフの集落へ来る間も、普通に地上を歩くので目立たないように一度送還しておき、ここで召喚した。

 あと残念ながらヤオのような会話能力もなければ、人型変化能力もない。まあ、このあたりのスペックは一般の召喚獣と同じだろう。ヤオが特別すぎるだけだ。


 とりあえずこれでダークエルフからの依頼は完了だ。

 ただ、マリナーサとエルシーラには、少し聞きたいこともあったので二人と俺、フローリア、そしてヤオの5人で集落の一室を借りて話すことにした。

 話というのは無論、あの黒い霧関係だ。


「そういえば火竜の話からすると、アイスフェニックスは古代エルフとも知り合いなのかな?」

「ええ。元々そういう経緯もあるから、私達エルフは火吹き山に棲むアイスフェニックス様に会うことが出来るのよ」

「今回はスレイス共和国の側の山に火竜様にもお会いしたことを伝え、その後件の黒い霧の話をお話しておいたわ。今のところ何か起きた様子はないとの事だけれど、古代エルフ様や火竜様の結界をも越えてくる存在ということで、懸念事項として心に留めておいて下さるとの返事をもらったわ」


 マリナーサとエルシーラが今回の結果を報告してくれた。先ほど簡単には聞いておいたが、用事も済んだ今改めて聞いておくべきことだからな。

 そして話によれば、とりあえずアイスフェニックスの方は警戒を強化して現状維持と。まあ、それしか今できることはないしな。


「あとはノース湖にいる“主”と呼ばれる大亀か」

「その大亀というのは、どの種族の方なんでしょうか」

「どうだろうなぁ……ヤオ、大亀と聞いて思い浮かぶものって何かあるか?」

「亀……あまり詳しくないからのぉ。玄武くらいしか思い浮かばんな。あ、あと手足をひっこめて火を出しながら空飛ぶヤツとか」


 ……いつ見たんだよそんなもん。まさか、家にあるアニメや特撮のBOXを片っ端から見てるんじゃないだろうなぁおい。


「フローリアは何か亀の魔物とか、神話の魔獣でもいいぞ」

「そうですね……エジプト神話にアベシュという亀の神様がいますが……」

「ほぉ。どんな感じなんだ? といっても亀のバリエーションなんてそんなには無いだろうけど」

「えっと……。頭が亀になっています。そして首から下は人間の男性です」

「………………は?」


 言われた内容を想像してみた。でも脳裏浮かぶのは、亀の形の被り物をすっぱりかぶった裸体のおっさんだ。……うん、これは多分違うな。そんなのがいたら“主”とは呼ばれないだろ。通報案件だ。

 まあ、別に無理に会う必要もないだろう。出来れば一度会って、経緯を話して十分注意をしておいてほしかったとは思うが。


「おお、そうか。主様よ、ちょっと別の話じゃがよいか?」

「ん? いいぞどうした」


 ふと何か思いついたようにヤオが声をあげる。とりあえず聞いてみないと始まらないので、話してくれとお願いする。


「あやつ、サラスヴァティは先ほどの様子からしておそらく、水神の御遣いとしての力も有しておるじゃろう。となればもしかすると、水の中に入る為の手段を何かもっているやもしれんぞ」

「おおっ、そういう事か。でも話とか出来るのか? ヤオと違って会話は無理だろ?」

「会話はできなくとも、わしなら意思疎通できるぞ。王女よ、またあやつを呼び出してくれんかの」

「はい。では、きて下さいサラスヴァティ」


 フローリアの声に応じて、指輪から出た光が彼女の前に降り立ちそして白い蛇の姿となる。ただ、主従契約をしたおかげか、大きさは変動できるようになった。今は背丈が人間より少し高い程度になっている。


「さて、サラスヴァティよ──」


 呼びかけるヤオの目が、縦に細くなる。例えるなら“蛇の目”といわれる感じになっている。そして言葉ではなく、何かもれ聞こえる音のようなもので互いの意識を向け合っているようだ。

 そのやりとりを暫し繰り返した後、ふっとヤオの目が普段の状態に戻る。


「──なるほど。つまり自身の主……こやつでは王女じゃな。主だけならば可能だという話じゃ」

「それはつまり、主に会いにいこうと湖底へ向かうことができるのは、フローリアだけという事か?」

「わしも可能じゃ。あとはミズキのペトペンもじゃな。行くというのであれば、王女が話して、わしが護衛、その様子をペトペンの目で皆に見ていてもらう……といったところじゃな」

「そうですか。……ありがとうサラスヴァティ、戻って下さい」


 お礼をいって送還させるフローリア。召喚獣も二匹目なので、その辺りの扱いはもう慣れたものだ。


「まあ、あわてて様子を見に行くことはないだろう。火竜の言うとおりなら、大亀にはそうそう危害を加えることはできないとの事だし」

「そうですね。ではそろそろ帰還しますか」

「あ、ちょっとまってください!」


 用事もないだろうし、戻ろうかというフローリアの発言を、あわててエルシーラが止める。アイスフェニックスの調査報告も聞いたし、突発のヒュドラの件も解決したし、もう何もないんじゃないのか?


「カズキ忘れてるでしょ? ギリムに依頼した武具製作の話」

「ああ、あー……うん。忘れてた」


 ついつい忘れがちだが、以前砂漠の洞窟で倒したボスモンスターの素材で、武具を作ってくれるって話だったんだよな。別に武器マニアってわけじゃないけど、面白そうだからって事でお願いした感じだ。実際のところ、今つかってる武器で実用に足りてるからなぁ。

 でもまあ、俺以外にとっては何かいいものあるかもしれないか。

 あと、ラピスアンタレスとかの素材で作った武具とか、LoUでは存在しなかったからそういう部分での興味はあるな。


「そうですね、行ってみますか。あ、でも全員いたほうがいいですか? とくに防具とかは、つけてみての調整だったりとか」

「あ、それなら多分大丈夫です。レア素材で作る防具は、装備した人に合うように自動で調整されますので」


 おお、なんかちょっとだけいい感じのご都合設定だな。でもまあ、そういう状態じゃないとMMOとかで入手した防具が、サイズが合わないから着れない事態とか発生するもんな。

 もしドロップした武具に、S/M/L/XLみたいなサイズ記述あったら面倒臭いだろうな。というか、即効で叩かれて廃れるわな。


 そんな訳でドワーフの武具職人ギリムのところに、完成した武具を取りにいくことになった。

 その前に、一度フローリアは王城に戻って侍女に話を通していた。まあ、いきなり姿が見えなくなったりして、不安にさせてしまうのもどうかと思うしね。

 ただその侍女がこちらを見たあと、フローリアに「頑張って下さい」との声援を送っていた。

 何を頑張るのだろうか。ん~、わからん。



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