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21.それは、乙女'sのポリシー

今日は無事更新。明日はまだ未定です。

「ふふ。お帰りなさい、カズキ様」

「……ただいま、フローリア様」


 ログアウトしたのもつかの間、すぐにきびすを返すようにキャラチェンジをしてログイン。

 一応GM.カズキで抜けるとき、カズキの座標に合わせて抜けたので、遠目には表面に纏っていた鎧などを脱いだように見えたかもしれない。

 しかし、いつまでもこの場にいるのはあまり良くない気がする。なんといっても隣にいるのが、王女様だっていうのが一番マズイ。

 先ほどデーモンロードを倒した人物と俺が同じだと知られるのは、この先どう話が転がるのか予測できないから出来れば止めたい。また、そうじゃなくても一般市民の冒険者が王女の横にいるのは、色々とまずいような気がしてならない。


「すみません、流石に王女と一緒にいるのを見られるのは……」

「……そうですか」


 上手いニュアンスの説明ができるかなと思っていたが、フローリア様が聡明だったためか、多くを語らずとも理解してくれた。なので、すぐに姿を不可視にする【インビジブル】を発動する。

 だが、当然フローリア様には見えてしまっている。もっとも、国中探しても今の俺を見れるのはフローリア様だけだと思うけれど。

 姿を消した状態で軽く礼をすると、フローリア様はかすかに頷いて返事をしてくれた。

 そしてそっと立ち去ろうとした時、王国騎士団の責任者らしき人物が数名の騎士を連れフローリア様の下に来た。


「フローリア王女、先ほどまでここに居た者は……」

「あれはGM様……神の御使い様です。この度の騒動を沈める為に顕現なされました」

「なんとっ……」


 フローリア様の言葉に、驚きの声をあげる。

 正確にはGMは御使いではないが、無理にややこしい話にする必要もないし、フローリア様もそれは理解しているので公には御使いだという事になった。


「それで、御使い様は今どちらへ……」

「戻られました」

「え?」

「御使い様は此度の役目を終え、神の国へとお戻りになられました。後の事はこの国の者がやらなければならない事です」


 そう説明しながら、フローリア様は視線をこちらに向ける。どうやら後はまかせてよさそうだ。

 もう一度頭を下げ俺はこの場から離れた。

 【インビジブル】で姿を消している間は他の魔法はほぼ使えない。これで【ムーブ】とか使えたら物凄く使い勝手がいいのだけど。

 仕方ないので王都の中まで自分の足で向かう。人だかりの門を抜けながら、集団の中にいるミズキを探す。すぐに見つかるが、やはり心配そうな顔で外をきょろきょろしている。

 近くの建物の影へいって【インビジブル】を解除して声をかける。


「おいミズキ」

「え? お兄ちゃん!?」


 驚きながら振り向くミズキ。俺の姿をみると一瞬表情を崩すも、すぐに怒ったゆような表情を向ける。


「どこ行ってたのよ! さっきのを誘導して街の外の方に行ったのはわかったけど……」

「いや、とりあえず被害がでないように外に誘導したら、丁度王国の騎士団らしい人たちが来たからそのまま任せて退避してたんだよ」


 まあ、この辺りはぼやかしておけばいいだろ。本当の事なんて説明できないし。


「でも、よかった……」

「ごめんな、心配かけて」

「……うん。心配した」


 俯いて俺の胸に額をつけるミズキ。流石にちょっと心配かけたなぁと思い、今回はちゃかさずに好きなようにさせてやる。

 しばらくそうしていたが「もう大丈夫」と言いながらそっと額を離した。だが、その表情はうつむいたままでよくわからなかった。


 とりあえず機嫌は直ったようなので良かったと思っていると、門の外を見ていた人だかりから徐々に歓声が聞こえてきた。

 何だろうと思ってそちらを見ると、騎士団が戻ってきていた。要するにちょっとした凱旋だ。

 先ほどの戦闘はその場にいたのであればまだしも、街中から遠くを見るようにしていたら事実関係を認識するのは困難だ。

 唯一理解できたのは、聖王女であるフローリア様の神聖魔法が空と大地を眩く輝かせ、その力で強大な悪の化身を葬り去った……という感じだろう。


 隊列を成して帰還してくる騎士団の中、フローリア様の姿が見えると観衆の声が一層湧き上がる。そこには目の前にいる英雄を湛える、そんな万感の想いが込められていた。

 民衆の声にやさしい笑みを浮かべ手を振り返すフローリア様。

 よく見ると、いつの間にかフローリア様は白い馬に騎乗していた。そういえば、白い愛馬がいると話していた気がする。


「……王女様、綺麗……」


 隣で同じ様に見ていたミズキが、意識せずに言葉を漏らす。それに関しては同意だ。

 しかし何より、今回はフローリア様に助けられてしまった。GMの能力は無比の強さだが、こっちのキャラは結構強いレベルの一般冒険者だ。今回の事は、己の過信によるミスだと反省しないといけない。

 自問自答のミニ反省会をしている間にも騎士隊列は進んで行き、俺達の前をフローリア様が今通過しようという時。

 ふとこちらを見たフローリア様が、そっと微笑みを浮かべて僅かに会釈をした。

 それはあまりにも小さな動きで、ずっとフローリア様を見ていたとしても、誰も気付くことがないほどの動作だ。

 ……そう、思ったんだが。


「お兄ちゃん」

「…………何だ?」

「説明して」

「…………何を?」


 横から聞こえるミズキの声がちょっと怖い。なんか、ミズキから聞いたこと無いような低く響くような声が聞こえてくる。恐る恐るそっちを見ると、なんだか表情がないのにとっても怖く感じるミズキが。


「なんで王女様がお兄ちゃんを見て微笑むの?」

「……気のせいじゃないか?」

「気のせいじゃないよ」


 ミズキのステータスは無駄にチート級だった。あのわずかな動きや視線も、ミズキであれば十分気付いても不思議はない。

 まあ、真実全てを話すわけにはいかないが、納得する説明はしておくべきか。


「さっきも話しただろ。外に誘導して騎士団の人達に任せたって。その時王女様もいたから、それに対しての事だろ」

「……そうなの?」

「それ以外あるわけないだろ」

「……それもそっか。うん、お疲れ様っ」


 そう言って、さっと気持ちを切り替えたのか、笑顔で俺横にたって腕を組む。やれやれ、機嫌を損ねなくてよかった。

 そう思った瞬間、なぜか一瞬寒気を感じるような視線を感じた。

 どこからだと視線が飛んでくる方へ意識を向ける。そこには……、


「……………………」


 何故かこちらを少し振り返って、ジト目をおくるフローリア様が。というかフローリア様、美人の睨む表情ってすんごく怖いんですけど。

 まあ、どうしようもないし、する必要もないだろう。そう考えていると。


「うわっ?」

「えへへ~!」


 ふいに腕を強く引かれ、ミズキに先ほどより強く腕をつかまれる。嬉しそうに俺のお肩に頭を乗せて、そして何故か前方を通り過ぎていくフローリア様を見て、


「フッ」

「!?」


 何かを勝ち越したような、愉悦の表情を浮かべる。それを見たフローリア様が、一瞬激しく感情を揺さぶられる。表情こそ激しい変化はなかったが、その心情は激しく動揺しているのがわかる。


「お、おいミズキ、お前なぁ……」

「なーんーのーこーとー?」


 絶対にわかっててやってるな。

 ほらみろ、騎士団と共に遠ざかっていくフローリア様がいつまでもこっちを睨んでるし、心なしか口元がひくついてるじゃないかよ。

 俺は大きく溜息をついて、せめてもと完全に視界から消えるまでフローリア様を見送った。






 とりあえずマイホームへ戻った俺は、そのまま自室へ入りすぐログアウトした。

 なんだろう、デーモンロードを倒した後から、えらく疲れた気がする。

 身体的といより精神的に疲れてしまったので、リアルではまだ午前中なのだがお昼過ぎまではこっちで休むか。


 そうなると、せっかくだからパッチでのアプデ仕様を検討してみるか。

 プログラムを組んでいたら休みにならないだろ、という考え方をする人もいるが、俺にとって仕事じゃないプログラムは自分が好きでやっている事であり一種の趣味だ。実際仕事でプログラムを組んでいた時でさえ、気分転換に別のプログラムを組んでいたりもしていたからな。

 現実逃避で作業に没頭してたこともあった気がするが、今回はタブン違うハズ。


 ……さて。

 何から着手しようかなぁと思ったが、やっぱり『ペット機能』だろうか。

 過去に、実装を目指してミーティング用にまとめた資料というのを作ったが、今回それを自分の復習として目を通して見る。

 元々ペットに限定せず、プレイヤーキャラに付いてくる“お供”的な存在用に、キャラクターデータの構造体に幾つか別管理データへのリンクパスを用意してある。実際はサービス終了前にそこを使用する事はなく、データが未設定のままずっと今日まできてしまった。ここにペットデータへのリンクを張ることになる。

 元々ペットを入手できるのは、マイホームを入手したプレイヤーという仕様設計もあった。これはそのまま“生かし”でいい。ミズキはマイホーム発のNPCだし、フローリア様の場合はマイホーム以上に機能満載な王城のデータ構造に組み込む形になる。

 そういえば、以前ペット機能を考えた時にも浮かんだことだが、ペットの立ち位置はどうしようか。完全に愛玩動物としての存在か、召喚モンスターみたいに一緒に戦うのか。

 戦うとなると、それ用のバトルデータとかも必要になってくるな。また召喚という立ち位置なら、それらを実行するためのアイテムや条件まで……。


 というか、そもそも……何をペットとして実装しようか。


 あまりにも世界観を壊すようなものや、迷惑になるよなものは却下だ。

 だが、そうではなくリアル(こっち)での一般的な、犬や猫といったものならいいのか。

 フローリア様は白い馬をかわいがっているから、そこへペガサスとか実装してもあまり良さげには思えないし、なにより馬に失礼だ。

 ミズキは……。

 ミズキってどんな動物好きなんだ? まさか動物が嫌いってことはないだろうな?

 ペット機能実装までに、なんとか調べておいたほうがいいかな。


 ミズキをこっちの世界の動物園に連れて行くとかは……さすがに無理だよなぁ。


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