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111.そして、次なる目標をかかげる

 フローリアのお祖母(ばあ)さまと話した日より数日が経過した。

 その間にて、新領地となる場所の確認と、おおよその計測等が行われその報告が国王に届いた。すぐさま俺も呼ばれ、結果を確認することになった。


 まず領地候補として選定された場所は、当初の予想通り現在の中継道を挟む位置取りで、沿って流れる川にもっとも近くなっている場所だった。グランティル王国とミスフェア公国から見て、丁度中間あたりだったことも大きな要因だったようだ。

 それで、規模はどのくらいだろうか……という疑問がわいたのだが、結果およそ2平方キロメートルほどの領地らしい。ただし、これは最初の領地であり、今後どんどん広げていく予定だとか。

 一見2平方キロメートルと聞くと、随分と小さいと感じてしまう。実際『国』として考えると、異様に小さいのは事実。だけどコレ、実はモナコ公国とほぼ同じ大きさなんだよな。もっと小さい国だってあるし、国ってのは面積で決まるもんじゃないんだよな。


 おおよその見積もりは、国王の命をうけた測量隊により算出された。だが当然ながら俺の目標は、それを土台にした国としての地盤造りだ。

 そんな領地の地盤だが、少しばかり俺にしかできない方法を使うことにしている。というわけで、俺はちょっとログアウトした。




 まず調べたのは開拓についてだ。基本何もない場所を領地とするならば、それ相応の工事が必要になってくる。もちろん異世界(あっち)にといてもその知識はあるだろう。だが、やはり現代知識に比べて劣るのは否めない。

 まず立地条件を考慮して色々と調べてみる。そんな中、大きな川の傍に街をつくる事に関して色々とわかってきた。

 まず何より土台問題だ。川が近いということは、当然その土地が常に水にさらされているということにもなる。川というのは水をもたらす恵みであると同時に、きちんと整備管理しなければ氾濫を呼び水害の引き金にもなりかねない。

 とはいえ以前見てきた川は、極端な曲線を描いているでもなく、穏やかにながれていた。川幅はあったので水量はあったが、増水時に川岸を濁流で圧迫するような事はなさそうだった。そうなってくると、川およびその周囲の地盤は既に安定しているのだろう。用水路を引き込むための工事に注視すれば、地盤関係は問題なさそうだ。

 領地上流側から水を引き、浄化の魔石による処理を施した水を領内に流す。そして上水道で各施設や家庭に水をひく。その施設から出る汚水は、下水へ流すのだがもし可能であれば先に魔石で浄化して排水するようにしよう。水路の設計は、また領地を視察してこないとダメかな。


 そんな事を考えていて、あることに気付いた。

 たしかに水は浄化できる。でも、人間が生活するにあたって必ず出る問題がある。……ゴミ問題だ。

 浄化の魔石の効果はあくまで『浄化』。ゴミ山に浄化の魔石を使っても、多分“綺麗なゴミ”になるだけで解決にはならない。

 となると、それに適した手段を何か用意しないといけない。

 さてどうしようか。一番すぐに思い付いた発想は、浄化の魔石と同じように物を分解する能力をもった魔石を使うことだ。だが、LoUではそんな能力のついた魔石はなかったと思う。

 基本的にLoUでの魔石は、武器などに付与する攻防型や、戦闘での支援強化用でありそれ以外の用途を見越した設定はしていない。なんせLoUはゲームなんだから。そこで生活アイテムを出されても、狩りには何の役にも立たないから。

 だがあの世界では違う。魔石の効果が同じものもあれば、何の効果ももたない場合もある。またクリーンスライムのように、俺達が用意してない未知のモンスターもいる。そういった存在の魔石に、何かいいものがあるかもしれない。

 本当に何も手段がないのならデータをいじって作り出すのも一つの手段だが、できるだけ向こうの世界にあるもので対応したいと思う。知識だけは活用するけど、それ以外は現地調達だな。


 この後、もう少しだけ調べものをした。

 水道のこともそうだが、あちらでボーリング地盤調査の実施検討とか、その他外観などなど。

 存分に調べものをして満足したらひと眠りした。結果半日ほど感覚がずれてしまったので、そのままもう半日こちらで過ごすことにした。

 結果久々に一人で過ごす一日となった。以前ならなんともない毎日の事だが、今はちょっとだけ寂しいかもと思うようになった。




 そんな訳で翌日、俺は王都の冒険者ギルドにやってきた。

 中に入り受付の方を見ると……あ、いたいた。ご存じ冒険者ギルドの受付嬢で、俺にとっては近所のお姉さんであるユリナさん。

 どうやらクエスト受付業務中らしい。ちょっとだけ待ってようかな……あ、丁度終わったっぽい。


「こんにちはユリナさん」

「はい、こんにちは。今日はどうしたの?」

「実はまた少し聞きたいことがありまして……」

「また? カズキくんわかってる? 私はギルドの受付で、知恵袋じゃないんだよ」


 そう言いながらもニコニコしているユリナさん。適材適所ってやつだなぁと感心したり。


「以前聞いた浄化の魔石みたいな感じで、物を分解するような能力の魔石って知りませんか?」

「分解? ……それってどんな用途に使いたいの?」


 俺の言葉に少し眉をひそめ、小声で聞いてきた。何だろう、怪しい用途にでも使うと思われたのかな。


「用途は生活ゴミの処分に使えないかなって。まあ、前の浄化の魔石と同じで自分の生活を潤したいだけなんですけど」

「……まあ、カズキくんだから信用するけど。あんまり他の人には言わないほうがいいわよ」

「何故ですか?」

「冒険者とかってどこで恨みを買ってるかわからないでしょ。中にはあまり大きな声で言えないような事をしてる人もいるわけ。あ、ここのギルドにはそんな人はいないわよ。ギルマスが目をひからせてるから」

「……要するに、その分解能力をもった魔石を、犯罪使用している人がいるかもって話ですね」

「そういう危惧もあるって話よ。ここ王都や周辺国では報告がないけど、過去遠い国のギルドでは例があったらしいから」

「詳しいですね」

「まあね~。これでも伊達に長年ギルドにいる訳じゃないのよん。長年……長年いるのよね私……」


 あ、なんかめんどくさいモードに入った。まだ肝心なこと聞けてないのに。


「そのユリナさん? その魔石ってどうやったら手に入りますかね……?」

「あーあ、私このままだとずっと一人なのかなー……」

「あのユリナさん?」

「エリカもあんなだし、私達姉妹はもうダメなのかしら……」


 聞いてくれない。あと、ついでにエリカさんも槍玉にあげるのは可哀想です。

 しかたないなと思い、俺はストレージから浄化の魔石を一つとりだした。元々これを教えてくれたのはユリナさんだし、お裾分けしても大丈夫だろう。価値も理解しているっぽいし。


「あのユリナさん。ちょっといいですか? 手を出して下さい」

「んー何よー。何かくれるのー……」


 少しばかりふてくされてるユリナさんの手にそっと浄化の魔石をのせる。何かしらと自分の手を見て、そして魔石を見たあとその表情がとたんに引き締まる。あわててカウンターの水晶板にのせ、魔石の鑑定をする。そこに表示された内容を見て、目を見開いて俺を見る。


「ちょ、カズキくん。こ、この魔石って……」


 慌てながらも声をおさえてしゃべるユリナさん。うん、プロだね。


「浄化の魔石です。おひとつどうぞ」

「どうぞって、え? だって、これ一つでどれだけの価値が……え?」


 俺と魔石を視線が行ったり来たりしてる。ふむふむ、これがこの世界での反応なんだな。ちょっと新鮮だなと思ったりして。


「内緒にして欲しいんですが、浄化の魔石を大量に入手できるようになりましたので。なので一つお裾分けです」

「あ、うん。ありがとう……家の常備水に使うようにするわ……」


 とりあえずお礼を言ったけど、まだ全然気持ちが驚いてますって感じのユリナさん。この後、もう少しおちついたところで、改めて話を聞けた。

 分解能力を持った魔石は、そのものずばり『分解の魔石』。名前はまんまかよ、と言いたいところだが変に凝った名前がついてるよりましだ。

 その分解の魔石を持っているモンスターだが、どうやらサンドワームだとの事。LoU時代にもサンドワームはいたけど、その魔石は土属性の付与および抗体だったハズだ。どうやら戦闘系の能力ではないものに変化しているようだ。

 しかしサンドワームか。となるとこの近くじゃない、砂漠の方だな。

 LoUでは行ったことあるけど、この世界じゃ初めていくことになりそうだ。

 ……せっかくだから、皆に行くか確認してからにするか。


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