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109.そして、交わされる約束へ

一昨日および昨日は更新ができず申し訳ありませんでした。本日は少し遅れましたが、更新致しました。

 今、俺とミズキは王城の応接間にいる。といっても、よく利用させてもらっている応接間ではない。家具など室内全ての調度品が、あきらかにランクが違うだろうと感じるものばかりの部屋だ。フローリア曰く、ここは基本王族しか入れない部屋だとか。つまり、別の言い方をするならば、この部屋に入ったという意味を知れ……という事なのだろう。


「改めて名乗らせてもらおう。余はアインハルト・ハイネス・グランティル。グランティルの国王……というより、フローリアの父だと言ったほうが良いのかな?」


 そう言って王様は、いたずらっぽくニヤリと笑う。なんだろう、お堅い人じゃないのはいいけど、この意地悪オーラは間違いなくフローリアの親だ。

 そんな王様を見て、隣の女性が苦笑しながら咎める。


「ダメですよ貴方、困っておられるではないですか。ふふ、私はリリナリア・アイネス・グランティル。この国の王妃ですわ」


 優しい微笑を称えて自己紹介をする王妃様。その笑みは、フローリアが成長したらこんな感じになるのかな……という想像を、まさに具現化したような美しさだった。俺だけなく、同性のミズキも思わず見惚れてしまうほどであった。


「……カズキ。何をだらしない顔をしているのですか?」

「なっ……べ、別にだらしない顔なんてしてないぞ……」

「ふーん、そうですかー」

「あらまあ、フローリアがこんな風になるなんて……ふふふ。よほどカズキさんの事好きなのね」


 フローリアをあっさりと言いくるめてしまう王妃様。このやり取りだけで、フローリアの性格形成をつかさどっている要因を見たような気がする。

 俺もミズキも王様と王妃様へ、発言していいものかと思いお互いを見たあとフローリアを見る。それに気付いた大様は、


「ここは公の場ではない。余が勝手に出向いただけだ、自由に発言して構わぬ」


 その言葉を聞いてミズキが思わず疑問を口にする。


「ありがとうございます。それで、私達の事はその……」

「うむ。娘から聞いておるぞ。……いろいろと、な」


 またしてもニヤリと笑う王様。その笑みは、完全におもちゃを見つけたような楽しみが浮かぶ笑み。こっちの性格も色濃く受け継いでるなフローリアは。恐ろしいサラブレッドだ。

 王様達はフローリアから色々と聞いていると言った。おおよその見当はついていたが、次に王妃様が発した言葉に思わず驚いてしまった。


「カズキさんは、GM様なのですよね?」

「!?」


 王妃様の口から出たGMという単語。この世界にはGMという単語は存在しないはず……いや、あるな。確かその言葉の意味合いは……


「王妃様もGMをご存知なのですね」

「はい。“神の御遣(みつか)い”と呼ばれるGM様。その事は、聖女の資格を持つ者たちに語り継がれています」


 そういえばフローリアとの初対面はGMの方だったけど、その時もそう呼ばれた気がする。それにデーモン・ロードを倒した時も、フローリアが騎士達への説明に“神の御遣い”と言っていた気がするな。聖職者や信仰心の高い者たちには、そういう認識がなされているんだろう。

 王妃様の言葉を聞いて、フローリアとミズキは俺を見る。二人には、もうちょっと踏み込んで真実を話してあるので、俺の対応に合わせるよっという意味の視線だろう。


「ということは、王妃様は……」

「あら、ご存知ありませんでしたか。娘の前、先代の聖女ですわ」


 なるほど、やっぱりか。別に世襲制という訳ではないのだろうけど、この王妃様も聖王女と呼ばれていたというわけか。……あれ?


「あの、もしやと思いますが王様のお母様……その方ももしや聖女でしたか?」

「はい。お義母(かあ)さまはとても変わった方で、過去の常識に囚われない素敵な聖女でした」


 もしかと思ったがやっぱり。以前フローリアから聞いていた、過去のフランスからの転生者。俺ともゆきとも違う経緯でこの世界へやってきた人間。もし出来れば……


「会ってみたかったですね」


 ポツリと呟く俺の言葉に、全員が「!?」という顔を向ける。なんだ、どうした?


「あの、カズキ? もしかして、何か勘違いをしていませんか?」

「ん? 何が?」」


 フローリアの言葉の意味がわからず、思わず素で聞き返してしまう。俺、何か変なこと言ったか?


「あのですね……。その、お祖母(ばあ)さまは、ご存命ですよ?」

「………………えっ!」


 一瞬で血の気が引く。恥かしいというより、王族を勝手に死んでる事として話してたこと。それがどれだけ失礼に当たるのかを考えて。

 言われてみれば、べつにフローリアの祖母が死んだと聞いた覚えはない。聖女ではなくなったという事であり、別に亡くなったのではないのだ。


「……まあ、母上の話はともかくとして」


 王様から思わぬ助け舟が出された。ああ、よかった。でも後でフローリアに怒られそうだ。


「フローリアから聞いたが、どうやらお主ら兄妹は随分と規格外な冒険者だとか。カズキは先ほど言ったGMであり、いわばこの世界での神にも等しい者だと。妹のミズキは普通の人間だと聞いているが、冒険者としての実力が圧倒的だとか。フローリアのミスフェア同行に関して、騎士団の者と揉めたが圧倒したと聞く」


 あー……そんなこともあったな。流れでなんとなく勝負しちゃったけど、ギャラリーも多かったしアレは城内では周知の事なんだ。


「そして今度は娘のフローリアと結婚すると。そこには、新領地を元にした新国家設立までを見通していると聞く。余は国王として、そしてフローリアの父として聞く。……そなたに覚悟はあるのか?」


 真剣な目で問われる王様。そこには今言った通り、国を背負って立つ者としての意思と、大切な娘を思いやる父親としての何より強い想いが込められている。

 少し前であれば、この質問に関して狼狽していた自分がいただろう。だが、今の俺は違う。

 自分で考え、そして決めた。


「あります。俺はその覚悟を持って、自分の信念を貫きます。……必ず」


 俺の言葉にミズキとフローリアが笑顔を浮かべる。それを診て王妃様も微笑を浮かべるが、王様はただ俺をじっと見つめる。

 その瞳は別にフローリアやミレーヌのような、何かを見抜く魔眼ではないようだ。ただ、一人の人間としての意思で見ていたのだろう。


「……娘を、よろしく頼む」


 そして口にした言葉は、王ではなく、父親としての想い。

 その言葉の重みは、きっと俺が想像しているよりずっと重くて大切なものだ。だから軽々しく返事はできない。だから今俺の感じている想いを全て凝縮して返事をする。


「はい。必ず幸せにしてみせます」


 着飾らない俺の本音。

 そんな俺の言葉を聞いて、ようやく王様も緩やかに笑みを浮かべてくれたのだった。



今後、仕事が段々忙しくなりますと週末の更新をお休みすることがあります。その場合は前書き等に記載しますので、ご理解のほどよろしくお願いします。

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