目が覚めたらなんか異世界だったんですけど何か。
はじめまして。初投稿で緊張しております。よろしくお願いします。
……うん、眠い。
食後の授業ほど睡眠と格闘するという言葉の似合う時間はないだろう。
幸いこの先生は眠っている生徒を起こすことをしないため、俺らは何の気兼ねもなく睡眠をとることができる。
授業の初めは真面目に授業を受けていた生徒の多くは、すでに机に頭を突っ伏して眠っている。
俺もなんとなく黒板の上の時計で時間を確認し、眠りについた。
「ねえ、起きて。起きてよ。」
……誰かの声がする。
「……あと五分だけ寝かして。」
「早くしてよ!次の授業、魔術なのよ?あの先生、説教長いんだから。」
あー魔術か。じゃあそろそろ起きようかなー……ってかさ。
「……えーっと、魔術って何?」
寝起きの目をこすり、前を見るとウェーブのかかった茶髪のおっとりした感じの女子が
え、何言ってんの。とでも言いたげな顔をして立っていた。てかめっちゃかわいいんですけど。
彼女の顔から下に目線を移すと、彼女の着ている制服も、俺の知っているものではなかった。
「魔王を倒した勇者はそんなことも忘れちゃったの?」
魔王?勇者?ごめん何言ってんのこの子。てかめっちゃかわいいんですけど。
「……ごめん。君、誰?」
彼女に率直な疑問をぶつけてみた。
「えっ勇者、ひどいよ!」
いや、俺にそういわれても、困るんだよな。てかめっちゃかわいいんですけど。
「いや、ほんとに分かんないんだ。ゴメン。」
とりあえず謝っておこう。そうするに越したことはない。
「一緒に戦ったじゃない!戦争に行って!ほら、私が魔法使いでさ。」
あー魔法使いか。うんうん、めっちゃかわいい。てかさっきから何言ってるんだろう。
「どうしたの、熱でもあるの?なんか今日、変だよ?」
そう言った彼女は、俺の額を自分の額にあて、熱があるか確かめている。
てか顔!顔!ちょっと近すぎるんじゃないですか!?
俺の鼻から血が出たかと思うと、突然フッと意識が遠のいた。
なんだか遠くで彼女の声が聞こえた気がしたが、まあいいや。と思うと俺はそのまま遠くに行ってしまうような感覚がした。
目が覚めるとそこは乱雑とした部屋だった。
一見すると自分の部屋のようだが、物や配置がそれとは異なっている。
俺は寝ころんだままぐるりと後ろを向くと、パソコン画面に向かい、ひたすらキーボードをたたいているジャージ姿の女性がいた。
「……あんた誰。」
俺が訊ねると彼女は不機嫌そうにこう言った。
「ちょっと、失礼じゃない!女神に向かってそんな言い方!もう一度言いなおしなさい!」
いや、女神らしさは皆無だが、まあいい。
「あー、あなた女神ですね。もう分かりました大丈夫です。」
「なによそれ!……まあいいわ。それより、あなた今日変なことがあったでしょう。その理由を教えてあげようとあなたをここに連れてきたんだけど、知りたい?」
「……今も十分変だと思うんですけど知りたいです。」
「えーっと、簡単に言えば私のミスね。」
は?この自称女神、何を言っているんだろう。
「いやー実は私さ、中古のゲームを買って新しいキャラクター入れようとあなたの世界から適当にあなたを選んで入れたのよ。そしたら前の人のデータが残っててね。もうクリアしてあったというわけよ。」
うん。何そのゲーム。人入れるとか怖いんですけど。神様規模やばくね?
「それじゃあ元の世界に戻してください。」
「……それは無理。」
うわー。きっぱり断ったよ、この女神。
「クリアすればゲームから出られるわよ。てかクリアしたら出るしかないわ。」
「なるほど。それで前の人のキャラのデータだけあって、俺がそれになっちゃったってことね。」
「そうそう。」
「じゃあ俺もゲームをクリアすれば出られるのか?」
「でもあなた、どうやってクリアするの?」
「は?何言ってんだよ。普通にこう……。」
「でもこれ、もうクリアされちゃってるじゃない。」
……あっ、これ、詰んだやつだ。よし理解。
「というわけで、あなたはあの世界で余生を謳歌しなさい。」
「で、でも……。」
「もうクリアしてあったし、私は何も手出ししないわ。あ、ちなみに攻略本によるとあの魔法使いの女の子、主人公との結婚ルートらしいわよ?」
な、な、な、なんですとぉぉぉぉぉぉぉぉ!そ、それはー!!!
「……しょ、しょーがないなぁー!そういう事情ならどうしようもないもんなー!」
やばい。にやけが止まらない。
「……何デレっとしてんのよ、気持ち悪い。」
「さあ、早くゲームの方に戻してください。女神さま。」
「何よ急に。まあいいわよ。あ、ところで……。」
「何でしょう?」
「私が、この電源コードぶち抜いたら、あなたも彼女も即死だってこと、忘れないでね。」
「……は、はい。」
さーっと血の気が引いていくのが分かった。
女神はガチャガチャとコントローラーを操作している。
「……はい。これであなたは次に寝て起きたらもうゲームの世界よ。」
「よし。じゃあ、お休みなさーい。」
俺はその場で眠りにつこうと目を閉じた。
「ちょっと!あんた、女性の部屋で寝るつもり?何考えてんのよ!外行って早く寝なさい!」
女神は俺の腰に足をのせ、そう言い放った。
そして俺は女神に窓から蹴られ、無駄に広い彼女の家の庭に横たわった。
「……やっぱ帰りたい。」
俺は涙しながらぼそっとそう言い、仕方なくその場で眠ることにした。
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