確立した私、その魔女物語
私は、魔女のことを調べる魔女である。私らしい魔女という概念を探している魔女でもある。そんな私はどんな世界の常識に合わせて創られたのだろうか。その答えが、なんとなくわかったかもしれない。
一つだけの概念にとらわれず、自分の目でしっかりと見る。一つだけの目線だと、どうしても偏見などが産まれる。誤解だって生まれてしまうだろう。でも、誤解したままで過ごすのはもったいない。だからこそ、色んな場所、色んな人と話してみるべきだと私は考える。魔女図書館から外に出なかったなら、私は魔法少女の存在も知らなかっただろうし、会うこともなかっただろう。
魔法少女リフィー・シュアーに会った。彼女の豪快な生き方は、細かいことのみに囚われない自由な発想をしてもいいんだと私に語りかけてくれた。
魔法少女の春野すみれに会った。彼女は、魔女のことを凝り固まった悪い存在として見ていた。しかし、私と会うことで、その考えは変わり、魔女が悪いだけじゃないと知ってくれた。そのことが、目で見るということ素敵さを私に感じさせた。
二人の魔法少女は、『アル・フィアータとしての私』の生き方を示してくれたのかもしれない。しかしそれは、『私』という今までの人物が空っぽだったということを意味するのではない。今までの『私』を肯定し、それでいて新しい生き方を提示したのだ。
『Once upon a time』
もう一回、心の中で、別の言語で反芻してみる。
『昔々あるところに』
私は、昔々の物語の魔女にどこか憧れていたのかもしれない。役割があって、自分らしさを持っている。悪役の魔女にだって物語はある。各々が信じた生き方が、ストーリーが確かに存在している。だからこそ、悪役だけの魔女というのが納得できなかったのかもしれない。
――納得いかないなら、私が新しい魔女になればいい。
最近、私が考え始めたことだ。
魔女のあり方が気に食わないなら、私の手で『昔々』から始まる話を書き換える、『アル・フィアータの魔女物語』を作ってしまえばいい。良い魔女を待つだけの人生も、悪い魔女になるだけの人生も悪くない。けれども、私は私らしい魔女として生きていきたくなったのだ。物語の中には良い魔女も悪い魔女も登場させて、それとは違う風変わりな魔女も表現してしまおう。
「物語は限りなく自由なのだから」
ココアを飲んで幸せそうな顔をしている魔女がいてもいい。
カフェを経営している船乗りの恰好をいた魔法少女がいてもいい。
悩んで、悩んで、めいっぱい悩んで答えを見つける魔法少女だっていてもいい。
それらが否定される義務などないのだ。
だからこそもっとこれから色んなことを知っていきたい。魔女のことも、魔法少女のことも、人間のことも。世界はこんなにも面白いのだから。
「さて、そろそろ出かけようか」
私が好きなココアと、探して見つかった魔法少女が登場する魔女の本は持った。さぁ、あの素敵な魔法少女の二人に会いに行こう。
暖かくて、甘い食べ物が好きで、ちょっと変わっている。そんな魔女、アル・フィアータの物語は始まったばかりなのだから。