連続殺人
――ところで、連続殺人といえば。
一晩に一人現れる犠牲者。
なかなか分からない犯人。
と、イメージする。
だが、必ずしもそんな必要はない。
――――今、目の前で起こっているように。
一瞬で、皆殺してしまえばいい。
だって、『皆死んでしまえばいい』。
それが犯人の目的なら。
――――始めは狗藤さんだった。
大広間に戻ってしばらくしてだった。
入口を塞ぐように立った犯人に首を斬られた。
何も言えないまま、彼の大きな胴体が転がる。
有栖川さんが悲鳴を上げる。
次は、河東さんだった。
身構える間もなく、心臓を一突きだった。
なるほど、これなら使用人達も一刺しだろう。
彼は絶叫とともに息絶えた。
犯人は有栖川さんの前に立った。
「た、たすけて・・!!
おねがい・・ゆるして・・。おねがい、だから。」
「てめぇが俺に何をしたか分かってるのか?」
犯人が初めて口を開いた。
そして、その答えも聞かず。
「死ね。」
その身体をズタズタに斬り刻んだ。
「ひッ、ひぃいい!!」
碌房さんは這い這いをするように、
入口に駆け寄った。
「悪いな。全員殺す。」
さっくりと、背後から心臓を貫かれた。
「―――さて。最後はおめぇだ。名探偵。」
私は惨劇をぼんやりと見ていた。
何もかもが遠くにあった。
ずっと釘づけになっていたのは、犯人だった。
―――――嶋嶺 玲。
私が恋した彼。
血飛沫の向こうの彼はひどく美しかった。
けれど。
彼は私の知る『彼』ではなかった。