第一・第二の殺人
部屋に戻ると雪が止んでいた。
宴会のときは、ひどい吹雪だったけれど。
真っ白な雪が三十センチくらいだろうか?
ふんわりと積もっている。
―――天蓋付きのゴージャスなベッドで寝たからか
とても良い夢をみた。
雪が降る中、彼がはしゃいでいた。
ひらひらと雪が彼の肩や頬に触れる。
その笑顔が眩しい。
その笑いかける相手は私ではなかったかもしれない。
でも、私はとても嬉しかった。
ふいに彼が泣き出しそうな顔をする。
そして、口を開いて、
「 。」
―――起きる。
夢は夢だ。
でも、彼の笑顔は脳裏に焼き付いていた。
そして、彼の悲しそうな声も頭にこびりついて離れない。
なんて言ったのだろう?
もやがかかったようにはっきりしない。
その後、私はそれどころではない、
血なまぐさい現場を目の当たりにする。
―――嶋嶺 華が死んでいた。
殺されて、いた。
使用人も全員殺されていた。
明らかに自殺ではなく、他殺だ。
華は全身を切り裂かれていたからだ。
自分ではここまで出来ないだろう。
使用人達は使用人寮で息絶えていた。
驚くべきことに使用人達は折り重なるように倒れていた。
その心臓に近い位置に刃物傷がある。
そして、壁には血の痕と何か鋭利なものが刺さった痕。
それは・・考えると、皆を
壁に串刺しにするように殺したのだろうか?
一刺しで?
こんなに長い、人を何人も束ねて貫ける刃物・・
存在するのだろうか?
槍なら・・可能だろうか?
だが、それにしては傷口が小さいように思える。
槍でも・・こんなに正確に人間を貫けるものだろうか?
そもそもそんな凶行をする意味が分からない。
分かる必要もないのかも知れないが。
私が随分冷静に思えるかも知れないが。
私は結構動揺している。
殺害現場に遺体が転がったまま、
立ち会うというのはあまりない。
でも、それよりも醜い惨状を私は見過ぎている。
もう、慣れた、というより、感覚がマヒしている。
ことの経緯はこうだ。
華さんが朝食の時間になっても起きて来なかったのだ。
それで占い師の有栖川さんが起こしに行った。
けれど、返事がない。
鍵が掛かっている。
有栖川さんは何度もこの館を訪れている。
使用人に頼めばスペアの鍵があることを知っていた。
それで使用人寮へ向かった。
・・・そこで使用人達の惨状を目の当たりにした。
有栖川さんは震える足で、
医師の河東さんの部屋に向かった。
なんとか助かるかも、となんとかしてくれ、と思ったのだろう。
狗藤さんと碌房さんも
騒ぎに気づいて現場に向かった。
河東さんは全員の死亡を確認した。
そして、これは華さんも危ない、と判断した。
使用人が生きていなければ、鍵の場所も分からない。
河東さんと有栖川さん、狗藤さんは、
華さんの部屋に向かう。
碌房さんは警察の癖に、廊下で腰を抜かしていた。
かくいう私も、まだ部屋で身支度をしていた。
そして、河東さんと狗藤さんは苦労して
部屋のドアを蹴破った。
その部屋のベッドの脇に、華さんは仰向けに倒れていた。
明らかに死んでいた。
全身ズタズタで血の海だったからだ。
その血は窓へと続いて、そこで途切れていた。
そして、窓枠には、新雪が積もったままだった。
「・・・・密室??」
誰かが呟いたという。
そして、私が呼ばれた。
これ、後でつじつまが合わなくなるかもですね。
後で修正したら申し訳ありません。