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失恋と惨劇の館

そんな無色の日々。ある夜。

仕事で訪れた都市で・・

―――私は恋をした。



その日は雨だった。

私の名前、(レイ)と一緒だ。

両親も縁起の悪いキラキラネームをつけたものだ。

私は足早に帰宅の路につく。

その路地裏で・・―――彼に出会った。


出会ったというと語弊がある。

顔を合わせたわけではない。

ただ一方的に私が見た、見つめただけだ。



雨に濡れる彼は綺麗だった。

ただ綺麗だった。

淡い亜麻色の髪も、その虚空を見つめる琥珀の瞳も。

――― 一目惚れだった。


だが、彼が路地に座り込んでいたのが気になった。

その瞳が幾分、悲愴で虚ろに見えるのと。


その身体が雨だけでは無く・・

血で濡れているように見えるのが。

それに彼は雨天と時刻からすれば、薄い上着を羽織っていた。


あっと思ったとき、彼は黒服の恰幅の良い男に

連行されるようにして建物に歩いて行った。

走り寄るとそこは立派な、ホテルのような造りだった。

その路地には僅かな血痕が残っていた。


私はすぐさま彼を追いかけて行きたかったのだが。

さっきの黒服と同じ格好の男に

押し出されるようにして拒否された。

言うことには、貸切だし、一見さんはお断りらしい。

それなら、と私は向かいの宿で張り込んだのだが。

(思い返すと粘着質だ)。

それだけ彼に私は惚れていたのだ。

まさか自分がこんな一目惚れするとは思わなかった。

小説の中だけと思っていた。


だが、どうやら裏口があったらしく徒労に終わった。

私は地団駄を踏みながらも決意していた。

彼は明らかに事件に関係していた。

事件を解き続ければ、彼に会える。

そんな気が、無性にしていた。



このときばかりは、私はこの仕事に感謝した。

あの血痕だって、見慣れていなければ、

すぐに見落としていただろう。

真実にたどり着くには、この職業は好都合だった。

一般人だったら血なまぐさい事件には遭遇できない。

私は打って変わって意欲的に仕事に取り組んだ。


そのときだけは、私は自分の仕事が、

自分のことが、嫌いでは無くなった。




 ―――そして、それから随分経ったある冬。

私は招待状を受け取った。

友人を介してファンの女性から。

それが惨劇の始まりだった。

白鳥館の。

そして、私は何かの予感があった。

だから、休暇を取ると言って、助手を事務所に置いて行った。

そして・・・


私は目の前の光景に意気消沈していた。

「紹介しますわ。私の夫ですの。」


―――そこには夢にまでみた、彼がいた。


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