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地獄のはてのクリスマス

メリークリスマス。

すべての方にとって良き日でありますように。

私は一人で過ごします・・。




 ――雪が降る中、彼がはしゃいでいた。

ひらひらと雪が彼の肩や頬に触れる。

その笑顔が眩しい。

その笑いかける相手は私ではなかったかもしれない。

でも、私はとても嬉しかった。

ふいに彼が泣き出しそうな顔をする。

そして、口を開いて、


「たすけて。」

と言った。


私は彼を抱きしめた。


彼は

 「ありがとう。」

と微笑んだ。




 

 ――私は目を開いた。

真っ白い部屋。ベッド。

天国は、やはり白かったんだ。

というより、こんな私でも天国に行けたのか。

それに・・


枕元に、天使がいる。

あんなに焦がれた彼が。



「あっ!!目が覚めましたか!!」

「レイ、さん・・どうしてここに・・?

まさか、ほんとに貴方は天使だったんですか・・?」

私にとって天使のような存在の彼。

だが。


『何寝ぼけてんだよ!!てめぇは!!

ここは病院だよ!!びょ・う・い・ん!!』

彼は凶悪な顔で毒づいた。

・・・病院??

気が付けば、私の首や肩は包帯が巻かれている。

あれ・・・??私・・生きてたのか・・・。


「すみません。ゼロは口が悪くて。

でも、これでも貴女を心配していた照れ隠しなんですよ。

自分でやっておいてなんですが。」

レイさんは困ったように謝る。

『てめぇ!レイ!俺の心情を語るのをやめろ!!』

「だって、仕方ないじゃない。

君は僕なんだから。」

こうしてみるとシュールだ。

レイさんが一人二役だ。



「とにかく!ゼロはややこしいから黙っていてね。」

『おい!だって、おまえ・・』

「だって、じゃありません!!

僕は、君の無駄な不機嫌声でただでさえ疲れるんだから!」

・・・なんだかレイさんは思ったより強気だったらしい。

『・・・分かったよ。』

ゼロを黙らせてしまった。




「えっと・・その・・ゼロが、

いえ、僕のせいでごめんなさい。

怪我をさせてしまって・・・!!」

沈黙の後、レイさんが頭を下げる。

こうしてみるとレイさんは玲さんだが、

最初に見たときより生き生きして見える。

瞳も虚ろじゃない。

綺麗な眼だ。

・・・良かった。


「いいんです!

私は・・何も出来なかったから・・・。」

私は仮にも名探偵と呼ばれていたのに、

誰も助けることが出来なかった。


「そんなこと無いです!!

僕達は貴方に救われたんです!!」

レイさんに手をいきなり握られてドキドキする。

「え?!」

「今まで僕はゼロのこと、知らなかったんですよ!

なんとなく僕の意識がない間に、

誰かが守ってくれてるような気はしてたんですけど・・。

でも・・・」

そこでレイさんは頬を染める。


「貴方が僕達を抱きしめてくれたとき・・

僕達は本当に一つになったんです。

僕はゼロを認識した。

そして、二つで一つの意志で、

貴方を殺すのを踏みとどまった。」


??どういうことだろう?

意識と意志の統合。

それが私を助けるのに何の関係が・・??



「えっと・・つまりですね・・・。

初めてだったんですよ。

あんなに大切に想われて、優しくされて。

――――――僕達は、貴方を好きになってしまった。」



『~~~~っ!!レイ!!恥ずかしいこと言うなっ!!』

「だって、ゼロだったじゃない!!

殺したくないって思って僕を呼んだのは。」

真っ赤になってレイとゼロは言い争っている。


『あああ!!もう!!

そうだよっ!!俺はおまえに惚れちまったんだよ。

あんなふうに俺達を認めてくれた奴・・初めてだったから。

・・・ちぇっ!俺が初めに言おうと思ってたのに。』



私は、ぼぅ、と呆けた後、赤面した。

そして、涙を零した。

子どものように、わんわん泣いた。

ありがとう、と何度も言った。

私の地獄のような日々が報われた気がした。




 私がぐずぐず、と泣き止んだ後。

「そういえば、警察はこの事件を調査しないことになりました。」

とレイさんが言った。

「え?」

私はゼロが――レイさんが逮捕されるのだと、

暗澹(あんたん)たる気分になっていたのだけれど。

「警察の幹部が事件に巻き込まれた上に、

華さんは各界に顔が利いたので・・。

僕がすべての利権を握って、揉み消すことにしました。」

レイさんはすっきりとした笑顔で、

とんでもないことを言い出した。


う~~~ん。

思ったよりレイさんはいい性格をしていたようだ。

でも、私はほっとした。


私も人のことは言えない。

今までこれよりずっとひどいことばかり、

私は見てきた。

たとえこれが間違った道でも。

私はゼロ達を断罪することが出来ない。

大切な人の為なら、私も殺人の罪を一緒に背負おう。

ずっとずっと、私は二人と一緒に居よう。



「そんな貴方も好きです。」

「ありがとうございます。

今度は僕が、ずっと貴方を守りますから。」

『あんなことして、ほんとに悪かったと思ってる。

愛してる。

こんな俺だけど、一緒に居てもいいか?』

私は二人分の声に涙混じりに答えた。


「よろしくお願いします。」



「ところで、大事なことを確認していませんでした。」

『俺とレイ』

「どっちが好き『なんだ?』ですか?」

不安気な二人の顔。

私は愉快になって二人にキスをした。


真っ赤になった二人の顔。

「そんなの、決まってるじゃないですか。」


「もちろん、二人とも同じくらい、愛してます。」

ほんとうに、この人達の唇が一つで良かった、と思った。



「ありがと『な』うございます。」

「ところで」

『散々な夜になっちまったけど・・』


微笑んで二人の声がハーモニーになる。

「『メリークリスマス。』」


ケーキもプレゼントもないけれど。

その夜は生涯で一番幸せなクリスマスだった。





(「絶望探偵の失恋とQED(回答)完 )


(『あたしの中には たくさんの自分がいるんだわ。

… もしあたしが、たった一人の自分だとしたら

もっとずっと楽なんだけれど、

でも、そうしたら、いまの半分もおもしろくないでしょうよ。』

 『赤毛のアン』 L. M. Montgomery )






これにて完結です。

クリスメス・イヴに完結できて良かったです。


余談ですが、モンゴメリ先生は

実名で書籍を出すのが嫌だったそうです。

そのこだわり、見習いたいです。

それに習ってL. M. Montgomery としました。


ここまで読んでくださりありがとうございました!!

良いクリスマスを!!

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