動機
「それは・・貴方が好きだったからです。」
蚊のなくような声で私は答えた。
こんな形で告白なんてしたくなかった。
でも、それでも私は嬉しかった。
「はぁ?レイに?恋してたって??
はははっ!!それは笑える話だぜ!!」
彼は哄笑した。
「っ!!だからっ!!
彼なら、こんなこと、訳もなくする筈がないって。
何かの罠だって、思いたくて・・。」
私の声はしぼんでゆく。
そうだ。無理矢理、私は分からないフリをした。
本当は最初からほとんど、分かっていたのに。
「・・・・・そうだ。
レイは優しい奴だ。優しすぎた。
だから、あの女に利用されたんだ。」
彼の声が、湿り気と憎悪に染まる。
彼は犯行の動機を語り始めた。
それは残酷な真実だった。
―-―-レイの能力は『超再生』だ。
身体の傷が瞬時に再生する能力。
レイはそれで地獄をみることになる。
分かっていると思うが、俺達は正確には人間じゃない。
レイは縁があって人間に焦がれていた。
純粋に仲良くしたいと思っていたんだ。
それなのに、あいつはそれを踏みにじった。
あの女――華は陰陽師の家系だ。
それを利用して、レイを呼び出して名で縛った。
それで奴隷のように使役した。
家畜よりひどい扱いだった。
昼間は自分の夫として扱ったが、夜は違った。
その優越感を、あの女は愉しんでやがった。
あのバカな警察の奴以外は皆グルだった。
ほとんどレイは裸で物置部屋に監禁されていた。
占い師主催の
芸能人秘密倶楽部の輪姦パーティーで犯されたり、
医師研究会で容赦なく身体を調べられたり、
動物学者に獣姦させられたり。
悲惨な毎日だった。
名前で行動を制限されて、逆らうことも許されない。
怪我もすぐに癒えてしまう。
私が見た彼の姿はその一環だったのだ。
けれど、レイの精神はじわじわと蝕まれていった。
それで、俺が生まれた。
俺はレイだが、レイじゃない。
あの女どもに抗う術としての唯一の抵抗手段だ。
ゼロである俺はもう、名前で縛れない。
「だから俺が皆殺してやったっ!!
レイの代わりに!!
レイは優しい奴だ。こんなことできない。
おまえの言う通りだ。レイはこんなことはしないだろうよ。
だが、俺は違う。
―――レイを邪魔する奴は全員、ぶち殺す。」
「だから、最後はおまえだ。名探偵。」
そう言って。
彼は爪の先を私に向けた。
その口には鋭く伸びた犬歯が生えていた。