12 ロックバルトの町と入門の儀式
前回のあらすじ
ルニから【歩行術】について指導を受けた。
ロックバルトの門が見えてきた。
ごつごつとした岩を切り出したような門柱だ。
標高がこの世界の森林限界を超えているのか、この町の周囲には高い木々は存在しない。
後ろを振り返ればビガンの町の先に広がるタルヤード王国の領土がよく見える。
右手前方に見えるのがカナミさん達と通ったヴィッセルの森で、その先がグリフォンを討伐したヴィッセル湖だろう。
左手の遠くに見える王城周辺はタルヤードの王都なのだと分かる。
中々の見晴らしだ。ここまで苦労した甲斐がある。
結局ここまで来るのに町を出てから7日を要した。
あの滝を見た後、川伝いに登って辿り着いた湖は案の定【スイムベアー】の住処になっていた。
ルニによれば、元々火口だった場所に雨水が溜まって出来た火口湖らしい。
湖の縁に20匹前後で巣を作っており、それをぐるりと討伐した。
水中に逃げるメスの討伐には難儀したので、結局困ったときの【飛剣術】で解決した。
上空5メートルぐらいの空中に敵の数と同じだけ短剣を並べておいて、こちらが離れて油断して顔を出したところを急襲した。
【マップ】と【エネミーサイン】の相性が抜群でそれを使って照準を合わせていると別のゲームをやっているようだ。
ぐるり周回しながら、5つの群れを討伐した後、撃ち漏らしを確認するという名目で【水泳】を堪能した。
ルニが【水泳】に加えて【潜水】スキルを得たので水に入りたそうにしていたのだ。
下着を見たいとかそういう邪な動機では無いのだ!
僕の水泳スキルはさらに上がってレベル5になっている。
山登りに来たはずだが、水関連のスキルの方が上がっているのは何故だ。
能力値もずいぶんと伸びて【ステータス】を見るのがちょっと楽しい。
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ユーキ(地球人・男)
通り名 便所の魔神 <隠蔽 4>
邪眼 <隠蔽 4>
影の道場主 <隠蔽 4>
能力値
体力 140 /140 (116+24) [ 639 /1160 ]
魔力 102 /156 (120+36) [ 1167 /1200 ]
筋力 136 (113+23) [ 612 /1130 ]
器用 157 (112+45) [ 687 /1120 ]
敏捷 206 (137+69) [ 615 /1370 ]
体力回復力 1/30秒
魔力回復力 1/15秒
スキル
・身体
【体力強化】2 [ 9705 /15000 ]
【魔力強化】4 [ 9507 /300000 ]
【筋力強化】2 [ 5027 /3000 ]
【器用強化】4 [ 143551 /300000 ]
【敏捷強化】5 [ 221470 /1500000 ]
【視力強化】2 [ 1235 /30000 ]
【聴覚強化】2 [ 1441 /30000 ]
【嗅覚強化】2 [ 123 /30000 ]
【受け流し】4 [ 17602 /300000 ]
【回避】4 [ 152613 /300000 ]
【体術】4 [ 20029 /300000 ]
【瞬発】4 [ 53601 /600000 ]
【静止】4 [ 83600 /600000 ]
【水泳】5 [ 95800 /1500000 ]
【潜水】3 [ 53601 /600000 ]
【拳術】1 [ 400 /3000 ]
【蹴術】3 [ 18504 /60000 ]
【歩行術】5 [ 137200 /3000000 ]
【舞踏術】1 [ 5600 /6000 ]
【再生】2 [ 12232 /15000 ]
【切断耐性】1 [ 2601 /6000 ]
【刺突耐性】1 [ 2601 /6000 ]
【圧迫耐性】2 [ 25000 /30000 ]
【毒耐性】1 [ 234 /6000 ]
【魅了耐性】2 [ 1105 /30000 ]
【気配察知】2 [ 10955 /30000 ]
【気配隠蔽】1 (0+1) [ 514 /600 ]
【瞑想】1 【 94 /6000 】
【魔力吸収】1 [ 3397 /12000 ]
【魔力操作】3 (1+2) [ 587 /6000 ]
【魔力視】1 [ 234 /12000 ]
【並列思考】3 [ 92122 /240000 ]
・武器
【剣術】6 [ 255945 /12000000 ]
【騎士剣術】4 [ 845400 /900000 ]
【曲剣術】2 [ 100 /45000 ]
【短剣術】5 [ 12011 /3000000 ]
【双剣術】3 [ 13500 /120000 ]
【槍術】4 [ 27680 /600000 ]
【棒術】1 [ 1675 /6000 ]
【斧術】1 [ 800 /6000 ]
【爪術】1 [ 700 /6000 ]
【弓術】1 [ 1551 /6000 ]
【投擲術】1 [ 276 /6000 ]
【操糸術】1 [ 1314 /9000 ]
【飛剣術】10 [ 11155 /12000000000 ]
【盾術】5 [ 561 /3000000 ]
・魔法
【風魔法】2 (1+1) [ 4706 /9000 ]
【念動魔法】1 [ 181 /9000 ]
【植物魔法】1 [ 1200 /9000 ]
【火魔法】1 [ 386 /9000 ]
【水魔法】4 [ 528600 /900000 ]
【回復魔法】5 [ 3807332 /6000000 ]
【生活魔法】4 [ 120002 /1200000 ]
【風圧耐性】1 [ 3603 /9000 ]
【冷寒耐性】1 [ 303 /9000 ]
【名前隠蔽】4 [ 101630 /180000 ] <隠蔽 3>
【能力値隠蔽】3 [ 22931 /45000 ] <隠蔽 3>
【スキル隠蔽】3 [ 30750 /45000 ] <隠蔽 3>
・芸術
【鑑定】4 [ 615400 /900000 ]
【歌唱】1 [ 1825 /3000 ]
【弦楽器術】1 [ 1133 /6000 ]
・加工
【調理】4 [ 284400 / 600000 ]
【解体】1 [ 728 /6000 ]
【解錠】1 [ 3 /6000 ]
・成長
【見取り稽古】10 [ 11627034 /9000000000 ] <隠蔽 3>
・異世界
【コンソール】1 [ 1520 /9000 ]
【ステータス】2 [ 557 /60000 ]
【イクイップ】1 [ 5 /12000 ]
【エネミーサイン】1 [ 291 /9000 ]
【ターゲット】1 [ 314 /9000 ]
【ターゲットライン】1 [ 112 /9000 ]
【インベントリ】1 [ 507 /12000 ]
【マップ】1 [ 575 /12000 ]
【インタープリター】1 [ 32 /9000 ]
【パーティ】5 (4+1) [ 877607 /600000 ]
【ウィスパー】1 [ 101 /6000 ]
【AFK】7 [ 8188742 /90000000 ]
【ファンファーレ】1 [ 1025 /6000 ]
【ブライトネス】1 [ 210 /6000 ]
【ミュート】1 [ 201 /6000 ]
【クロック】1 [ 555 /6000 ]
【冒険者カード】4 [ 217501 /1200000 ]
【冒険者マニュアル】2 [ 1162 /60000 ]
【ログイン】1 [ 10 /15000 ] <隠蔽 3>
・固有
【スキル習得】2 [ 19278 /60000 ] <隠蔽 3>
【成長加速】1 [ 7505 /15000 ] <隠蔽 3>
【金玉飛ばし】1 [ 482 /12000 ] <隠蔽 3>
【森崎さん】1 [ 1963 /15000 ] <隠蔽 3>
【GMコール】1 [ 211 /15000 ] <隠蔽 3>
装備
右手 血食いの剣
左手 なし
右腕 なし
左腕 魔猫の腕輪 連環の腕輪
頭部 なし
胸部 上級剣術着
腕部 なし
腰部 風牛の鞘
脚部 上級剣術袴
足部 猫足の靴
持ち物
所持金
29,788,035¥
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筋力も上がって、最近では少し長めの血食いの剣の重さが丁度良いと思えるほどだ。
数値に表れないキレで負けているけれど、敏捷についてもルニに少し追いついてきた。
そう【パーティ】の効果が少し分かってきた。
ポイントはルニートさんの【ステータス】を見ると良く分かる。
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ルニート(真人・女)
通り名:旋回姫
能力値
体力 120 /120 (92+28)
魔力 108 /108 (83+25)
筋力 129 (92+37)
器用 110 (84+26)
敏捷 243 (162+81)
スキル
・身体
【体力強化】3
【魔力強化】3
【筋力強化】4
【器用強化】3
【敏捷強化】5
【打撃耐性】2
【切断耐性】2
【刺突耐性】2
【回避】4
【受け流し】4
【瞬発】3
【水泳】4
【潜水】2
【体術】5
【歩行術】5
【舞踏術】1
【再生】3
【騎乗】2
【気配察知】3
【気配隠蔽】1
・武器
【剣術】6
【騎士剣術】2
【曲剣術】3
【短剣術】4
【大剣術】2
【双剣術】4
【飛剣術】2
【槍術】3
【棒術】1
【斧術】3
・魔法
【水魔法】4
・加工
【調理】2
【採集】2
【解体】3
【刀剣整備】4
・異世界
【AFK】1
【ウィスパー】1
【冒険者カード】3
【冒険者マニュアル】2
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【パーティ】のレベルが上がり、ルニの経験値の増え方がぐっと上昇した。
能力値の変化が分かりやすいが、【小鬼】を倒した後に確認した時にはそれほど増えていなかったが、【スイムベアー】を倒した後確認したら目に見えて増えた。
火口湖でルニが【スイムベアー】を倒すのを横目に確認した感じでは、現在の【パーティ】レベルはさらに一つ上がって5となったが、僕の50%程度の経験値がルニに入るようになった。
僕のレベルアップの感じは以前と変わっていないので、一番経験値を獲得している人を基準に10%づつ底上げされるのでは無いかと思う。
僕の一番高い能力値の敏捷が200を越えてニヤニヤしていたら、ルニは240を越えていた。
【パーティ】はそれ以外良く分からない。町に入って他のプレイヤーに会ったら確認したいと思う。
レベルがいろいろ上がって素直に嬉しいが、魔法スキルについては少し持て余していた。
【水魔法】がレベル4まで上がっているが、【冒険者マニュアル】にはレベル1の魔言しか書いてない。
レベル1の魔言は【湧水】、【渇水】、【投水】の3つが載っていた。
スキルをレベル3で【ステータス】で見るとこんな感じだ。
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【水魔法】
水とその効果を発現・消滅させる。レベル上昇で効果と規模が拡大される
レベル1で発生、レベル2で変質、レベル3で攻撃、レベル4で固定、レベル5で回復に力を示す
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【投水】は攻撃に使えるような表現だったんだけど、これとは合わない。放水用なのかな?
【スイムベアー】の放っていたネバネバの水はレベル2の効果と考えれば納得できた。
ちなみにこのレベル毎の効果の表示は【火魔法】と全く一緒だった。
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【火魔法】
火とその効果を発現・消滅させる。レベル上昇で効果と規模が拡大される
レベル1で発生、レベル2で変質、レベル3で攻撃、レベル4で固定、レベル5で回復に力を示す
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これだけ凝ったゲームなので手抜きということは無いと思う。
魔言は人によっていろんなものがあると説明されていたので、この表現の範囲でイメージ出来る魔法が使えるはずだ。
ぼかして表現されているのはおそらく意味がある事だと思う。イメージの可能性を制限しないための工夫では無いかと思う。
魔言が無くても、魔法は何となくで効果が起こせる。
だけど、とっさの時に魔法を使うにはイメージがある程度固まった魔言が便利だ。
このあたりも町に入ったら落ち着いて確認していきたい。
―――――――
ルニの希望する場所の行く先々に魔物と遭遇したが、全てを討伐したというわけでも無い。
湖を散々堪能した翌日に、苦労して向かった花畑は、全長20cmぐらいの蜂の集団が巡回していて即撤退した。
【ハイランドビー】というその蜂にはレベル7の【毒】スキルがあり、【毒耐性】と【回復魔法】の【克毒】を足しても危ないと判断した。
ルニが珍しく反対しなかったので何事かと思ったら複眼の魔物は視線が読めないので苦手らしい。
日本の女性のように「虫気持ち悪~い」ということかと思ったら全然違っていた。
そのまま魔物を見逃すことに対してルニが難色を示すので、対処を検討して一日が潰れた。
結局、検討中になんとなく参照した【冒険者マニュアル】が足止めを解消してくれた。
世界編に魔物についての節が追加されており【ハイランドビー】についての記述を発見したのだ。
この魔物は花が無い場所に生息するためあまり生活圏を移動しないという特性を持っていた。
しかも、【毒耐性】の高い専門の蜂蜜回収業者が居て定期的に数を調整しているらしい。
『あ!!食べたことがあります!じゃなくて、町で売っています』
『それじゃ、討伐しないほうが良さそうですね』
『高原蜂蜜はミーアさんが大好物ですから、彼女に恨まれる所でした』
良かった。うっかり蜂蜜の生産を激減させるところだった。
ちなみに【スイムベアー】については川沿いの町で甚大な被害が出たことがあると書かれていたので倒して良かった。
【冒険者マニュアル】はレベルアップでページが増えるので時々読み返した方がいいな。
───────
そんなロックバルト山の散策もようやく一区切りだ。
門にさらに近づくといかにも髭人な人物が2人、大きな斧槍を持ってこちらをジロリと見ている。
門まであと3メートルという所まで来たところでおかしなことになった。
「「ヴォー、ヴォー、ヴォー、ヴォー」」
「「ヴォー、ヴォー、ヴォー、ヴォー」」
門衛の二人は、右手に武器を持ち左手を腕を組むように前に出し、腰を落としてどっしり構えたポーズを取ると突然歌い出した。
なんだろうこれは?歓迎の儀式?何か符丁のようなものなのだろうか?
と思っているとルニが両腕を組んで同じようなポーズを取ると同じように歌い出した。
「「ヴォー、ヴォー、ヴォー、ヴォー」」
「ウォー、ウォー、ウォー、ウォー」
門衛の二人は深く響くバリトンだが、ルニの方が甲高くてアルトぐらいだ。
その姿勢のまま3人の目が僕をじっと見てる。なにこれ、なにこれ?!僕もやるの?
「ウォー、ウォー、ウォー、ウォー」
あわててルニを真似したけど、焦ったので声が裏返った。
こ、これで良いですか?
「「ヴォーオ!オ!オ!オ!」」
「「ヴォーオ!オ!オ!オ!」」
今度は腕を振り回しながらドシンドシンと前後左右に震脚を始めた。
口を挟む余地を与えない勢いで新しい動きだ。またなんかやるの?
「ウォー!オー!オ!オオ!」
ルニは今度は両手を腰に手を当てて、ドシンドシンと前後左右に震脚を始めた。
あれ?門衛の二人となんか違う。どうすれば良いの?
同じ来訪者なので必死でルニの真似をした。
一小節づつの変な歌と踊りが繰り返される。
段々踊りの動きがおかしいことになっている。
腕を高々と上げたかと思えば手首だけ前に倒して手招きしたり、腰をクイックイッと前後に振ったりと怪しい動きだ。
対応するルニの踊りも相当に怪しい動きだ。
あまりに怪しいのでそっとルニに【回復魔法】の【鎮静】をかけてみたがそのまま踊っていた。
【ダンスベアー】にやられたときとは違うようだ。
僕も【舞踏術】のサポートがあるのか見ながらなんとか真似することが出来た。
どんどんテンポが早くなり、動きも激しくなっていく。
僕は何も考えずに必死でルニの動きと歌を真似した。
「「英雄ヴォルドンの加護あれ!」」
「加護あれ!」
「か、加護あれ!」
門衛さんが急に喋ったので逆にびっくりしながら復唱した。
ヴォルドンって誰だ-!!という心の叫びはもちろん口にはできていない。
「こちらに付いてこい」
そういうと一人の門衛さんが町の中に入らずに塀沿いを歩いて行く。
僕たちは後ろをついて行くとやがて勝手口のような小さな門から町に入り、大きな建物に着いた。
建物の入り口で案内が門衛さんから別の人に変わり中に通された。
お昼時だからだろうか?食事の良いにおいがしている。
「お前達はこっちだ」
もう言われるがままだ。道中に見かける人のほとんどが髭人だった。
食堂のような場所に着くと、少し髭が立派な人物がこちらにやってきた。
「ようこそ!ロックバルトの町へ!」
どういうことなのかそろそろ誰か教えて下さい。
門からここに来るまでルニが僕の方を『やっちゃったな!』みたいな目で見ているのは何故だ。
次話「13 待機所と料理番」