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5 戦場に踊る二つの影

前回のあらすじ

 【植物魔法】に関してスキル習得の違いについて話をした。

「ヴォ――――――!!ヴォッヴォッヴォッ」


熊が胸をドンドンドンと叩いてそれに合わせるように咆哮を上げて威嚇しながらウロウロしている。

初めて見る敵なので【ステータス】を確認した。


■■■

 ダンスベアー (魔物・オス)

 能力値

  体力  458 /458 (352+106)

  魔力  83 /86

  筋力  157 (142+157)

  器用  102 (92+10)

  敏捷  162 (135+27)

 スキル

  ・身体

   【体力強化】3

   【筋力強化】1

   【器用強化】1

   【敏捷強化】2

   【体術】2

   【拳術】2

   【蹴術】2

   【舞踏術】3

  ・武器

   【爪術】2

  ・芸術

   【打楽器術】1

  ・魔物

   【牙術】1

■■■


【ダンスベアー】か、なるほど【舞踏術】のレベルが高い。

体力が多めだな。能力値の高さはβテストで倒したグリフォンぐらいだろうか。


ドンドン叩かれた胸はいい音を鳴らしている。【打楽器術】があるから普段から叩いてるのかもしれない。

【舞踏術】というスキルを見て気がついたが、不審な動きでウロウロしていると思ったらどうやら踊っているらしい。

腰をクイックイッと振ったり、ダイナミックに腕を振ったり、段々動きが大きくなってきた。

【ダンスベアー】は体が大きいくせにやけに器用だった。


ルニは【曲剣術】を鍛えている最中とはいっても、既にレベル3だ。

対して【ダンスベアー】の【爪術】や【牙術】のレベルは決して高く無い。

同じレベルだとしても基礎となる【剣術】がレベル6の彼女には遠く及ばないだろう。


敵が続けて怪しい動きをしている。あれが【舞踏術】であるに違いない。

【魔力視】には熊から放射状に魔力が放出されている様子が見える。

既になにか仕掛けられているらしい。


「ヴォッ・ヴォッ・ヴォッヴォッヴォ―――――!!」

「ウォーウォーウォー!!」


なんか声が横からかかる。

群れの仲間でも現れたのか?……あれ?ルニの声か、君は何やってんの?

彼女は急に腰を左右に振りながらダンスベアーの踊りを真似し始めた。

なんだこれ?


「ヴォ――――――――――!!」

「ウォ――――――――――!!」


彼女は虚ろな目で緩慢に踊りながら熊に近づいていった。

これは不味そうだ。


そうこうしている間も【ダンスベアー】とルニがシンクロするように踊っている。

ターゲットを今度は僕に絞ったようで、僕に向かってなぜかセクシーなダンスを始めた。

【ダンスベアー】はオスだったのに、芸達者な奴だな。


ルニも腰に手を当てて僕に向けてセクシーなポーズで踊っている。

体を動かすのが得意なだけあって、踊りもやたらと上手だった。

えーと、早く正気に戻って欲しい。嬉しいけれどちょっと心臓に悪い。


踊る【ダンスベアー】がなんか必死だ。焦っているように見える。

普通ならルニのように異常になるんだろうか。

ステータスで状態をチェックしてみよう。

状態は特別な要素に入ってしまうからレベル5か、余計な物を見ないように【ステータス】【状態】


■■■

 ルニート(真人(ニューマン)・女) 28歳

 状態

  魅了

■■■


魅了だ。やはり状態異常にかかっていた。【舞踏術】恐ろしいな。

あ、年齢……聞いたとおりだから問題なし!


僕は、あれだ。【魅了耐性】が活躍しているに違いない。

レベルが2になるきっかけとなった【歌のサロン】のお嬢様方に感謝したい。

魅了ということは精神異常系なので【回復魔法】レベル2が効きそうだ。


「ヴォッ・ヴォッ・ヴォッ―――――!!」

「【沈静】!!」

「ウォー・ウォー・ウォ………っは!!」


ルニと目が合ってしまった。

彼女は左手を腰に当て、右手を自分の胸を強調するように当ててかなりセクシーなポーズを決めていた。

これは……結構なものをお持ちですね。

【回復魔法】で正気に返っただろう彼女はあっという間に顔が真っ赤になった。

人の顔ってあんな風に真っ赤になるんだな。


「ヴォッ・ヴォッ・ヴォッ―――――!!」

「大丈夫ですか?!」


熊がうるさい。彼女の口が小さく動いているがうまく聞き取れない。


「ヴォッ・ヴォッ・ヴォッ―――――!!!!!」

「大丈夫ですか?!!!」


熊がさらにうるさいので大きな声で話しかけた。

彼女は顔が真っ赤なままそっと左手を降ろし、剣の柄に右手にかけた。


「ウォオオオオオオオオオオ―――――!!!!!」


彼女が突然絶叫したので、また魅了されたかと思ったら違っていた。

ちょっと、いやかなり?恐ろしいものを見た。

やっぱり【ダンスベアー】程度であれば彼女には遠く及ばなかった。


『テッテレテー!!』

『ユーキはスキル【拳術】を習得しました』

『テッテレテー!!』

『ユーキはスキル【舞踏術】を習得しました』


【ダンスベアー】は原型を止めていない。

お肉が美味しかったかもしれないけど、そんなことは口に出す勇気は僕には無かった。

彼女の本気を見てしまった。金玉がキュっとした。


「ユっ、ユーキさん!!今のは【ダンスベアー】のせいですからね!!!」

「はっはい!分かってます!!口外したりもしません!!」


僕はそっと彼女に【沈静】を掛けた。

それで彼女はようやく落ち着いたようだ。


「す、すいません。お見苦しいものをお見せしました。獲物もこんなにしてしまいましたし」

「い、いえ見苦しいというかステキでしたよ?」


彼女は再び顔を真っ赤にするとギラリとこちらを見据えてこう言った。


「忘れて下さいね!」

「は、ハイ!忘れます!!」


今、言霊に乗って殺気が飛んできた気がする。むしろ恐怖でマーキングされて忘れられそうにありません。

またキュっとしたし【AFK】があって良かった!


彼女によれば【ダンスベアー】の肉は全身が筋だらけで食べると美味しく無いらしい。

良かったです。いやほんとに。

【解体】した所、爪と魔石がドロップしたが、魔石はばらばらに砕けていた。

魔石は【解体】すると出てくるものではなく、丹田の辺りに元から埋まっているものらしい。

これを砕くと魔物が一気に弱体化するので強敵と戦う際には積極的に狙う弱点だ。

【ダンスベアー】の魔石はそこそこ高額らしく彼女は申し訳なさそうにしていた。


「まぁ、また出てくるかもしれませんし、その時に気をつけてもらえば大丈夫ですよ」

「そうですね、その時は一息に仕留めることに致します」


そう言いながら尋常じゃ無い殺気を発するのは止めて欲しい。

彼女の面白い一面も見られたしこれはこれで良しとしよう。

今度こそ、昼ご飯にしようと考えた時だった。


「ヴォ――――――!!ヴォッヴォッヴォッ」


先ほどまで聞いていた鳴き声が遠くから聞こえてきた。

声の方を確認すると、既に5メートルも先を彼女が走っていた。


ちょっと!!それ状態異常じゃないんですよね?!

次話「6 騎獣と奥の手」

次回更新は9/5(月)です。

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