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28 メダルの歴史と【メダル収集】

前回のあらすじ

 講習会で【鑑定】スキルを習得した。ルニートさんをデートに誘った。

昨日は夕食後もルニートさんと【曲剣術】の鍛錬を行っていたが8時頃には今朝の待ち合わせの約束をして解散となった。

こういうとき、お風呂が【生活魔法】の【洗浄】で簡単に片付くので寝るまでが早くて助かる。

僕は一人暮らしが長いためゆっくりお風呂に入る派ではない。すぐ終わるのはとてもありがたい。

ルニートさんに頼まれて彼女にも【洗浄】をしたがなんとなく恥ずかしかった。


【曲剣術】はその場にレベル上位者が居なかったが、ルーファスさんの動きを二人で思い出しながら鍛錬をすることで、僕がレベル2に、ルニートさんはレベル1となった。

ルニートさんとあれこれ言葉を交わしながら試行錯誤して鍛錬をするのは部活動のようでとても楽しかった。


【曲剣術】を鍛錬をして気がついたけれど【剣術】は剣術全ての基本となるようで、【騎士剣術】にも【曲剣術】にもその要素が入っていた。

【短剣術】や【大剣術】も同じく【剣術】の素養が混ざっているんだと思う。


今日のデートは、朝食を食べて少しした時間ということで10時に門の前に集合し、一緒に買い物をしてお昼ご飯を食べ、午後少し散策して帰る健全なコースだ。

午後からまた修行につきあってくれないかと言われているので結局3時頃にはいつも通りではあるけど、一緒にいるから女将さんには許して貰おう。


「おはようございます!」

「お……おはようございます!」


僕が営業らしく早すぎず遅すぎないを考慮して10分前に門に向かうと、ルニートさんは先に来て待っているところだった。

彼女はいつでも来ている胴着では無く、小さな花の刺繍が入った薄い緑色の春っぽいワンピースを着ていた。

なんだかとても新鮮だ。いつもは武人然としているので、見慣れないが、健康的な美人の彼女にはとても似合っていた。

思わず見とれてしまって挨拶の声がとまってしまったほどだ。


彼女の細い体にふわっとした造りのワンピースが良く合って可愛らしい印象だった。

このゲーム世界では筋力が上がっても僕の腕が太くなっていないように、見た目の筋肉と能力値は違うようだ。

彼女も同様に昨晩の斬撃からは似つかわしくない華奢な腕をしていた。


「可愛らしいワンピースが似合ってますね」

「そ、そうですか?ありがとうございます」


彼女はわざわざお洒落をしてきてくれたのだ、対して僕は上級剣術道着である。

大失態だ!ルニートさんだし、やっぱ道着で来るよね?と思った昨日の自分を叱りたい。


柴田が毎度『先輩も女の子と出かけるときぐらいスーツ以外を着て下さいよー』とか言ってたな。

あれは、職場の後輩を飯に連れて行ってるだけで、僕も先輩からやってもらったように奢りの連鎖を断ち切らないようにしているだけだ。

一緒に池田がいることもあったし、断じて女の子とお出かけという類いの物では無い。


「ルニートさんがお洒落してくるなら僕ももうちょっと合う服を調達しておくんでした」

「い、いえ、ユーキ殿と出かけると聞いたミーア達が勝手にいろいろ準備したんですよ。私も道着で来れば良かったですね」

「いや、その姿が見られただけでも今日誘って良かったです」


なんか恥ずかしい。自分が学生に戻ったみたいで不思議だ。

とりあえず出かけてみるか!と思ったら門の影にミーアさんが居てなんか不審な動きをしている。


ん、右手と、左手を?合わせて?まいどあり!

じゃないよね。手を繋げってことみたいだ。

こんな所まで介入するとはシナリオライターが趣味に走りすぎ!

【GMコール】で苦情を述べたい。


「折角のデートですから、手を繋いで出かけましょうか?」

「え、手、手を。デートですもんね。はい!」


なんかいつもと違って調子が狂うが嫌では無い。

ルニートさんがシュバっと伸ばしてくれた手を掴んで町に出かけた。

もうこの際だ楽しむことにしよう。


―――――――


剣術道場から貴金属店のあるディーベル通りはすごく近くだ。

ルニートさんも近くに居る友達の家に行くときに何度も通ったことがあるらしい。

ここ数年で店が増えたので貴金属店があることを知らなかったようだ。


昨日の講座で案内されたディーベル通りの中程の場所にロベール貴金属店はあった。

落ち着いた佇まいの少し小さなお店だ。


「いらっしゃいませ。ようこそロベール貴金属店へ」


品の良い中年の女性が迎えてくれた。

店の中はショーケースに収まっていろいろな貴金属類が売られていた。

縦に長い店内に沿うように設置されたカウンターには指輪やネックレス、宝石などが並べられており、壁際のショーケースにはおそらく魔道具の杖や箱などが丁寧に並べられていた。


「なんか落ち着いたお店ですね」

「あら、嬉しいこと言ってくれるわね。それは私の目指しているお店の理想の一つね。

さて、何をお探しでしょうか?もちろんふらりと来てくれても良いんですよ。おそろいの記念の品でも買いに来たのかしら」


ふとルニートさんを見ると子供のように目を輝かせて店の中を眺めていた。

貴金属を見てこういう反応をするところを見ると、やっぱり女の子なんだなと思う。

剣聖のメダルを出汁に誘ってみたけど、彼女の目線を見るとカウンターの指輪類を見ているようだ。


そうだ、メダルだ、どこにあるんだろうな?ロベールさんはメダルコーナーを作ったって言ってたよな。

カウンターに近寄り、じっくりと眺めているルニートさんの手をそっと離すと僕はメダルコーナーを探した。


縦に細長い店内を奥の方に進みながら探していくとメダルコーナーの一角を見つけた。

少し光沢のある灰色の布の上に綺麗にメダルが並べられている。きちんと表と裏で1枚づつだ。さすがロベールさん分かってるな。

銅貨も何種類もおいてある。他にも銀貨や金貨、記念硬貨らしい魔道金属の貨幣も展示されていた。

記念硬貨はレリーフのようなものに収まっており、モチーフは国の建国記念、騎士団の創立記念あとは神様の記念のメダルだった。


ゲルハルト歴6500年記念硬貨なんてのがあった。これ次元神様だよね?6千歳超えですか。流石に神様と言うしか無い。

店員さんに聞くとゲルハルト様が神格を得てから暦がゲルハルト歴になったらしい。現在は6583年なんだとか。

なんでアンネ歴じゃ無いんですか?と聞くとアンネ様は異界の神様だから違うらしい。

二人は兄妹(きょうだい)らしいのでなんか不思議な感じだ。どういうことだろう。


ルニートさんの方を見ると真剣な顔でカウンターを眺めていてあまり身動きしていなかった。

よし、もうちょっとメダルを見させて貰おう。

オズワルド貨幣の中で銅貨の意匠がやけに凝っていて、貨幣作ったというオズワルドさんが武神の5高弟ファンだったというのが良く分かる。


店員さんはロベールさんの奥さんでマリエッタさんというらしい。彼女によるとメダルが普及する前は魔石が貨幣代わりだったらしい。

魔石の利用価値が高まって同じように流通が滞ったところで代替品として貨幣が投入されたんだそうな。それが50万年前ぐらいと言われているらしい。


武神様が高弟から5高弟を選ぶようになったのはその少し前で60万年ぐらい前らしい。

全然少しじゃない。この世界は我々とは年数の感覚が違っているようだ。


そんな訳で武神の5高弟といっても歴代では500人ぐらい居るらしいが、全員分メダルは発行されているとのことだった。すごい!これは盛り上がってきた。

その中でもルニートさんも信奉する『[剣聖]ガーウェイ』様に至っては、初代からずっと5高弟に居るため幾つものモデルがあるようだ。

ただ、展示されているオズワルト貨幣は金貨、銀貨、銅貨合わせても30種類程度しかなかった。


オズワルド貨幣と言っても、オズワルドさんは相当長生きだったらしいが、既に鬼籍の人でその弟子筋の人達が造幣ギルドを運営していたらしい。

ギルド長が交代する度に実力の証明としてガーウェイ様のメダルを出していたんだそうだ。

そのためガーウェイ様のメダルには比較的高値が付いていた。

一つ一つはそれほど高額では無いが、集めようとするとそれなりの金額になってくる。

ゲーム体験がぐっと僕好みな展開になってきた。これは嬉しい。


展示してある30……33種類の中でどれが持ってる奴でどれが持ってない奴なんだっけ?

なんて嘘だ。毎晩寝る前のトレーニングと称して【ステータス】と【瞑想】を鍛えていたが、題材としてメダルを出して確認していた。

今持っているオズワルド貨幣は125枚でうち銅貨は111枚、銅貨の種類は14種類でガーウェイ様のモデルが2種類だ。

【金玉飛ばし】で潰してしまった『[貫通(つらぬき)]のリッピレーズ』という森人(エルフ)の高弟のメダルは現在7枚所有している。

二度と出会えない物では無くて良かった。


展示してある33枚の内、銅貨は18種類が展示されていた。比較的新しいものが多いようだ。

ちなみに僕が持っているメダルは全部売っているものに含まれていた。

コレクターとしては保管用、閲覧用にそれぞれ1枚、交換用に2枚で最小でも合計4枚は欲しい所だ。

[自在]のトルダモル様が2枚、[圧折(へしおり)]のパンダーロ様が3枚なので不足分を購入したい。

あとは持ってないものを購入したい。持ってない4種類の中には例のルーファスさんが言っていた[百剣]のウィズリー様のものもあった。


おおっと、久しぶりに趣味に触れたので一人の世界に入るところだった。

ルニートさんを見ると先ほどのカウンターからほんの少しだけ動いたけど相変わらずカウンターのショーケースを真剣に見ていた。

よし、まだ大丈夫。必要なメダルを購入して早めにそっちに合流しよう。


マリエッタさんに購入したいメダルを告げると、奥から分厚いバインダーを持ってきた。

オズワルド銅貨が納められたバインダーらしい。確かにバインダーがあると助かるよな。

売ってくれないか確認したが、特注品らしく売ってないんだとか。使い勝手も良さそうな一品だった。


早速依頼したメダルを出してくれて手早く精算してくれた。

元々10ヤーン相当で使われていた銅貨だけれど、持っていないものは年代が古い物が多かったので少し高かった。

全部で19枚となり値段は8900ヤーンだった。金貨と銀貨はあまり食指が動かなかったのでまずは銅貨から集めていきたい。

留め具付きの布で包んだものをお洒落な紙の小袋に入れてくれた。


しかし、銅貨だけで500種類もあるとなると、他のメダルも含める相当な種類がある。

現実でも博覧会の、観光地の、キャラクターモノのと既に数えられる状態では無いが、同じような状況かもしれない。

そうなってくるとバインダーを用意するのはコレクターとしては当然の(たしな)みだった。

せめて持ってないメダルだけ分かるようなスキルとかあれば良いのに。


メダル集め生活のためには、その辺りの対策を立てなければならないようだ。早急になんとかしたい。


―――――――


小学生の頃、既にメダルの魅力に気づいていた僕は、お金のコレクションを始めていた。

それほど資金力も無かったので1円玉から500円玉まで全ての硬貨について、僕の誕生年度の硬貨を集めていた。

買い物の手伝いをしたおつりで集めたり、友達が持っているものと交換したり、なかなか楽しかった。


ようやく一揃え揃えて、次はどの年度のものにしようかな?少しでもピカピカのものを集めようかな?

そんな風に考えて居たが、そのコレクター生活に突然のアクシデントが襲った。

ある日学校から帰るとお金をしまう場所にしていたクッキーの缶の位置が少し変わっていた。

不審に思った僕は缶のフタを開けると、そこには千円札が1枚入っていた。

僕はメダルを集めていたので、お年玉でもらうお札は別の缶に入れていたのに!

そして、集めていたコレクションが無くなっていた。かろうじて5円玉と1円玉は残っていた。


母親に問い合わせるとこんな答えが返ってきた。


『あーユウ君のお小遣いから小銭借りちゃった!オマケして増やしといてあげたの!気付いた?!』


僕は小学生も中学年になっていたのに思いっきり泣いてしまった。

母親から何度も謝られたが、とても悲しい体験だった。


それ以来、少ないお小遣いの中から友達が集めていた有名なゲームのコイン用のバインダーを購入してコレクションするようになった。

ちなみにその有名なゲームのコインはシールが貼って誤魔化してあって、子供ながらにあれは認められなかった。ちゃんと刻印したものにすべきだと思う。


―――――――


おっと、また旅に出ていた。母親はまた集め直す際に協力してもらえるようになったが、あれは心と小遣いに大きなダメージを与える体験だった。


ともかくメダルを集めるにはそれなりの対策が無いと痛い目を見ることになる。

収納だけは森崎さん(クローク)で困らないけど、眺めてニヤニヤするのはいつでも出来るようにしたい。


そうか、スキルか、このゲームで無理っぽいことはスキルと魔力で押し通すんだよね。

【メダルバインダー】か?【メダル収集】か?僕に必要なのは絶対にそれだ。【飛剣術】よりも確実に必要なスキルだ。

なんとなく、習得中のリストに入った気がした。確認してみよう【スキル習得】!


■■■


 ユーキ(地球人(アースリング)・男)


 習得中スキル

 ・身体

   【打撃耐性】 52 /400 (-100)

   【疲労耐性】 42 /400 (-100)

   【底力】 1 /400 (-100)

   【毒耐性】 6 /400 (-100)

   【騎乗】 3 /400 (-100)

   【瞑想】294 /600 (-150)

   【気配隠蔽】364 /600 (-150)

  ・武器

   【双剣術】 201 /400 (-100)

   【棒術】 1 /400 (-100)

   【弓術】 1 /400 (-100)

   【縄術】 1 /400 (-100)

   【鍬術】 1 /400 (-100)

   【盾術】 1 /400 (-100)

   【鎧術】 1 /400 (-100)

  ・魔法

   【雷魔法】 1 /600 (-150)

   【火魔法】 11 /600 (-150)

   【炎熱耐性】 1 /600 (-150)

   【雷耐性】 1 /600 (-150)

   【犯罪履歴】100 /600 (-150)

  ・加工

   【採集】 3 /400 (-100)

   【金属加工】 7 /600 (-150)

   【金属分解】 2 /600 (-150)

   【刀剣整備】 1 /400 (-100)

   【染色】 1 /400 (-100)

   【罠解体】 1 /400 (-100)

  ・異世界

   【コンソールログ】 1 /400 (-100)

   【マップ】 15 /600 (-150)

   【ターゲットエリア】 31 /400 (-100)

   【スキルセレクト】 1 /400 (-100)

   【マジックセレクト】 1 /400 (-100)

   【パーティ】 2 /400 (-100)

   【パーティチャット】 1 /400 (-100)

   【アイテムトレード】 1 /400 (-100)

   【スキルエフェクト】 4 /200 (-50)

   【オートアタック】 2 /400 (-100)

   【クロック】 55 /400 (-100)

   【ログアウト】 3 /1000 (-250)

  ・固有

   【GMコール】 911 /1000 (-250)

   【メダル収集】 750 /1000 (-250)

■■■


剣術道場と冒険者ギルドの講習会で沢山のスキルを覚えたと思ったけど、習得中スキルの待機リストはあまり減ってなかった。

いつの間にかクルサード様の【鍬術】が待機リストに入ってました。それは流石に覚えないと思う。

そして!見つけました!!【メダル収集】!この先どうやって経験値稼いでいいか分からないけど。

あと、【GMコール】が取得間近だった。これゲームシステムの一部だと思うんだけど、何で異世界カテゴリじゃないんだろう。


どうやって【メダル収集】を習得したらいいんだろう。メダルを弄っていると覚えるのかな?

うーんどういうスキルかもイメージが沸かない。逆でイメージが固まらないから覚えられない可能性もある。バインダーが出るのかな?持ってないメダルが分かるのかな?両方の可能性もある。

もっと画期的に気配察知みたいにメダルの所在が分かるスキルだったりするかもしれないな。

【ラージラット】の巣穴からメダルを回収できるようなスキルだったら良いな。


「……ーキどの。ユーキ殿……ユーキ殿ッ!」


はっ!!やってしまった!!!!

ふと声の方を向く。

そこにはこちらを凝視するルニートさんが居た。

次話「29 大きな買い物と目指す場所」

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