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27 貴金属店主の【鑑定】講習会

前回のあらすじ

 カムカム亭でヒロシの連れのハルヨシさんの質問から店員さんが逃がしてくれた。

午後からは【鑑定】の講習会だ。

これを覚えれば、暫くは講習会に来ることも無いだろう。

駆け足だったけど一通り必要なスキルを覚えたのでそろそろ冒険に出ても良い頃だ。


なんとなく成り行きで剣術道場に逗留させて頂いているが、賄いが美味しいからとか、賄いチームの女の子が可愛いからとか、ルニートさんが可愛いからとか、そんな理由はまぁもちろんあるけれど、本命はスキルを覚えたかったからだ。


依頼されている【飛剣術】を伝授できれば一応のお役御免になるだろう。

【短剣術】【槍術】などの他の武術にも興味はあるが、それは習得出来るところまでとしたい。

【短剣術】の武技(アーツ)を教えて貰えば、【飛剣術】の武技(アーツ)を閃くかもしれないので、その辺りのスキルを中心に鍛えておこう。


そしてやるべきことをやったら、やりたいことをやろう。

そう。メダル収集だ。


本番サービスではメダル収集しようと思ってたが、流れ流され今は剣客みたいになっている。

【鑑定】スキルはその足がかりになりそうな気がしているのでちょっと楽しみだ。


ギルドに戻ると時間が結構ギリギリだった。

ブローゲット通りは冒険者ギルドに近いので油断していたようだ。

ギルドに着いたらお昼は結構混んでいた。午前と午後で2つ依頼を受けたりするんだろうか?


人混みを抜けて2階のルームDに入ると部屋の時計は開始時間の5分前だった。

部屋には4人の受講者が前の方の席に座っていた。


「よろしくおねがいしま~す」

「「「「よろしくお願いします」」」」


みんなから挨拶が帰ってきて安心した。

商人が取るようなスキルなだけあって、その辺りがしっかりしてる人が多いのかな?

僕も開いている席に座って開始を待つ。


午前中はあのあたりで黒いもやが出てきたんだよな。と思いながら教壇のあたりを見ていたら、教壇脇のドアが明いて男性のギルド職員に続いて身なりの良い紳士が入ってきた。

普通だ!普通の登場に意味も無く感動してしまった。


紳士はスーツを着ていた。このゲーム世界の洋服って何でもありだなぁ。

しかし、スマートな紳士にスーツはとても良く似合っていた。


「みなさんこんにちは!私はこのビガンの町で貴金属店を営んでおりますロベールと申します。本日は【鑑定】の講習会となります。よろしくお願いします」

「「「「「よろしくお願いします!」」」」」


こんなちゃんとした講師の人は初かもしれない。でも【調理】のルーチェさんも最初は普通だったから油断できないな。


「まずは皆さんに材料の知識を身につけて頂きます。【鑑定】は知識があると無いとで効果が変わってくるのでこれがとても重要になります」


ロベールさんはそんな風に切り出し、金属材料について説明を始めた。

銅、鉄、銀、金、ぐらいまではついて行けたが、魔法金属が混ざってきた辺りからかなり厳しい。

定番のミスリルやアダマンタイトぐらいまではついて行けたが、アミールとか言い出したぐらいから怪しくなってきた。

アルミなのそれ?どうなのと思ったがどうも魔法金属のようだ。

魔素が漂っている時点で元素表が破綻することは明らかだったので違う周期表が存在しているに違いないと思ったらもう周期表らしきものはあるようだった。

ほんとどうでも良いことに凝ってるよなこのゲームは。

シナリオの人の悪い癖なのかもしれない。


その後、宝石類について説明し始めたのだが、ルビー、サファイア、アクアマリンなんていうようなものから始まって竜の目玉や魔王樹の枝なんてものが次々に出てきた。

これは流石に覚えきれないよ!無理だよ!という気持ちがじわじわと大きくなる。


「これだけ覚えるのは大変だ!と思われたかもしれません。ただ、ここにあるのはほんの一部にございます。

金属は先達の苦労の結果、周期表がだいぶ埋まってきているためある程度体系だっていますが、宝石類となりますとさらに種類は増えますし、魔物由来の素材となりますとさらに多くの種類がございます。」


なにそれこの世界の貴金属業者の人は勤勉じゃ無いとやってけないな。

ロベールさんは受講者の心を折りに来ているのか?!

後続潰しなのかとか思ったがギルド職員もいるのにそれは無い。


「そこで我々を助けてくれるのが【鑑定】スキルなのです」

「え?どういうことですか?」


(たま)りかねたのか前の席に座った若い男性がそう質問を投げた。

そこ、これから説明する流れだったじゃん。と思ったが黙っておいた。


「【鑑定】スキルは一度見たことのある素材については混ざり込んでいてもある程度判別してくれます。混ざっていない状態の単一の姿を目に納めておくのが大事なのです。私の貴金属店においてもそのような素材も取り扱っておりますので、是非ご来店ください。」


あれ、ここまで宣伝だったの?このおじさん抜け目ないな。


「とまあ冗談はこれぐらいにして【鑑定】スキルの説明に入っていきます。

【鑑定】はとても習得が難しいスキルです。諦めずに着いてきて下さいね。

【鑑定】は使われている材料の分析、その材料の対価、完成品としての美術的・実用的な付加価値、魔道具の場合は付与されたスキルのランクと強度。これらを判定するスキルです。」


【鑑定】スキルは素材に対する鑑定者の知る相場からざっくりとした価格を出してくれて、それ以外にいろんな付加価値を知ることが出来るようだ。

レベル1では素材の種類を判別するところまでらしい。レベル2でざっくり相場が分かり。レベル3で付加価値の相場が分かり、レベル4で相場感の確からしさが分かるらしい。

魔道具の判定ができるようになるのはレベル5からなので、魔道具の価格は水物なんだとか。


さっきからギルド職員の人が教壇の前のスペースに机を出して、その上に何かを並べている。

ちょっとそれが気になってロベールさんの話を聞きながらちょろちょろ見てしまう。

【並列思考】を持ってて良かった。


「それでは机の上にある簡単な貴金属類を私が【鑑定】して結果を述べていくのでその様子を見てスキルに慣れて下さい」


そう言うとロベールさんは机の上に置かれた貴金属類を【鑑定】し、その結果を伝え始めた。


「銅の指輪、素材は銅で2300ヤーン、彫刻に価値あり、原価5000ヤーン」

「鳥型のイヤリング、素材は銀と魔石で7250ヤーン、彫刻と魔石の組み合わせに価値あり、原価23700ヤーン」


素材と材料代、付加価値と原価という順に伝えていた。

原価というのは売るときにはもう少し載せて売るからだそうだ。

通常は原価は教えないらしいので、ここにある品は自分の店の物ではなく、冒険者ギルドが講習会のために用意しているものらしい。

確かに原価を教えてもらう機会は貴重だ。【見取り稽古】で真剣に見させてもらおう。


ロベールさんに集中すると指先からなにかもやのようなものが出て品物に巻き付いているのが分かる。

あれが【鑑定】スキルということなんだろう。

魔素はなんでもやってくれるんだな。この場合は検査プローブか。

もやの流れの中に品物の情報が流れているのか。もっと五感を集中させていこう。


『テッテレテー!!」

『ユーキはスキル【魔力視】を習得しました』


え、今これを覚えるの?まぁ覚えやすくなりそうだからいいか。

ロベールさんがどんどん【鑑定】していくのを【見取り稽古】を動員して見ていく。

よく見ると対象物に近づけた指先の指輪が魔素のモヤモヤの流れを清流しているように見える。

あれは【魔力操作】を備えた指輪だな。


『テッテレテー!!」

『ユーキはスキル【鑑定】を習得しました』


おお!覚えました。講習会なのに意外と時間が掛かったな。

ランクは3だったから中難度ということなんだろうけど、何をどう読んでくるかというイメージが難しかった。

【魔力視】を手に入れてからますます魔力の流れが分かりやすくなったので調べてる動きがさらに見えるようになり習得しやすくなったようだ。

【魔力視】は魔力を使っているみたいだけど、魔力を使って魔力を見るなんて不思議な感じだ。透視するスキルでは無いと思うが、中を流れる魔力も見えるような気がする。


「銀の水差し、素材は銀と金で10240ヤーン、彫刻と造形美に価値あり、原価52300ヤーン」

「銀のバングル、素材は銀とダンゴットで20200ヤーン、彫刻に価値あり、原価40500ヤーン」


ロベールさんはその後もどんどん鑑定していった。

その間ギルド職員の人は教壇の前にテーブルを出してその上に鑑定対象の品物をどんどん並べてはどんどん片付けていく。

やがてギルドが用意した品物は無くなったようだ。既に僕の【鑑定】スキルはレベル3まで上がっていた。


ロベールさんは額の汗を拭ってこう言った。


「さて、ギルドが用意した品物は以上のようです。私が【鑑定】してみたことで皆さんには【鑑定】の基本的な使い方が身についているはずです。自身の持ち物を何でも良いですから机に出して【鑑定】を練習してみましょう」


なるほど、スキル習得中のリストに入ることをそう表現するのか、僕にはよく分かっている概念だがこうやって説明するのを聞くとあらためてなるほどと思う。

『基本的な使い方』か、【飛剣術】の指導で使えるかもしれない。


何を鑑定してみるかな。そうだ、オズワルド銅貨を鑑定してみよう。普通に銅だけかもしれないけど。


『森崎さん、この机の上にオズワルド銅貨を多いものから5種類出して貰えますか』

『承りました』


机の上には『剣技 ダンダリ』『剣聖 ガーウェイ』『不殺 ポゼッソス』『開拓 クルサード』『城割 ノルデン』のメダルが並んでいる。

えーとどれどれ?とりあえずダンダリのメダルを見ながら……【鑑定】!


鑑定を使うと【ステータス】と違って頭の中に材料には銅が使われているという情報と、その材料代が5ヤーンぐらいだってことと意匠が高そうだなということと、原価で150ヤーンぐらいであることが分かった。

魔道具では無さそうだけど、これ10ヤーン貨幣だったんだよな?枯渇して値段が上がってるのか。

続けてガーウェイのメダルは材料代が5ヤーンで意匠入れて200ヤーンだった。剣聖のほうが価値が高かった!


銅貨を眺めているとロベールさんが5人の作業状況を見て回っていた。

僕の所に来るとメダルの姿を認めて。にっこりとしてこう言った。


「おお!あなたもメダルコレクターですか、私もこいつに目がありませんでな。最近はダンダリ様のメダルもちょっと値段が上がってますよ」

「ロベールさんも集めてらっしゃるんですか?僕はこれを集めたいんですけど伝手が無くてどうしようかと思ってる所なんですよ」

「それはいい!実は私の店の骨董品のコーナーでメダルを扱っているのです。是非ご来店ください」

「それは是非!ちなみに場所は何処になるんですか?」

「道場『歌のサロン』の裏手のディーベル通りに構えております。私の名で『ロベール骨董店』としてやっております。通りは中央道路を南に入ったところです」

「ありがとうございます。ぜひ伺いたいと思います。ちなみにロベールさんがは嵌めているような【魔力操作】の効果を備えた指輪もありますか?」

「おお!よく分かりましたね。このような魔道具についても取り扱ってございますよ」

「それじゃ、明日にでもお邪魔させて下さい!」

「はい!ありがとうございます。それでは【鑑定】の練習に戻りましょうか。はっはっは」


いけないいけない。完全に脱線していました。

【鑑定】のレッスン中でした。ロベールさんが居るうちに練習しなきゃ勿体ない。

その後ロベールさんは一度【鑑定】した品々に対して再び2回目の【鑑定】を実演してくれた。

その後すぐにレベル4まで上がったが、その後なかなか上がらなくなった。

ロベールさんのレベルは4か5なんだと思う。


講習会はそのままつつがなく終了したが、習得に至ったのは僕だけだったらしい。

僕は現在も継続して受けているスキルの恩恵について、改めてその凄さを実感した。


―――――――


15時に定刻通り講座が終わり、本日の予定は終了だ。まっすぐ道場まで帰った。

道場の門をくぐると鍛錬場の隅の方にルニートさんが居るのを見つけた。【視力強化】は中々凄い。

ルニートさんはどうやら曲剣を練習しているようだ。

例の件もあるし、ちょっと話しかけてみようか。


「ルニートさん、こんばんわ。精が出ますね」

「おお、ユーキ殿。これは良いところに来られた。つかないことをお聞きするが、父上の演武を見て【曲剣術】を覚えられたのではありませんか?」

「【曲剣術】ですか。昨日見せてもらった剣術ですね。ええ、覚えましたよ。レベル1ですが。ルニートさんが【曲剣術】とは珍しいですね」

「【曲剣術】は剣聖ガーウェイ様が得意とする剣術で、是非覚えたいと思っていたのです。父上が修められているとは知らなんだので昨日はびっくりしました」

「あー!ガーウェイさん。そういえばメダルにもありましたね」


そこで森崎さんに剣聖ガーウェイのメダルを出してもらった。


「この人ですね」

「そうです!この方ですよ。それにしてもユーキ殿は珍しいものをいくつもお持ちですね。先日もクルサード様のメダルを頂きましたが」

「そのメダルも差し上げますよ。5高弟の方々がお好きなんですね」

「ありがとうございます!このような道場におりますが、5高弟様達にはなかなか会う機会もありませんので、こういったものは良いですね」


ルニートさんが子供のような表情でメダルを眺めている。なんだかとても可愛らしい。

あ、そうだデート!デート誘わなきゃなんだった。これはチャンスじゃないですか。


「そうだ!今日の講習会で講師の方が自分の店でメダルの扱いがあると言われていたので明日にでも一緒に行ってみませんか?」

「おお!そのような店があるのですか、なかなか買い物にも出ないので意外と知らない物ですね。私も一緒でも良いのですか?」


おっと、意外と乗り気だった。良かった。

これなら行けそうだが女将さんから一つ注文が付いているのだ。明確にデートだと伝えて誘うという注文だ。一緒に出かけるだけでは満足して頂けなかった。

あまり得意では無いけど、頑張って切りだそう。


「ええ、ぜひ一緒にお願いします。デートのお誘いということで」

「で!でえと!!いや、ええと……」

「あの、無理にとは言いませんよ。嫌ならそう言って下さいね」

「い、嫌ではありません。嫌ではありませんが……分かりました。よろしくお願いします」

「はい。お願いします」


ルニートさんが目を白黒させて慌てている様子は本当に可愛らしかった。

僕に対しても隔意が無いと分かって、それも嬉しかった。

でもデートは断っても良かったんだよ。そこで女将さんからの依頼達成だから。

彼女はあまりグイグイ来ないので僕としても付き合いやすいし一緒にいて楽しいから嬉しいことは嬉しいんだけれど。


これは断らないというシナリオの流れなのか。

おのれシナリオライター。このイベントはどこまで引っ張るつもりなんだだろう。


こんなに必要だと思っているのに!

まだ【GMコール】習得には至らない。

次話「28 メダルの歴史と【メダル収集】」

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