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26 ヒロシ達の近況

前回のあらすじ

 短剣の鞘を受け取った。お昼ご飯を食べてたらヒロシに会った。

ヒロシの間の悪さは神がかっている。彼は続けた。


「おお!やっぱユーキさんじゃん!ジャージ着てないから分かんかったわ。なにその胴着、格好いいじゃないスか!」

「僕は中央広場の一件許して無いですからね!」


僕の第一声は拒絶である。

中央広場では酷いことをしてくれた。

もう言いふらさないと確約してくれないと、この店でも人々に囲まれる危険性は高い。

なぜなら今でも経験値がぐんぐん流れ込んできているからだ。


この町から出れば大丈夫なのかな?

いや、ログインしてすぐにレベルが高かった。

この町にに居なくても流れ込んでくるのだろう。

せっかく取得した隠蔽スキルもヒロシの前には効果が無かった。


「お、おう!あれは悪かったな。ゴメンな。あんな事になるなんて」

「もう絶対やめて下さいよ。人前ではあの呼び方禁止です」

「おう分かったよ」


なんとなくヒロシの反省が足りないが、こんな店の中でやるとかえって目立って逆効果なので一旦引き下がった。

そういえば、カナミさん達が居ないのはどうしてだろう。抑えが効いてないのは困る。


「カナミさん達は一緒じゃ無いんですか?」

「おう。カナミとヤマトは大学のオープンキャンパスで生徒会から頼まれて駆り出されててよ、帰ってきたらログインする予定なんだけどまだ来てないみたいだな」


オープンキャンパスは16時終了で、片付け含めても18時には終わる予定だという。

6時間が1年なので、ヒロシは3年分たっぷり冒険した後、ビガンの町で待機中らしい。

町中なら【ウィスパー】が届くはずだからこの町で待ち合わせの約束をしたそうだ。


「なるほど、じゃあ最近一緒に居る人も二人と知り合いなんですか?あれ、そういえば今は一人なんですね」

「あーハルオか!オリエンサークルとサークル室が隣のサバゲ同好会の奴で、本サービスから始めたんで、ずっと付き添ってるんスよ。

今はちょっと買い物行ってるんでここで待ち合わせなんスよ。この店は女の子も可愛いっスから」


へ~。案外面倒見が良いな。

ヒロシもちょこちょこ良いとこあるよな。


「ところでユーキさんはなんでこの店来たんすか?こないだ中央広場で会ったコータって奴に聞いたんスけど、こないだ会った日にログインしたんでしょ?

ちょっと隠れた名店なのに!あっ、さては!女の子目当てでお店探しちゃったんスね!モリサキさんに言いつけちゃいますよ!」

「ち、ちが、違いますよ。冒険者ギルドでおいしい店を聞いたら紹介されたんです!」


さっき、あの娘さん……えーと、シャールちゃんだっけ?……に話しかけられて緩んでいるところをヒロシに見られているので強く出られなかった。

しかもコイツなんで森崎さんのことを覚えてるんだ?

ゲーム内ではたっぷり3年経ったと言ってたのに。

ヒロシは結構記憶力がいいんだな。

ちなみに森崎さんは彼女では無い、敬愛する同僚である。


「でもこの店、マールちゃんが引退してて悲しいっス。正式サービスまでゲーム内で6年半も経ってるなんて。妹のシャールちゃんも可愛いっすけど、俺はマールちゃん派だったのに」

「お、おめえ良く分かってんな!あのゴリラみてぇな奴がマールちゃんを射止めるなんて俺は悲しいよ」


全然関係無い人が話しかけてきてビックリした。みんなちゃんとパスタを味わって食べようよ。

この店はインテリアもちょっと小綺麗にされていて、多分男子よりも女子に受ける店なんだと思うけど昼時の客層はおっさん率が高かった。


「悪い、待たせたな。なかなか出物が無くてぐるっと回るハメになったよ」

「おう。待たされたぞ。ハハハ」

「こんにちは~」


あ、ヒロシの同行者が帰ってきた。なんだっけサバイバルゲーム同好会の人だ。

ガッチリ系のヒロシとは違うけど、それなりにしっかりした体格の人物だった。


「あ、こんちは~。あれ?ヒロシって剣術道場に知り合い居たっけ?」

「あ~。この人こないだ話したべん……じゃなくて、βテストの最後で一緒になったユーキさん。あ、コイツがさっき話した連れのハルオっす」

「ユーキです。よろしくお願いします」

「ハルヨシです。おいヒロシ!何遍言ったら分かんだ?ハルオじゃねーっつってんだろ」

「いいじゃん、このゲームの人達もハルヨシ言いにくそうだし。ハルオで一発だしよ」

「は~。おめえのせいで【ステータス】欄の通り名がハルオになってんだぞ!どうしてくれんだよ!ったく」


この人は仲間だ。ヒロシ被害者の会を心の中で結成した。

ちょっと嫌そうな反応ではあったが、割といつもの会話なんだろう。

そのやりとりからも二人の仲の良さが分かる。


「えと、俺このクリームパスタで!あ、飲み物はアイスコーヒーでお願いします」

「はい。かしこまりました。いつもクリームパスタですね。あ、いつものケーキは頼まなくて良いんですか~?」

「あ、それもお願いします」

「うふふ。ありがとうございま~す!注文頂きました~」


いつの間にか来ていた店員の女の子がそう言うと引き上げていった。

こういういつも見てますよみたいな一言が男子を引きつけているんだろう。

この店は男子には恐ろしい空間だ。余計なケーキなどを頼んでしまいそうだ。


「なんか凄い商売上手ですね。ちょっと財布がゆるんでしまいそうです」

「そうなんスよ。ここ来ると出費が増えるんですけど、稼いでるから困るほどじゃないんでまた来ちゃうんですよね~」


ヒロシは分かって来店しているのか、ボーナス出たらクラブ通いしちゃうタイプの男だった。

分かって経済を回してるならまぁいいか。この世界はプレイヤーに優しいし。


「えーと、ユーキさんでしたっけ。それ剣術道場の上位者っぽい人達が着てる奴っすよね?!ど、どうやったら手に入るんすか?」

「え?普通に道場の女将さんから貰いましたよ?」


なんか今日はこの服のことはちょくちょく聞かれるな。

この服は割と凄いモノだった。


「俺の知り合いに道場に通ってる奴が居るんで詳しいんですけど、その革の刻印は【剣術】チームの奴っすよね。それの上級って」

「あれ?ユーキさんってβの時も5日ぐらいしかやってないっスよね?本番も始めてから今日で1、2……5日目ですよね。合わせて10日目ぐらいじゃないスか?」

「てことはレプリカ版の胴着があるんすね!それ欲しいっす」


なんかヒロシが2人に増えたような気がする。この二人を組み合わせておいたら不味いんじゃ無いかな?

早いことヤマトさんかカナミさんがログインした方が良いと思う。


「ええと、一応上級になったんですよ。正確には門弟じゃなくて客人扱いなんですけど」

「ええ?良く分からんっす。上級って……【剣術】スキルのレベルが5以上って事ですよね?5って100年分の鍛錬っすよ!プレイヤーの中でもβからやってても、レベル4に到達したのがトッププレイヤーって言われてるのに」


あれ、そうなんだ。レベル4?あの設定結構有効なのか。

他の人もあの1時間が経験値1という設定に振り回されすぎじゃないかな?

それとも僕のスキルのせいなんだろうか?どっちもあり得るのでイマイチはっきりしないな。


「そういやユーキさんは元々変なスキル持ってたし経験値?がぐわっと増えるときがあるって言ってたよな」

「え、そうなの?お前そんなこと一度も言ってねーじゃん」

「そりゃ、俺らオリエン部の秘密だからな。そんな訳で俺も【盾術】と【鎧術】が4になったんだったわ」

「なんだそりゃ!初めて聞いたわ。お前いつ4になったんだよ」

「まぁ良いじゃねえか、その話はカナミかヤマトが来てからな」

「は~、お前じゃ埒が明かねえからまぁそれで良いわ」


なんか苦労しているな。どっちが支援役か分からないぐらいだ。


「で、ユーキさんは【剣術】のスキルが5以上なの?」

「ええ、まぁ5ですね」

「すげえええ!俺初めてプレイヤーでレベル5な人見たわ。ちょっとスキル見せて貰っても良いですか」

「ええと、ちょっと待って下さいね」


ええと、レベル5があったらまずいのか。

レベル5以上が隠蔽済みの【飛剣術】と【見取り稽古】以外は【剣術】【生活魔法】【AFK】だ。

でも【AFK】は持ってるってヒロシにバレてるし、消したらまずそうだよな。


なんかさっきの言い方だとレベル4が幾つもあるのもまずそうだな。4以上で隠蔽してないのはなんだっけ?

ええと【器用強化】【受け流し】【回避】【体術】【瞬発】【静止】【騎士剣術】【回復魔法】【調理】そんなもんか?あ【冒険者カード】だ。

あれ【器用強化】や【体術】もβテストでカナミさん達に合ってたときに既に持ってたような気がする。


なんとも判断に悩むな。レベル4がトッププレイヤーとか言われなければ気にせず見せていたんだけど。

とりあえずレベル5の【生活魔法】を隠蔽しておくか?


もう今更だから見せちゃうか?この先もこんなことあるなら同じことだし。

いやこれでなんか不思議な反応をされたら変なイベントに繋がるかもしれない。

ハルヨシさんはなんかヒロシに通じるものがあるので安心できない。


無言の時が流れる。


「あら~こちらのお客さんはお替わりは良いのかな?ケーキもおいしいんですよ?」

「あ、ええと、昼過ぎから用事があるのでまたにします。今度来たときに注文させて下さい」


店員のお姉さんが注文の催促にやってきた。これはあれだ、早く帰れって奴だ。

確かに400ヤーンのパスタで粘られたらこの店としては厳しいんだろう。

しかし、これはチャンスだ。


「ええとすいません、ちょっと予定があるんで先に出ます!」

「あ~。残念だけど。また!今度見せて下さいよ」

「あー。ハルオはユーキさんのは見ない方が良いぞ、いろいろおかしいから」

「ハルオじゃねーって言ってんだろ!」


珍しくヒロシが助太刀してくれた。たまにはやるじゃ無いか。でもおかしいって言うな。

店を出る前にふうと息を吐くと、振り返ってヒロシ達に手を振る。


後ろで店員のお姉さんが手を振りながらウィンクをしていた。

なんてこった。あのお姉さんは分かってて話題を断ち切るために注文を取りに来てくれたのか。これは良いお店だな。


恩返しにまたこの店に来よう。

これじゃヒロシのことを笑えないな。


次話「27 貴金属店主の【鑑定】講習会」

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