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19 剣術道場の日常

前回のあらすじ

 バイヤードさんと一緒に装具店に行って飛剣の鞘を注文した

「こんなにいろんなスキルの講習会をやってるんですな。知りませんでした」


帰りに冒険者ギルドに寄らせてもらったらバイヤードさんも喜んでついてきてくれた。

剣術道場に所属する場合、道場を経由して依頼が来るらしく普段はあまり冒険者ギルドを利用していないらしい。


早速2階に行って上級者講習会の掲示の前にやってきた。

隠蔽系の講座は午後を有効に使おうと思って午前中にエントリーしてあったので【鑑定】は午後の一コマ目に申し込んだ。

よく見れば自信が無い人は2枠エントリーしろとか書いてある。

もっともスキルのアシストがある僕は1回で取れる予感があるけど。


【鑑定】は商人に有利なものだからなのか受講料が4万ヤーンもした。結構な出費だ。

所持金が増えて金銭感覚が麻痺してきているのかもしれない。キンブリー亭の宿泊代が500ヤーンだっことから考えるとかなりの高額講座だ。


折角バイヤードさんが居るので、効果のよく分からなかったスキルについて教えてもらった。気になっていたのは【底力】と【瞬発】だ。

【底力】は体力が底をつきそうな時に一時的に能力値が上がるらしい。

【瞬発】は動作の起こりが早くなるらしい。無拍子というやつかもしれない。

これ良いじゃ無いですかということで、【瞬発】も土曜日午後の2コマ目にエントリーしておいた。2万ヤーンだった。


「ユーキ殿はなかなかの向上心ですなぁ。私も見習わないと」

バイヤードさんはそう言って講座の掲示を見ていたが、残念ながら丁度良いスキルは無かったらしい。

熟練の武芸者だから当然なのかもしれない。


―――――――


道場に戻ると丁度お昼時だったのでバイヤードさんと一緒にご飯を頂くことにした。

宴会では道場での飲食が許されていたけど、あれは特別で、普段は食堂で順番に食べるのがしきたりだった。

今朝もそうだったが、相撲部屋みたいに師範クラスから先に食べ始めて最後に初級の人がありつけるようになる仕組みだ。

相撲部屋と違って最後はほとんど残っていないということは無いようだ。


食費は月謝代や道場に対する町からの依頼料の中から出ているらしい。

僕は月謝代や食事代を払っていないけど良いんだろうか?

そんなことを考えながら昼ご飯を頂いていると、同席していたルーファスさんがこう切り出した。


「ユーキ殿の作った【見取り稽古】と【飛剣術】についてなんだが。せっかくなのでちっと道場のもんに教えちゃもらえんだろうか?」

「ええ良いですよ。僕も道場で【剣術】や【短剣術】なんかを教えて貰えると助かります」

「おお!話が分かるな!前に武神の旦那が来たときに【飛剣術】のこと知らないっつたらすげーがっかりされちまったからな。これで安心だ。

そんじゃ、午後の修練が終わった後に師範代クラスを集めての講習会にさせてくれ」

「分かりました、【飛剣術】はランク4なので最初はランク3の【見取り稽古】からにしましょうか」


とんとんと話が決まり今日の夜から平日の夜に講座を持つことになった。

冒険者ギルドにならってとりあえず2時間の講座とした。

昨日の夜のイベントが面白かったので暫く剣術道場に居候させてもらうことにしよう。

そういえば月謝の話はしなかったけど、多分良いんだろう。


「ユーキ殿。ランクとはいったい何でしょうか?」


横で食事を食べていたバイヤードさんがそんなことを聞いてきた。


「あれ?ランクっていうのは一般的な言い方じゃありませんでしたか?

スキルの難易度が1から5まで設定されていて、大きいほど習熟するために多くの経験を必要とするようです。

【ステータス】というスキルのレベル5で見ると分かるんですけどね。ちなみに【体術】は1で【剣術】は2ですね」

「なんと!確かに熱心に修練している【槍術】より【蹴術】の方が良く上がるのでやり方が悪いのかと思っていましたがそういうことでしたか」

「なんだって!世界の(ことわり)を知る思いだぜ。おれは指導者面してたがまだまだだなぁ」


バイヤードさんだけじゃなくて、なんか横で聞いていた槍術師範のギャトールさんまでもがそんなことを言い出した。

ランクとかそのあたりはまだまだ知らない人も一杯いるのか。

そういえばβテストの時にヤマトさんに経験値について話したら、すごい反応だったもんな。


ヤマトさん達は5年もプレイヤーとして遊んでいたと言っていたから情報が出回っていれば当然知っているはずだ。

このゲーム世界の人はスキルのことを神聖視しているのか、そのあたりのことが曖昧なままなのを当たり前としている(ふし)がある。


ただ、さっき同じことを話した時にルーファスさんは何も言ってなかったから知ってるのかもしれないなぁ。

あまり師範の皆さんに気落ちされても何なのでその話はそれで終わりにした。


―――――――


午後は【剣術】の集団に入って武技(アーツ)の練習に励んだ。

今日はレベル2の【落葉(らくよう)】という「く」の字を画く2連撃と、レベル3の【逆掛(さかがけ)】という「V」の字を画く2連撃を教えてもらった。

ただ単に技の出し方だけでは無く、武技(アーツ)の使いどころも指導してもらいしっかり学んだ。

もう少し高レベルになると縦の連撃もあるそうだが初心者には少し横に範囲のある技の方が良いとのことだった。


昨日レベルが上がりすぎたせいか、初級の人も混ざっての訓練なせいかレベルは上がらなかった。

昨日は高レベル者の動きを見ることが出来たのが良かったんだと思う。

ゲームじゃなかったら、強制イベントじゃなかったら、ルーファスさんと立ち会うなんて絶対にしない。


大体3年ぐらい続ければレベル3になって中級に上がれるようだが、そこが壁だと言われた。

その解決策として武技(アーツ)に取り組むことが多いんだとか。

武技(アーツ)は高レベル者の動きを模しているため、これを真面目に練習しているとレベルが上がりやすいらしい。

この時間帯、中級者以上の熟練者は初心者に教えるのが鍛錬の一環になっているようだ。


午後のパートは毎回中級者以上で、一週間分の予定を決めて金曜日に翌週の予定が発表されるらしい。

明日が金曜日なので、その発表の日だった。ちなみに明日の鍛錬は模擬戦をやるらしい。

効率よく経験値を稼ぐチャンスなのでとても楽しみだ。


僕はレベルだけ言うと中級者になってしまうけど、正式な門弟でも無いので初心者に混ざって練習させてもらった。

来週は本当に初心者として【短剣術】や【槍術】の練習に混ぜてもらうのも良いかもしれない。


―――――――


午後の練習が終わり夕方になると早々と夕食の時間となった。

僕も午後はずっと体を動かしていたのでなんだか食が進む。

今日は剣術の上級者チームに混ぜてもらって食事を取っている。


「じゃじゃーん!今日はちょっとした発表があります!さて何でしょうか?ハイ!リーファトゥースさんお答え下さい」

「え、私ですか?えええと、お嬢様が……」


あれ?彼は昨晩リットと言われていたけど、あ!リーファトゥース縮めてリットですか。あだ名だったのかアレは。

それはそうと、突然女性の門弟の人が現れてリットさんを弄っている。なんの催しだろう。


「はい!お嬢様が?」

「あ!!今日の賄いはお嬢さまが一緒に作られたとか?!」

「ハイ残念。それは合ってるけど発表したいことじゃないので愛が足りません。不正解!ぶっぶー!」


手玉に取られてるな。なんか人ごとに思えないのは彼のキャラクターのせいなんだろうか。

そうか、今日の賄いはルニートさんが一緒に作ったのか。へ~。

今日の晩ご飯は昨日学んだ料理とは全く違う、肉をタレに漬けて焼いたような肉々しい料理だ。

早速上達してるのか。


「じゃー正解をお嬢様どうぞ!」

「え?え?これは言わないとダメなのか?」

「そりゃもう当然ですよ!みんなが応援してたんですからね!!もうプンプン」


なんかこの人あざといな。課長に連れられていったお店にお水のお姉さんでこういう人がいたなぁ。

ゲームだと逆によく見かけるようなキャラクター設定なのかもしれない。


「今日の賄い作りで……私の【調理】スキルが2になりました!」


ルニートさんが顔を真っ赤にしながらそう言った。かわいいなぁ。

大量の賄いを作る厨房もある意味パワースポットだからスキル習得には有利かもしれないな。


「昨日習得したときを思い出してな、ユーキ殿に教えて頂いたようにやったらレベルが上がったのだ。ユーキ殿に感謝する」


急にこっちに向かって話しかけられた。

お?僕ですか?油断してたのでお茶を吹きそうになってしまった。


「ユーキ殿はお料理が出来る女性はどう思いますか?」

「ええ、とても良いと思いますよ」


さっきのあざとい女性が聞いてきたので素直に返す。


「ほほう。女性の【調理】スキルが高いのは好ましいと。そう思いますか?」

「え、ええそう思いますよ」


周りの圧力が何故か上がっている気がする。回答を間違えるとまた模擬戦コースの奴か。

いや、今日は講座を開くことになっているから大丈夫!そう思いたい。


「ほほ~。良い情報ですねぇ。ちなみに一緒に講座に参加したというユーキ殿は【調理】スキルはいくつですか?」

「え?えーと確かレベル3ですね。はは」

「「え?」」


なんか驚いている。嘘は言っていないので大丈夫大丈夫。


「ユーキ殿は流石ですね。本日の厨房にてレイチェルも一緒にレベルが上がったので、ユーキ殿の指導は誠に凄いと話していたのです」

「ええ、そうですか。ありがとうございます」


ルニートさんがそんな風に褒めてくれた。折角黙っていたのに【調理】スキルのレベルが公開されてしまった。

それはそうと、さっきの女性は何をやろうとしていたんだろうか。


「ほう!こりゃ我が道場の食事事情は明るいな!!」


ルーファスさんがそんな風に締めて、大きな拍手が送られた。

さっきのイベントは何だったんだろうか。シナリオライターさんは教えてくれても良いと思う。


これもGMコール案件か。


次話「20 見取り稽古と邪眼の男」

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