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10 女神様の依頼と報酬

前回のあらすじ

 ギルドマスター経由で女神様の依頼を受けた

箱の中には折りたたまれた便せんが入っており、持ち上げるとその下には魔石が3つ入っていた。

一つはきらきらと光る虹色の鮮やかな魔石で、残り2つは真っ白な魔石だった。


『ユーキ殿へ。

突然ではありますがお願いがあります。本当は直接お会いしてお願いする予定でしたが、

故あってお会いできなくなり手紙にてこれを託します。


箱に入っているのは空のスキル魔石が2つと【ウィスパー】の魔石です。

2つある空のスキル魔石にスキルを納めて欲しいのです。


一つは武神ヘンリック殿の依頼でユーキ殿がこの世に下ろした【飛剣術】のスキルを込めて下さい。

もう一つは予備ですが、可能であれば魔具神マーガレット殿のためにユーキ殿が得意とする【AFK】のスキルを込めて下さい。


空のスキル魔石はレベル5以上のものであれば、スキルを込めて人に渡すことが出来ます。

但しレベルが低いと魔石へのスキルの定着が安定せず、相手にスキルが発芽しないことがあるため、ユーキ殿のお力をぜひお貸し下さい。


魔石へのスキルの込め方は、スキルを使うことを空想しながら、魔石に魔力を這わすのです。

スキルが魔石に十分に行き渡ると魔石が輝くのでそれを目安としてくださいませ。


魔石は再びこの箱に収めて蓋をし、私に渡るイメージを固めて魔力を這わして施錠してください。

これで私が受け取るまで開かなくなりますので、これをガルディウスまたはギルド職員に渡して下さい。


不十分ではありますが、まずは【ウィスパー】の魔石を報酬とさせてください。

より一層のご活躍を期待しております。

アンネより』


アンネ様の手紙の口調が違うので違和感が凄い。こっちが素なのかな?

先に報酬を貰ったら悪いので、最初にスキルを込めるという依頼の作業をやってみよう。


『森崎さん、短剣を出して貰えますか?』

『承りました』


相変わらずのノータイムで返事が返ってくると机の上に短剣が2本現れた。


まるで近くで見ているようだ。


『見ていますよ』


え?ひょっとしてさっきの箱を開けるシーンも?


『存じません』


うわぁ。これ、絶対見てたよ。

この気の使い方が森崎さんだなぁ。森崎さんなら口外しないし、まあ良いか。


『それよりも、短剣なのですが』


ん?森崎さんが話しかけてきた。短剣?


「ええと、何でしょうか?あ!前回荒っぽい使い方したから一本痛んでるんですかね?」


あれ、でも短剣は机の上に出ているけど、両方ともピカピカだ。

あれ?元々こんな色だっけ?


『一度【ステータス】をご覧になることをお勧めします』


どういうことだろうか?【ステータス】で見てみよう。


■■■

ビガンの飛剣

 マクバリー工房製の数打ち品の短剣が【飛剣術】の原初の力を受け1対の魔剣となった。

 浮遊の力と空気を切り裂く力を備える。配下の短剣にも効果を及ぼす。

■■■


うわー。これは魔剣です。

僕が落とした奴じゃない短剣だ。と言いたい所だけど、魔剣となったと書いてあるので僕の奴です。

当時は1本の短剣を飛ばしてたから、片方は関係無いはずだけど両方同じ記述になっていた。


「これ、なんで2本とも魔剣になってるんだろう」

『ユーキ様が昏倒されたため、短剣を回収しておいたのですが、当初は片方に魔力が過剰に籠もった状態でした。

格納している間に相互に干渉し今のような形になったようです。ただ、現在も変化の途上であるように見受けられます』


森崎さんの打てば響くようなフォローが気持ちいい。ありがとうございます。


なんか量産品の短剣が凄いものになってしまった。薄く緑がかっているので不思議な感じだ。

ちょっと短剣が浮かぶ姿をを思い浮かべてみる。

ふわっと2本の短剣が浮遊した。魔力を持って行かれている感じは全く無い。

2本の剣がお互いに反対回転で周囲を飛ぶイメージで【飛剣術】を使ってみる。


おー。2本の短剣が僕の上空をぐるぐる回っている。

ゆっくり回しているけど、魔力が吸われている感じが全くしない。

このぐらいだったら【ステータス】に書いてあった魔剣の持つ浮遊の力だけで行けてしまうのか。

目の前の箱から真ん中にあった白いスキル魔石を取り出す。


段々加速するイメージを固めて【飛剣術】を使う!

ちょっと早くなったけどまだ魔力を使ってない。

普通に投擲で投げるぐらいの速度だ。

ぐ───るぐ───るぐーるぐーるぐるぐる。

ヒュンヒュンヒュンヒュン。

お、魔力がゆっくり吸われるようになった。


ヒュンヒュンヒュイ───ンブ───────────ン

おお、魔力が吸われ始めた!剣ではなく、そのまま二つの円軌道が見えている。

なんか眩しいと思ったら手元の魔石がものすごい発光していた。


おお、いけないいけない。ゆっくりクールダウンしよう。

ヒュイ────ンヒュンヒュンぐるぐるぐるぐるピタッ。

左右の上方で短剣が止まっている。なかなかシュールな絵図だ。


『森崎さん短剣を収納して貰えますか?』

『承りました』


森崎さんにお願いしたら飛んだままの状態でも収納できそうだ。


『可能ですよ』


返事もノータイムだった。

えーと思考を読むのはちょっと手加減して欲しいです。

口に出さなくても会話できるんだから思考を読めるのはお手の物なんだろうけどね。

ともあれ、魔石が発光しているのでスキル込めるのは成功したようだ。


手に持った魔石を箱の真ん中に戻す。【ステータス】で見てみようか。


■■■

【飛剣術】の魔石

 【飛剣術】スキルの力を溢れるほどに秘めた魔石。

■■■


なんか良さそうだ。右側の空の魔石を取り出す。

あとは、もう一つにあれだ。【AFK】入れるんだよね。

なんでこんな憂鬱な気持ちになるんだろうか。

さっきまでノリノリで忘れてたこともあり、少しはトイレ行きたい感じではある。


うーん。やる気が出ないな。【AFK】か~。

こうしている内にも経験値が増えているんだよな。

どこからともなく、というか広場の方から僕に流れ込んでるはずの経験値を魔石に横流しするイメージでやってみようか。

僕に集まってきている【AFK】の力の一部を魔石に流し込むイメージだ。

自分が漏斗になったような気持ちで【AFK】の力だけを魔石に入れるイメージだ。


なんか体が熱くなってきたような気がする。魔力が流れ込んできている。

魔石が段々光り出した。さっきはもうちょい光ってたよな。

多分込めた直後はあんな感じで光るんだとすると、ちょっと足りないかな。

もうちょっと!なんか楽しくなってきた。こんなもんか。

なんかこの詰める作業面白い。ぎゅーんと魔力が集まってくる気がする。


『テッテレテー!』

『ユーキはスキル【魔力吸収】を習得しました』


やばい!そのままぎゅーんと魔力を吸収していたようだ。

集まってきてるのは【AFK】の経験値だけじゃなかったようだ。

違うスキルが魔石に詰まっていたらどうしよう!

慌てて魔石の【ステータス】を確認した。


■■■

【AFK】の魔石

 【AFK】スキルの力を溢れるほどに秘めた魔石。

■■■


おー!出来てる出来てる。よかった。ほっと息を吐いた。

【魔力吸収】か、ひょんなところで、欲しかったスキルを手に入れたかも知れない。

せっかくなのでレベル3【ステータス】でスキルの説明を見た。


■■■

【魔力吸収】

魔素の吸収力を向上させ魔力回復速度を上げる。レベル上昇で回復速度が強化される

魔力回復間隔がレベル1で30秒、レベル2で20秒、レベル3で15秒、レベル4で10秒、レベル5で6秒となる

■■■


やった!これは欲しかった奴です!魔力ジャブジャブ使えるようになるよ!!

あーそうだ。報酬もあったよね。左端の光る魔石を掴むと口に放り込んだ。


『テッテレテー!』

『ユーキはスキル【ウィスパー】を習得しました』


ちょっと見てみよう。新しいスキル確認はレベル3【ステータス】で決まりだね。


■■■

【ウィスパー】

対象を一人指定して声を届けることが出来る。レベル上昇で届く距離が拡張される

レベル5まではレベルごとに届く距離が1000メートルづつ拡張される

■■■


ん?レベル5以上は違うみたいな書き方だな。とりあえず1000メートル届くらしい。

この町全部はカバー出来そうに無いけど、魔力を注ぎ込めば 行けそうだな。

でもこれ、話す相手がいなかった。ハハハハハ。


【AFK】の魔石を納めて箱を閉じると女神様のあの鯖折りをイメージしながら封をした。

鯖折りっていっても、別にあの体の圧力とかイメージしたわけじゃ……えーと。ちょっとだけです。


箱は封をしたら自分でも開けられなくなってしまった。

同封されていたアンネ様の手紙は何となく【インベントリ】に放り込もうと思ったのだが、

『こちらは仕舞っておきますね』

森崎さんが先を越して仕舞ってくれた。なんとなく、あの手紙もう出てこない気がする。


時間を見るとまだ10時前だった。こんな簡単に報酬もらっちゃって良いんだろうか?

それじゃ、箱をカウンターに渡しに行くとしよう。


でも今回の一番の報酬は、さっき棚ぼたで習得した【魔力吸収】だな。

毎晩寝る前にトレーニングしている【瞑想】より早く獲得すると思わなかったな。


僕は、ちょっとだけ便所の魔人の木を参拝している人達に感謝する気持ちになった。


―――――――


ルームAのドアを出ると1階に降りて、空いているクエスト報告カウンターに並ぶ。

さすがに10時に報告している人は少なかったので順番はすぐに来た。


カウンターに「アンネ様からの依頼なんですけど」と告げる。

一瞬嘘つきが来たというような怪訝な顔をされたが、箱を取り出すと表情がころっと変わった。

僕には分からないけど、この箱自体がなにか意味があるみたいだ。


「確かに受領しました。冒険者カードをご提出下さい」


あれ?カード出す必要あるのか?なんて思いつつも提出した。

受付嬢さんはカードをいつものプレートにかざしていた。


『テッテレテー!』

『ユーキはスキル【冒険者カード】のレベルが3に上がりました』

『テッテレテー!』

『ユーキはスキル【冒険者カード】のレベルが4に上がりました』


うおっと!あれでも普通にクエスト扱いになるのか。

ええ?どういうことだろうか、レベルが2つも上がってしまった。

実力が変わってないのに2つも上がって大丈夫なんだろうか。


「報酬は5千万ヤーンになります」

「え?!えーと報酬ですか?ご、ごせんまん?!」

「はい。この箱が届けられた場合は報酬が5千万ヤーンに設定されております」


冒険者ギルドで箱自体に報酬が設定されているようだった。さっきの反応に納得だ。

あれか、【冒険者カード】スキルは報酬連動で経験値が入るのか。


受付嬢さんが返してくれたカードを確認すると確かに5千万(ヤーン)増えていた。

直前の残高より桁が2つ増えた。

履歴にある受講費用の5万(ヤーン)が質素に見える。


アンネ様のクエストは凄かった。

さっきの【ウィスパー】の魔石だけが報酬だと思っていたけれどそうじゃなかった。

手紙に不十分ではありますが……みたいな事がかいてあったのは次の連続クエストへの導入じゃなかったのか。


これだけもらったら、ちょっと高級な魔道具が買えちゃうかもしれない。

魔道具の相場が全く分からないので大した物が買えない可能性もあるな。

向かいの店にはそれなりに置いてあるんだろうか?


あーそうだ。報酬をもらったから買い物に~なんて気分になりかけてた。

午前中の講習会をもうひとコマ受けようと思ってたんだった。


受付嬢さんにお礼を述べてカウンターを離れる。

お昼も近いし【調理】講座は人気かもしれないな。


次話「11 お料理教室は真剣勝負」

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アクセス研究所
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