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9 冒険者ギルドからの伝言

前回のあらすじ

 講習会で生活魔法のスキルを習得した

講師の人が部屋を出て、ギルド職員の人が部屋を出ると入れ替わるように今度はギルドの男性職員が入ってきた。

さっきまで講師のアシスタントをしていた女性の上司だろうか?どこかで見たことがある気がする。

っと!ギルドマスターだ。えーとガルなんとかさん。ガルフォードさん。わんわん。違う。ガルディウスさんだ。


「皆さん、一度お座り下さい。私はここの責任者でガルディウスと申します」


そうそうやっぱりガルディウスさんでした。


「今日の【生活魔法】スキルの講座について1点確認と1点お願いがあります」


むむ。なんだろう。周りもザワザワし始めた。


「まず、確認ですが、最初から知っていた方も居るようでしたが、本日の講師ですが、冒険者ギルドの者ではありません。

特別講師による講演でしたので、通常の講座と大きく異なっておりますし成果も違っていると思います」


へー。あれが普通じゃ無いのか。いつもはもう少し覚えにくい空間なのかも知れない。ラッキーだったのかな。


「そして1点お願いですが、本日の講座の内容をあまり口外しないで戴きたいのです。

我々の職員が見ていた限りにおいて、本日は殆どの人がスキル習得できたようにお見受けします。

普段は残念ながらそれほどの習得率には至りませんので、担当者への過剰な圧力とならないようにご協力下さい」


なるほどな~。優秀な外部講師の後で講座を持つのは辛いよな。

新人研修の新人向け部門紹介のプレゼンの順番が物流部門代表の森崎さんの次になった我らが渡辺課長がよく涙目になっていたな。


「皆様へは以上です。業務連絡ですがユーキ様はこの場に残って下さい。それでは皆さんお疲れ様でした」


ギルドマスターから呼び出されてしまった。早めに終わってるからまぁいいか。

ゲームプレイヤーは僕だけみたいだから何かのシナリオなんだろうか?


みんなニコニコしながら帰って行った。待望のスキルを得られたと言うことだろう。

【洗浄】はありがたいもんな。

僕はガルディウスさんが壇上で手招きしていたので、人混みをやり過ごしてそちらに向かう。


「ユーキ様、こちらを異界神アンネ様から預かっております。お受け取り下さい」


そいう言うと懐からメガネケースぐらいの小箱を取り出した。


「こちらは指定した相手以外では開かない小箱になっております。中身は依頼と報酬だと伺っております」

「そうですか、これ、箱ごと貰っちゃって良いんですよかね?確かに受け取りました」


どうやら導入イベントの続きのようだ。ガルディウスさんから受け取るとそこそこの重さの箱だった。

作りがしっかりしている。高級貴金属類のケースなんかがこんな感じだろうか?

そして間違い無く魔道具だ。神様だから呪いの類では無いと思いたい。


「ちゃんと渡すようにと何度も確認されておりますので受け取っていただかないと困ります」

「そうですかありがとうございます。ここで開けても良いんですかね」

「見てみたい気もしますが後でアンネ様に叱られるのも困りますので、まずはお一人でお願いします。

よろしければこの講堂を10時まで閉鎖しておきますので、こちらでご確認ください」

「分かりました。ありがとうございます」


このだだっぴろい部屋を貸し切りにしてくれるらしい。10時までは40分あるな。


部屋を出て行くガルディウスさんに挨拶すると、講堂の適当な座席に座った。

改めて見回すと講堂には窓が無いが、特にライトアップされている訳でもないのに明るい。

これ何だっけ?そうそう!【ブライトネス】のスキルじゃないかな。

ヤマトさんが好きだと言っていたやつだ。

さっき獲得した【生活魔法】で早速【発光】を使う必要があるかなと思ってたけど全然不要だった。


席に座って小箱を開けようと思ったがどこにも留め具が見つからない。

おしゃれな飾りが留め具になってるのかなと思ってたけどそういう訳ではなさそうだった。

ガルディウスさんに開け方聞いとけば良かった。

斥候職だったら【解錠】スキルとかもっててパカッと開けちゃうのかな。


―――――――


会社の知名度が少し出てきた頃、イベントでトレーラーを利用したことがあった。

池田がノリノリでイベント会社に手配した最新式のイベント用のトレーラーだ。

荷台の右側が開いてそのままARデバイスの競技スペースが展開されるという結構な代物だった。

そのコンテナは競技ステージを作る各社さんの協力を得て作った一点ものらしい。


イベントは日本の全国に20市ある政令指定都市を転々とした後、アメリカ大陸を巡る計画だった。

最初は北は札幌からスタートだった。

ちょっと出張費用を節約するためにメンバーを絞っていたので僕はそこに居なかった。

2つめの会場が勝手知ったる仙台だった。その頃には既に森崎さんは我々に合流していたのでイベント運営はうちでやっていた。

仙台には田波部長と斎藤と一緒に僕も呼ばれて参戦した。


さて設営するぞー!となるわけだが、池田の奴が会場にやってこない。

前の会場で一緒だった奴に聞いたら、夜の町で元気すぎて翌日風邪を引いたらしい。

あいつは広報としては優秀だけど良いときと駄目なときの落差がすごい。


みんな慣れたもので、どんどん準備は進んだが、肝心のARデバイスのコンテナが運ばれてこない。

どうしたのかと聞いたら、コンテナはあるんだけど、鍵が開かないらしい。

ダイヤル式の鍵だったんだけど、最初に設定した番号で開かないとみんなが焦っていた。


会場公開時間がだんだん近づいてきてみんなザワザワしていると池田が現れた。

奴はパジャマの上にウィンドブレーカーを着ていて丸っとしていた。


「す、すいません!ごほっごほ!!!サプライズ仕込んでたのを忘れてました。

電話……札幌のホテルに忘れてきてるしもう……ゴホゴホ!!……すいません。

今日は!誰かの誕生日です!!」


そこまで言うとと斎藤を指さしてアイコンタクトを送るとその場に倒れた。

え?斎藤?なんか聞いてるの?!


「あー!!!オッケー!!池田の意志は受け取った!俺に任せとけ~!」


突然斎藤にスイッチが入った。

どこからが仕込みだよって思うぐらいの流れるような展開で誕生日パーティの準備が始まった。

というか斎藤がちょっと待って下さいねと10分間に3,4件電話しただけで、間もなくいくつかの業者がやって来て会場が誕生日パーティの装いになった。

資金は社長からせしめたらしい。


そのまま会場にお客様を入れてイベント+誕生会みたいな変なテンションでイベントはずんずん進む。

会場のお客さんに「今日は何日ですか?!!!」とか聞いている。斎藤は司会も凄いな。

というか今日の為に雇った司会の人がアシスタントみたいになってる。あれはいいのか。


ダイヤル式の大きな鍵は今日の日付で開いた。

コンテナの中身は最新型のARデバイスとドライアイスに厳重に囲まれた誕生日ケーキだった。

今日は田波部長の誕生日で、合わせて新作発表の場にしたらしい。


そのイベントは多くの媒体を通じて流され、結局大成功だった。

キャラバンの一発目に発表しないのか?と思ったが、そこも含めての仕込みだったらしい。


池田がノリノリで社長と相談して準備していて、周りの人にもサプライズにするため誰も知らなかった。

というかそれを今日の日付だけで理解する斎藤はどういうことなんだろうか。

奴はちょっと池田に通じるものがあるのかもしれないな。


ちなみに田波部長は30超えて誕生日を公開で晒されるなんて!とステージで感激した後、ステージを降りると激怒していた。

池田やっちゃったな。あの後、バーに付き合わされて大変だったな。

矛先を僕に向けるのはやめてほしい。日々お世話になっているので、いいんですけどね。

部長は翌日にはケロリと機嫌が直っていた。


―――――――


そう、ちゃんと言って欲しい。鍵のこと。

こうしてみると、僕は知らないうちに事が進むのが苦手なのかも知れない。


『テッテレテー!!』

『ユーキはスキル【解錠】を習得しました』


よっし!このゲームは本当にご都合主義に溢れてるな。これで箱の中のものが取り出せる!!


「解錠ォ!!!」


そう口に出してみたが、箱に反応が無い。池田ばりにノリノリで言ったのに。


あれ?と、そっと箱を持ち上げて確かめる。

ちょっと強めに引っ張ったら、メガネケースのようにパカッと上下に分かれて開いた。

単に加工が見事すぎて、接合部が見えないだけだった。

僕が持った時点で既に解錠されていたようだ。


僕は部屋に一人にしてくれたギルドマスターに感謝の祈りを捧げた。


次話「10 女神様の依頼と報酬」

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