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2 女神様と冒険者ギルド

前回のあらすじ

 女神様に鯖折り食らって気絶した

目を覚ますと木造の部屋の中ソファに寝かされていた。自宅の部屋ではないのでゲームが続いてるらしい。


「あ!気がつきましたか!」


若い女性が声を掛けてきた。心配そうにこちらを覗き込んでいる。

どういう状況だろうか。向かい合ったソファーの間にテーブルが配置されている。応接室のようだ。

僕はβテストで見慣れたジャージを着ていた。そういえば女神様ばかり見ていて自分は見てなかったな。

女神様はいったいどこに?


「ユーキ殿の気配が動いた!気がつかれたか!!」


バーン!と扉が開かれて勢い良く入ってきたのは女神様だった。

あれ、普通に生活圏にいるの?女神様なのに?そんな設定なのか?


「ここはいったい?どういう状況なんでしょうか?」

「おお!そうじゃ!ここはビガンの町の冒険者ギルドじゃ。そなたが気を失ってしまったゆえ、介抱するため冒険者ギルドに運び込んだのじゃ。

兄上が(わらわ)の神殿と各地の冒険者ギルドを繋いでくれておるのでな。

(わらわ)は【回復魔法】は苦手ゆえ、こちらの者の力を借りようと思ったのじゃ」


さっきの場所はやっぱり神殿だったのか、そしてここは冒険者ギルドか。

言われてみれば、さっき声を掛けてくれた若い女性はギルドの受付嬢さんの格好をしていたな。


「なんで神殿と冒険者ギルドが繋がっているんですか?」

「それには私がお答えします」


女神様の後ろから部屋に入って来た初老の男性がそう言った。

その年代向けのファッション紙の表紙を飾れるような渋みのある男性だった。

但し、頬の傷と鋭い眼光と耳の上から生えた角がファッション誌的に相応しいかは少し疑問だ。


「私はビガンの町で冒険者ギルドのリーダーを勤めております、ガルディウスと申します」


ギルドリーダーと女神様がソファーの向かいに座ったのに合わせて、僕も体を起こして腰を落ち着けた。


「冒険者ギルドは各ギルドの抗争が絶えない時代に、こちらの異界神アンネ様が設立された組織なのです。私たち各地の冒険者ギルドの職員は異界神の使徒になるべく、日々励んでおるのです」

(わらわ)には過剰な計らいじゃ。やめろというておるのに全く話を聞かんのじゃ」


女神様はアンネ様というのか。

冒険者ギルドは異界神の神殿の下部組織のようなものらしい。

良く見たらガルディウスさんは指先が震えているし、顔色が余り良くない。緊張しているようだ。


「アンネ様は人類が争い事を始める度に異界から持ち込んだスキルで沈めてくれたのです。

貨幣の危機を【冒険者カード】【市民カード】【貴族カード】による魔道マネーで解決した際も見事でした。

ギルドごとの労働力の取り合いから抗争に発展してしまった際も、冒険者ギルドで舵取りにをしてくれました」


ガルディウスさんが熱く語っている。ちょっと顔色が良くなった様な?


「事の起こりはゲルハルト歴1500年頃と記録されております。

当時も人の前には姿を見せない次元神様でしたが、他の神々とは親交があったそうです。

その次元神様の加護で人類は物体に干渉するという概念を得て多くのスキルが生み出されたのです。

その中の一つ【精錬】スキルによってこれまで見向きもされなかった金属屑がたちまち宝の山となったのです。

屑金属に含まれる希少な金属が抽出されるようになり、鉄貨や屑銅貨が回収され【精錬】されたのです。

貴族が使うような貨幣は残ったのですが、当時の市井の者達は大いに戸惑いました。」


屑銅貨から銅を集めたのでは無く、含まれている希少金属を集めたらしい。

ガルディウスさんか熱く語っているので、ここは大人しく聞く流れなんだろうか?


「当時、異世界より戻られたアンネ様は市井の者達が苦しんでいるのを救おうと、魔具神マーガレット様と共に魔道マネーの仕組みを作って下さったのです。

アンネ様はカードのスキルを、マーガレット様は決裁のための魔道具を広く下賜されたのです。

人々は大いに救われ、幾つもの争いが未然に防ぎ止まられたと記されております!

そのような大義を成し遂げられたのに奢らず、我々のような冒険者ギルドに連なる者だけではなく、広く対等に接してくださるのです。

それにとても強く!優しいのです!そ、そしてとてもお綺麗なのです!!!我らの憧れなのです!!!」


いつのまにかガルディウスさんは涙を流して右手の拳を握りしめながら語っていた。

先ほどの女性職員も両手を握りしめてしきりにうなずいている。

最後のは単なる感想だよね?


「これ!ガルディウスよ!」

「はっ?!ははっ」


ちょっとどこまで続くのかと思ったが女神様がストップをかけた。


「話が回りくどくなってかなわん。(しば)しユーキ殿と2人にしてもらえんかの?」

「はっ……」


ガルディウスさんとギルド職員の女性がとても名残惜しそうに出ていった。

女神様はずいぶんと慕われている神様のようだ。


「ユーキ殿。先ほどの続きを話そうではないか。

その前に……先ほどはすまなんだ。少し力を入れすぎてしもうたようじゃ。

人との接触は久しい故、力加減をすっかり忘れておったわ」


女神様は再び謝ってきた。あまりペコペコされると神格が落ちたりしないのか心配になる。


「女神様っ。そんなにされなくても大丈夫です。【圧迫耐性】スキルのレベルも上がりましたし」

「共に神見習いとして歩む者じゃ。妾のことはアンネと呼んで欲しい」

「分かりました。アンネ様」

「いや、もっとこう……マーガレット殿のようにアンネちゃんとか呼んでも構わんのじゃが……まぁ良い」


神見習い?いや神様なんだよね?神様の中にも階級があるんだろうか?

そんなことを考えていると、何度かうなずいているので納得してくれたみたいだ。


「さて、姿が固定されたという話をしたのじゃが、それはユーキ殿が【ログイン】スキルを得てこの世界との繋がりが確かになったからじゃ。

ヴァース世界の現し身がユーキ殿の一部として取り込まれ一つの存在となったのじゃ。

これは姿に限った話では無いぞ。地球(アース)世界のユーキ殿の持つスキルがこちらの世界にも強く表れるようになっておるはずじゃ」

「なるほど、【ログイン】を覚えるとちょっとスキルにボーナスがあるんですね?」

「うーむ。そう言うことも出来るか。間違ってはおらぬ」


こうやって段階的にボーナスが解放されていくゲームのようだ。

いちいち女神様が説明してくれるイベントが置いてあるなんてチュートリアルが手厚いゲームだな。


「ユーキ殿はこの世のスキルについてどの程度ご存じかな?」

「えーと、レベル2の【冒険者マニュアル】には一通り目を通しましたよ」

「レベル2というとどれぐらいじゃったか……まあ良い。

我々はヴァース世界をスキルの力で広げてきたのじゃ。スキルとは当たり前にあることを世界に定着させた力じゃ。

ユーキ殿のように己を貫く力が強い者はスキルを習得する力、生み出す力も強い。

この世にあるべき、あって欲しい、あるのが当たり前。そのような強い思いが固有スキルを発現させるのじゃ。

さらに深くこの世に根ざす時、それはこの世界のスキルとなり、その時世界は広がるのじゃ!

ユーキ殿がこの世に降ろした【飛剣術】のようにな」

「はい。βテストの終わりでもそのような話をされていましたね」


βテストの終わりの説明をチュートリアルとして再度詳しくやるんだろうか?

女神様と二人きりは嬉しいけど、ちょっと心臓に悪いので少し困るな。

今回はテーブルを挟んでいるのですぐに鯖折りにはされないと思うけど。


「我々、神見習いはこの世にスキルを降ろし、世界を広げるのが習いじゃ。

共にこの世を広げるべく共に精進しようぞ!」

「はい!よろしくお願いします」


アンネ様が凄く良い笑顔で言うので嬉しくなってしまった。

ゲームもこういう美人に支援されてのスタートだと張りが出るよね!


「む。すまん。兄上からの念話じゃ。ガルディウス!!入って参れ」


アンネ様が扉の方に声を掛けるとガルディウスさんがニコニコで入ってきた。

ちょっ、ずっと聞いてたの?変なこと口走ってなかったよね。


その後はアンネ様が神殿に戻ったのでその場はすぐに解散となった。

アンネ様が帰ると言ったときのガルディウスさんのがっかりした表情が相当面白かった。

最初の渋い印象はどこかに行ってしまった。


職員の女性の誘導に従い扉を出て通路を抜けると冒険者ギルドのカウンターのある部屋に出た。

心なしかカウンターの数が増えているような気がする……いや絶対増えてる。

前はカウンターが5個ぐらいだったけど、今は10個ぐらい用意されている。

本番サービスに合わせてプレイヤーが増えるから増築した設定のようだ。


βテストではグリフォン討伐に連れ回して貰った以外は鼠を狩る日々だったけれど今回は何をしよう!

まずはあまり見てなかった町の中を探索してみようかな。


こうして2度目の冒険が幕を上げた。

次話「3 ステータスと無理を通す力」

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