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1 女神様は水辺の香り

今日から「2章 女神様と冒険者ギルド」に入ります。

週末に閑話を数話更新していますのでそちらも読んで頂けると幸いです。

「遅かったのじゃ!!!遅すぎるのじゃ!!もう来ないかと……(わらわ)は心細かったのじゃ!!」

僕はゲームにログインした途端、異界神様に(さば)折りにされていた。


「ぐるじい」

「す、すまぬ。ちょっと感極まったのじゃ」

ゲホッ、ゲホ。はー。ちょっと、いや、だいぶやばかった。肺の中の空気を全部吐き出させられる勢いだった。

女神様は、ほんのちょっと締める力を緩めてくれたが拘束は解いてくれなかった。

しかも凄い力だ。女性らしく柔らかな感じだが、離れようとしてもびくともしない。両手で抱き留められて身動きが出来なかった。

ち、近いです女神様。


「ユーキ殿は【ログイン】スキルがあるのじゃから、すぐにでも来れたろうに、どうしてこんなにかかったのじゃ?」

「え?えーとサービスは今日の0時からですよね?」


なんだか【ログイン】スキルを持ってる人は早期ログイン特典があって昨日からログインできたような言い方だった。

どっちにしても、昨日はeスポーツ部の合宿に行ってたからゲームは出来なかったはずだ。

そのまま朝まで飲んで、昼過ぎに起きてきて夕方にログインすることになったのは予定外だったけど。

意外にお酒も残って無くて元気だったからログインしたけど、普通なら明日になってたとは言えない雰囲気だった。


「ユーキ殿がヴァース世界を離れてから9年の余が過ぎたのじゃ!

(わらわ)も気が長い方じゃが、他の地球人(アースリング)が現れ始めてからも一向に現れる気配が無い故、ほとほと心配したぞ。

ユーキ殿は、待望の神見習いとして(わらわ)と共に並び進む者じゃ。心配させるでない」


えーっと本番のサービスはそういう設定だったのか。

みんな女神様に鯖折りされてスタートとは変わったゲームだ。


異界神様は相当な美女だ。その美女に抱きつかれている!

なんとも役得だ。彼女は改めて見るまでもなく凄い美人だ。プロポーションも最高だ。

張りのある胸が押しつけられていて目を向けないようにするのが大変だ。

そして美女にじっと見つめられているのだ。ドキドキしてきた。あ、瞳孔をよく見たらが縦長の形をしている。

この人竜人種(ドラグーン)なんだっけ?このゲームはこんなところまで良く出来てるなぁ。

女神様は目力もすごい。思わず引き込まれそうだ……ブルっと体が震えた。気がつけば背中に嫌な汗をかいていた。


『テッテレテー!!』

『ユーキはスキル【魅了耐性】を習得しました』


「あっ」


思わすスキル習得してしまった。美女との急接近に僕の精神が耐えられなかったらしい。

それはそうと、変な音が鳴った気がするけど、これは何だろうか?


「ちょ、ちょっと離して頂けますか?ち、近いですし!」

「い、嫌じゃ。ずいぶんと待たされたのじゃ!また地球(アース)世界に行かれては叶わん!」


女神様は再び力を込めて抱擁してきた。ちょっと嬉しいけどやめて!!


『テッテレテー!!』

『ユーキはスキル【圧迫耐性】のレベルが2に上がりました』


く、くるし……くない?平気かもしれない!【圧迫耐性】レベル2凄い!

そして、やっぱり変な音が鳴っている。


「えーと、まだ【ログアウト】スキルを習得してないので多分死なないと帰れないですよ」


女神様はようやく納得してくれたらしく離してくれた。ふー。苦しくはあったけど素直に言えばちょっと残念だ。

それにしてもふんわり良い匂いだったな。時折、嗅いだことのあるような変わった臭いが混ざってたけど。


周りを見回すとβテストの最後に居た派手な神殿とは違って、白い壁に囲まれた広い空間だった。

落ち着いた雰囲気こそあれど、立派な飾りの入った柱が何本も立っている。ここもどうやら神殿のようだ。

良く見れば女神様はジャージ上下ではなく、白く輝く布のローブを纏っていた。

装飾品類による過剰な装飾は無く、素材の良さが良くわかる格好だ。

非常に女神様らしく、とても似合っている。


「ユーキ殿には謝らねばならん!」


女神様は居住まいを正すと急に謝ってきた。女神様は謝るときも堂々としている。

鯖折りの件なら別に良いですよ。ちょっと役得だったぐらいだし。


「その体のことじゃ」


違った。全然違う話だった。体?どういうことだ?

両手を広げて見回してみるけど、特に不思議なことは感じない。


「マーガレット殿がな……試しの期間、最後の頃の現し身造りで少し手違いがあったようでな。ユーキ殿の年齢が姿に反映されておらんかったようなのじゃ」

「えーとどういうことでしょうか?」

「お主の地球(アース)世界の姿より若く固定されてしまったようなのじゃ」


ゲームのアバターの年齢がずいぶん若く設定されてしまったということらしい。

ふーん。アバターを作る機能が無いってことなのかな?


「なるほど!別にかまいませんよ」

「なんと!お主は器が大きな男じゃな!惚れ直してしまうわ!」


再び女神様に鯖折りを食らった。本気の女神様の力の前には【圧迫耐性】はレベル2じゃ全く無力だった。


気を失う前にふと思い出した。良い香りに混じるこの臭いは、昔に飼ってた亀の臭いだったと。


次話「2 女神様と冒険者ギルド」

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