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29 βテストの終わりに

前回あらすじ

 新スキルを覚えたらガシャーンと暗転

「おめでとう!あなたはβテストをクリアしました」


真っ暗な闇の中でチュートリアル先生の声が聞こえた。

段々視界が戻ってきた。なんだろう、ここは?丘陵地帯の【ラージラット】は殲滅できたのか?あれっ?


僕は神殿らしき場所の内側に倒れていた。

それはそうと、なんだろうかここは、趣味の悪い建物だ。

ギリシャ神話の神殿風ではあるのだが、スマホゲームで見たような派手な色彩と過剰な装飾でデコレーションがされていた。

金色と青色と緑と配色がおかしい。成金でもそれは選ばないような配色だ。

しかし、一見して高級そうと分かる建物だった。

建物というか神殿だ。周囲に壁が無かった。

地面には赤絨毯が敷かれて、謁見の間のような空間だった。

神殿の周囲を見回すと、遠くの空は虹色に揺らめいている。


改めて正面を見るとこれまた高そうだという事がわかる巨大なオブジェのような椅子があった。

金なのか銀なのか宝石なのか羽根なのかよく分からないけど過剰な装飾がせめぎ合いギリギリのバランスで成り立った物体だ。

その物体に美女が座っていた。


「おめでとう!あなたはβテストをクリアしました」

「えっと2回言わなくても大丈夫です」


さっきも聞こえていたので、きちんと訂正しておいた。まだ30だし、耳は良い方だと言われる。


美女は耳の上辺りに後ろ向きに角が生えている。亜人種の人だ。

モデルのような長身に女性らしい体型で口元に称えた笑みもあって女神様のようだ。

なんかモゴモゴと言っている。「大事な…2度…」


「あー。異界神ちゃん!!」


しまった。誰だか分かったので思わずカナミさんの言い方が出てしまった。


「気安いわ!」


女神様から低い、しかし通る声が響いた。


「いやだって、その格好」


僕もそんな格好じゃなかったら異界神ちゃんなんて絶対言わなかったし。


「はー」


思わずため息が出た。なぜなら女神様はこの過剰に荘厳なこの神殿の過剰に豪華な玉座に似つかわしくない装いだった。

彼女はジャージ上下を着ていた。


「ジャージは正装!お主らの世界の言葉では無いのか?」


やたら声が良い。見た目も良い。相まって残念さが凄い。

外国人が騙されてなのかノリなのかちょんまげのカツラを被らされているような違和感がものすごい。


初期装備がジャージ上下だったのがものすごい腑に落ちてしまった。

この女神様がジャージ趣味だから初期装備がジャージになった。そんな設定なんだろう。


「体育会系の部活で言われる言葉ですね」

「体育会。武門のようなものであろう。我は武の者にも等しくあるぞ」


言うことは立派だった。立派?なのかな?自信に溢れていて凄い。


ちょっとジャージに引っ張られすぎていたが、どんな状況なのか説明が欲しい。

βテストが終わったというのは分かった。けどもうちょっと普通の終わり方があったんじゃないか?

システムインフォメーションでβテストの終了を【コンソール】に流すぐらいはしてくれても良かったのに。


「ええと。今、どういう状況なんでしょうか?βテストはもう何年かあると思っていたんですが?」


ヤマトさんの見立てではβテストが7月30日の夕方までだったとしても1年半はあるはずだった。


「ふむ。この世界は新たなスキルを求めておる」

「あ、はい?」


あ、、れ?会話がかみ合ってない。これはNPCだからなのか?


「お主が生み出したスキルが世界に定着し、世界を広げたのじゃ」

「そういう世界でしたよね」


分かります。そういう設定のゲーム世界ですよね。


「そうじゃ。世界には多くのスキルが溢れておる。自らが自らの世界に新たなスキルを生み、小さく世界を広げるものは多い」

「えーと、固有スキルのことでしょうか?」


そうそう、あれは自分専用のスキルですよね。


「そうじゃ。中々に物わかりが良いな。しかし、自ら世界からヴァースに届くスキルを新たに生み出せる者は多くないのじゃ。」

「神様にはそいういう力があるんですよね」


それ【冒険者マニュアル】で読みましたよ。


「そうじゃ。そして世界はその力を欲しておる。おぬしが生み出した【飛剣術】は世界を大きく広げたのじゃ」

「あのガシャーンって奴ですか」


これって、固有スキルの何個目かがトリガーになってβテストが終わるようなフラグが別にあったようだ。

死亡と【ログアウト】の他には固有スキルの4つ目が引き金だったらしい。


「そうじゃ。本当に理解が早いのう。これが理不尽を覆せし力の源か」


女神様は腕を組むと、右手を顎に当てて何か思案している。

スタイルが良いのでそんな風に腕を組むとジャージとは言え、いやジャージだから?目のやり場に困ってしまう。


「あっあの!βテスト終わってしまったって事ですけど?集めていたメダルとかは残ってるんですか?」

「ふむ。現し身で集めたものであっても、スキルに納めておれば残っておるじゃろうな」


βの引き継ぎ設定についても予想通り話してくれた。彼女の声はチュートリアルと一緒だからね。

チュートリアルを担当するNPCということなんだろう。


「お主は世に力を生み出す才能に長けておるようじゃ。改めて、我らがヴァーズに渡り、その力存分に発揮するつもりはあるかの?」

「あ、そのつもりですよ。えっと、明後日からでしたっけ?」


βテストが終わって、正式サービスにログインするか聞かれた。

この人チュートリアルだけじゃなくて、アンケートみたいなこともしてくれるのか。

ARスポーツでもデバイスの試作品試験の時に、アバター型のナビを使ってアンケート取ったら回収率あがるかもしれないな。


「おお!そのように言うてくれるか!やる気があるのは良いことじゃ。我らが世界にとっても福音となろう」

「そうですね、メダル回収したまま確認してないですからね」


女神様がやけに喜んでくれている。ちょっと大げさだなこのNPC。

製品購入者だけしかβテスト出来ないんだから、正式版を遊ぶのはほとんど当たり前なのに。

この反応はちょっと設定ミスなんじゃないかな?


「ちょっとゲームやる前にソファに座ったままの姿勢だったんで、一度トイレによって。ベットに横たわってからにしたいですけどね」

「その程度を待つぐらい造作も無いことじゃ。良い、行って参れ。

その前にこれを飲むが良い。お主であれば、必ず力は発現するであろう」


女神様は魔石を差し出してきた。あー!これ分かります。スキル覚える魔石だ。


『ユーキはスキル【ログイン】を習得しました』

『ヴァース世界とのリンクが確立しました』


あれ?インフォメーションの声は良く聞くと女神様とちょっと声が違うかもしれない。


「覚えましたよ」

「再びこの世界で相まみえることを楽しみにしておるぞ!【ログイン】のスキルによりこの世界に戻って参れ」


これが女神様との最初の出会いだった。

こうしてβテストは終了となった。

一章終了。明日からデータ2つと番外編を4話を2話づつ週末も更新し、来週から2章です。

次話「ex1 1章終了時点の主人公のステータス」


βテストが終わって2章から本番サービス期間に入ります。

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