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28 新たなスキルの目覚め

前回のあらすじ

 【短剣術】のアーツは一長一短だった。短剣に慣れた

腰を下ろして少し休憩だ。余計に買っておいたサンドイッチをおやつとして頂いている。

コーヒーを入れるような容器もあれば良かったな。水筒があるのはありがたいけれど。


「ふー」

大きく息を吐いた。気持ちを切り替えなければならない。

僕は鼠の力を侮りすぎていた。

繁殖力が高いのは種として強力だ。どれだけ武力があっても、数の前にはかなわない。

やっぱり僕はまだまだだった。実際まだ始めたばかりに近いわけだけども。

森に歩いて行ったあの人のように【ラージラット】が逃げるようになってからが始まりかもしれない。


よし!よーし!よろしい!本気だ!ゲームだろうが本気で挑むぞ!

これまでだって、eスポーツも、ARスポーツも、開発職も、営業職も本気で挑んできたんだ。

まぁ。ムラがあると良く言われますけど。


ゲームだって本気だ!

僕は両手で顔をバシッと叩き気合いを入れた!


田波部長の休憩してきなよという言葉にちょっと緩んでいたけどゲームだって本気で取り組んだほうが面白いだろう。

ここまでこのゲームを遊んできてARスポーツのメダリストを目指した僕ならではの戦いがあることに気がついていた。

ARスポーツと言えば【金玉飛ばし】だ。


ゲームだしせっかくだからと剣を振ってみたが、まだまだ素人の剣術だ。

この数の暴力に立ち向かうための僕の全力はそれじゃない。


とはいえさっきまでの戦いもかなり参考になった。

そう【短剣術】と【剣術】が教えてくれる刃筋だ。

また、短剣がさっきから丁度良くなじむなと思っていたが、これは重さが丁度良い。


『森崎さん短剣を一本しまって、杖を出して下さい』

『承りました』


左手の短剣の代わりに小鬼(ゴブリン)の杖を掴んだ。これで魔力消費を抑えたい。


なるべく冷静を心がけながら、巣穴から出てきて溢れかえっている【ラージラット】の集団に向き合う。

右手に持つ短剣がふわりと浮かぶイメージで【金玉飛ばし】を使う。


短剣は切っ先を【ラージラット】に向けて浮遊している。よしイメージ通りだ。

目の前の10メートル範囲ぐらいのラージラット数匹を縫って繋ぐような軌道を頭に描く。


【金玉飛ばし】!!


短剣はゆるゆると流れるような軌道を描いてラージラットに向かって行く。

ただ突き刺すだけじゃない。先ほどまでの【短剣術】と【剣術】が教えてくれた刃の通し方を再現するのだ。

ゆっくり近づき、敵の近くで速度を上げて切り裂く。

ARスポーツの経験から飛行する短剣の傾きと回転、速度を制御するイメージを固めていく。


ゆっくり近づき、敵を切り裂き、突き刺し、抜ける。再びそれを繰り返す。

僕は短剣の軌道をはっきりと頭に描きながら、少し早歩きで短剣を追う。同時に【解体】する。回収は森崎さんにお任せだ。

緩急をつけた動きは、段々と鋭さと正確さを増していく。


『ユーキはスキル【エネミーサイン】を習得しました』


【ラージラット】を見ると敵だということが分かる。うん。周りは全部敵だ。敵味方入り乱れてないと関係無いな。


『ユーキはスキル【ターゲット】を習得しました』


視界の中で敵の位置が分かりやすくなった。短剣の軌道上の敵の頭の上に逆三角のアイコンが見えている。とてもゲームらしい表現だ。


『ユーキはスキル【投擲術】を習得しました』


手で投げていないが、同ような扱いなんだろうか?気にせず攻め続ける。


ざっざっ。少し早足で丘を覆う鼠たちを蹂躙していく。魔力がじわりじわりと減っていくが、まだまだ大丈夫だ。

周りからじわじわと切り崩し【ラージラット】が密集しているエリアに近づいていく。少し個体が大きいものが混ざっている。

いよいよこのエリアの本丸だ!本気でこの数の暴力と渡り合うんだ!


じりじり魔力が無くなっていく。いよいよ本気のダッシュで敵の集団に飛び込んでいく。

魔力が尽きるのが先か、殲滅するのが先か!

どうせ鼠は巣穴からまた出てくるのだから、焼け石に水だが地表の敵を一気に倒すのだ。


『ユーキはスキル【ターゲットライン】を習得しました』


短剣の軌道上に突然、光る線が現れた。脳裏に描くよりもずっと明確になった。軌道を丁寧に修正していく。


そんなことより魔力がおぼつかない。

焦らずに丁寧に急いで攻めていこう。


『ユーキはスキル【視力強化】を習得しました』


突然遠くの敵が見通せるようになった。これは凄い。より正確さを増した短剣が飛んでいく。


あとは、あの集団だけだ!!

頭がガンガンする。魔力が尽きる寸前なのがよく分かる!

見えていた最後の集団を短剣が一凪ぎに切り裂いた。そして短剣がふっと地面に落ちた。


「うおおおおおお!!!!」


思わず雄叫びを上げた!!頭がガンガンするがそんなことはどうでもいい!!

鼠共の数の暴力に一度目の勝利だ!!!体が熱い!


『ユーキはスキル【飛剣術】を習得しました』


ん?【スキル習得】のリストで見たことが無い新しいスキルだ。


ゴーーーーーーーーン!!!ゴーーーーーーーーン!

突然大きな鐘の音が聞こえた。


地面が揺れている!なんだこれは。地震か?魔物か?

周りを見回すが特に敵影は見えない。さっきまでの丘陵地帯だ。

しかし、いよいよ揺れが大きくなり、立っていられない。


よく見たら視界にヒビが入っていく。空間が、割れている?

ギシッ、ゴリッ、ゴガガガガガッ

何か重たい物が引きずられるような音がする。

揺れが大きくてよく見ていられない。


空間のヒビからいろんな色の光が溢れて視界を色の奔流が埋め尽くした。

目を閉じても光が消えない。どんどん光が強くなる。


ガッシャーン


なにかものすごい大きなものを割った音がした。

突然周囲が真っ暗になった。


僕はそこで意識が途切れた。

次話「29 βテストの終わりに」

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