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19 その場を離れるいろんな理由

前回のあらすじ

 チュートリアルは言う「ボス倒せ」。無視して買い物した

3日目の昼ご飯もサンドイッチにコーヒーで100(ヤーン)だった。

いろんな物価から見ると結構安いんじゃ無いだろうか?

キンブリー亭の晩ご飯はサービスしてもらって400(ヤーン)だった。

あれが高いのかな?確かにあそこのご飯はおいしいけど。


ぼーっとご飯を食べていると、この町にもいろんな種族が生活しているらしきことがよく分かる。

ゲームなのになんだか余裕がなかったのかもなーなんて思いながらコーヒーをすする。

あ、あの人の角は流線形でかっこいいなぁ。でも洗髪が大変そうだな~。

ああ、洗髪も洗浄魔法で一発だから洗いにくいとか関係無いのか。

あの人は人間っぽいけど、よく見ると腕に鱗が生えてるのか。


ゆったりランチを楽しんだ後、広場の中の芝生のような草が生えたスペースにやってきた。

ご飯を食べている集団も結構いる。家族やカップルだろう。

僕も丁度座りやすそうな斜面を見つけて腰を下ろした。


今日の行動目標の2つ目、【森崎さん(クローク)】と【イクイップ】の連携を調べたい。


『森崎さん、ちょっと聞いて良いですか?』

『はい。如何しましたか?』


脳内で語りかけたら返事が返ってきた。やっぱりこういう対話型のスキルだ。


『森崎さんに頼んだら手のひらなどを指定して武器を出してもらったり出来ますか?』

『はい。出来ますよ』


おお!出来るらしい。これは【イクイップ】不要な流れじゃないですか。あれ凄い頑張って習得したんですけど。

【インベントリ】と【イクイップ】は同時に使うと便利だけど、それぞれで魔力を使うらしいのでこれは凄いことだ。


『ちなみに一つ装備を呼び出すのにどの程度魔力を使うのでしょうか?』

『装備の転移に必要となる魔力は最低単位が3で、1つ当たり、1リットルサイズ程度までを呼び出すことができます』


へー。そんな仕組みになってるのか。品物の大きくなると消費魔力が増えるってことか。

あれ?でも熊の毛皮はかなり大きかったけど、魔力そんなに減ってなかったような?


悩んでいると、森崎さんはこう続けた。


『ですが、魔力については私の方で運用させていただいておりますので、ユーキさんからはいただいておりません』

「ま!マジですか!?」


脳内会話してたのに、思わず声が出てしまった。ちょっと恥ずかしい。


『はい。周囲の魔素を吸収し適宜利用する形でサービスを提供させていただいております。これからもご贔屓にお願いします。』

『は、はい。よろしくお願いします』


想像以上だった。やっぱり森崎さんの居るクロークは最強の収納だ。

収納の精霊らしい森崎さんが周囲の魔素を取り込んで魔力としてクロークを維持運営してくれているらしい。


こうして本日の2つめの行動目標はあっさりと達成された。

この間3分。それならとすぐに剣帯も格納してもらってものすごく身軽になった。


『ありがとう!森崎さん!』

『いつもご利用ありがとうございます。』


森崎さん(クローク)】はあくまでもビジネスライクだった。


―――――――


続けて本日のメイン、3つ目の行動目標である【AFK】の取得だ。

どこにもキーボードが無いが、古来からの言い回しでAway From Keyboardで定着しているネットスラングだ。

いろんな理由でその場を離れる時に使う用語だけど、このゲームはAFKする理由を解消してくれるとのこと。


僕もeスポーツをやっていた身なので、ネットゲーム体験は豊富な方だ。

離席する理由として何があるのかというとその大半は生理現象だ。

トイレに行く、鼻をかむ、喉が渇いたので飲み物を飲む、長めのものになると、風呂に入ったり、ご飯を食べてくるなんてのもある。

別の理由になると、同居人都合が多かったな。

洗濯物を干す、料理を作る、犬の散歩、金魚の餌。子持ちだと赤ちゃんのおしめ交換やミルクなんてのもあったな。


そうだ、忘れられない離席理由を思い出した。仲間の一人が大規模戦の直前のことだった。


「あ!まずいあfk」


突然それだけ書いて奴は離席した。全然戻る気配も無かったし、多くの人が参加していたので定刻通り大規模戦が始まった。

結局戦いは僅差で勝ったが、僕個人は奴の慌てた書き込みが気になって試合に集中できずぼろぼろだった。

反省会をみんなで開いていたが、そろそろお開きにしようかと相談していた頃、奴は戻ってきた。


「いやー本当にすまん。ちょっと警察に行ってきたので遅くなった」


みんな戦慄した。裏チャットで不穏なことを言い出す奴も居た。


「ちょっと窓の外見てたら、子供が川の近くで危ない遊びしててよ。

落ちそうになっててヤバそうだったから叱り飛ばしに行ったら、目の前で落っこってさー。

慌てて持ってったロープ投げたんだけど、子供が慌てててなっかなか掴めなくてよ。

結局自分の体にロープ巻いて飛び込んできたわ」


こんなことあるんだろうか?この人はロープ常備なのか。僕がおかしいのか?頭がぐるぐるした。


「うまくなんとか出来たんだけど、子供がぴゅーっと逃げてしまって、そこに警察が来てな。何でか知らんけど、俺が飛び込んだことになってずいぶんつかまっちまった」


この人凄いんじゃ無いだろうか、みんなから賞賛のチャットが飛んだ。


「で、寒いからひとっ風呂浴びてくるわ。AFKね。」


奴はまだ戻ってくる気だった。すごくタフだった。

彼のキャラ名と全く関係無いけど、彼はそれ以降みんなから尊敬を持ってロープと呼ばれた。

実際近所のプレイヤーの情報によれば、偉い人から章をもらって、新聞に掲載されていたらしい。

リアル割れの瞬間である。彼は彼女だった。


AFKにもドラマがある。いや、無くても良いんだけど。むしろ無い方が良いんだけど。

この【AFK】ってスキルはどのぐらいのことを解消してくれるんだろうか?

カナミさん達の話ではトイレに行く用事は解消してくれるらしい。

カナミさんは女性特有のあれも…と恥ずかしそうに告白していたが、それ、いらない情報ですから!

処理した物はどの異次元に送られるんだろうか?ちょっと気になったがゲーム設定にそこまで求めては野暮だろう。


あとは、なんとなく小腹空いた系も解消してくれそうな気がする。

ひょっとしたら風呂・シャワー系も解消してくれるかもしれない。

森崎さん(クローク)】のすごい効果を目の当たりにしたので期待が広がる。


なんとなくいろいろ考えていたのは、練習のために尿意が来るのを待ってたんだけどなかなか来ないな。

ちょっと今の経験値を見ておこう。では使ってみようか【スキル習得】!


■■■

 ユーキ(地球人(アースリング)・男)

 習得中スキル

 ・身体

   【筋力強化】 6 /200 (-50)

   【器用強化】 7 /200 (-50)

   【視力強化】 10 /200 (-50)

   【聴覚強化】 2 /400 (-100)

   【嗅覚強化】 1 /400 (-100)

   【打撃耐性】 27 /400 (-100)

   【切断耐性】 1 /400 (-100)

   【刺突耐性】 78 /400 (-100)

   【圧迫耐性】 1 /400 (-100)

   【体術】 29 /200 (-50)

   【騎乗】 3 /400 (-100)

   【瞑想】 51 /600 (-150)

   【気配察知】 2 /400 (-100)

   【気配隠蔽】 1 /600 (-150)

   【魔力吸収】 22 /800 (-200) New

  ・武器

   【剣術】 27 /400 (-100)

   【短剣術】 1 /400 (-100)

   【槍術】 1 /400 (-100)

   【棒術】 1 /400 (-100)

   【短剣術】 1 /400 (-100)

   【弓術】 1 /400 (-100)

   【投擲術】 9 /400 (-100)

   【縄術】 1 /400 (-100)

   【盾術】 1 /400 (-100)

   【鎧術】 1 /400 (-100)

  ・魔法

   【風魔法】 11 /600 (-150)

   【雷魔法】 1 /600 (-150)

   【火魔法】 11 /600 (-150)

   【回復魔法】 1 /800 (-200)

   【炎熱耐性】 1 /600 (-150)

   【雷耐性】 1 /600 (-150)

  ・加工

   【解体】 14 /400 (-100)

   【金属加工】 7 /600 (-150)

   【金属分解】 2 /600 (-150)

   【刀剣整備】 1 /400 (-100)

   【調理】 1 /400 (-100)

   【罠解体】 1 /400 (-100)

  ・異世界

   【コンソールログ】 1 /400 (-100)

   【インベントリ】 304 /600 (-150)

   【マップ】 2 /600 (-150)

   【エネミーサイン】 2 /600 (-150)

   【ターゲット】 3 /400 (-100)

   【ターゲットライン】 1 /400 (-100)

   【ターゲットエリア】 1 /400 (-100)

   【スキルセレクト】 1 /400 (-100)

   【マジックセレクト】 1 /400 (-100)

   【パーティ】 2 /400 (-100)

   【パーティチャット】 1 /400 (-100)

   【ウィスパー】 101 /400 (-100)

   【アイテムトレード】 1 /400 (-100)

   【スキルエフェクト】 4 /200 (-50)

   【ファンファーレ】 4 /200 (-50)

   【AFK】 307 /400 (-100)

   【オートアタック】 2 /400 (-100)

   【ブライトネス】 2 /400 (-100)

   【ミュート】 1 /400 (-100)

   【クロック】 1 /400 (-100)

   【ログアウト】 3 /1000 (-250)

■■■


目がチカチカするけど頑張ってざっと見た。

なんか新しいスキルがあるな。【魔力吸収】が増えている。

これはあれか、これまでに欲しいと思った魔力関係だと、魔力をどんどん使うための自然回復力を上げるためのスキルかな?


あと、自分の実体験を思い出したシーンに関係したスキルに経験値が大量に入っているようだ。

これは、明らかに頭の中を読まれているよね?どういう技術なんだろう。

また、ゲームで経験したことをベースにしたスキルは結構経験値が渋い。

全く経験値が増えてないスキルも結構ある。すっかり存在を忘れてたスキルが多い。


【AFK】はさっき思い出したどのエピソードが効いたのだろうか?

何とも不思議な経験値の増え方で落ち着かないが、経験値が入っているのはありがたい。


尿意はまだやってきていない。そうだ!あれだ水筒だ。水を飲もう。


『森崎さん、水筒出して貰えますか?』

『承りました』


右手につかまれた形で最初に貰った水筒が出てきた。

サイズは200ml程度のコーヒーを入れるような水筒だ。


ふたを開けて中を見ると水が並々と入っている。

ちょっとコーヒーの余韻が勿体ない気がするけど水をごくりごくりと飲んでみた。

お、なんか結構おいしい…んー普通だ。とても普通だ。


尿意ってどういうときに来るんだっけ?

おなかが急に冷えるというのが定番だけど今は昼過ぎでポカポカしている。

本屋に居ると尿意がおきるって人がいたけど、今すぐにはちょっと再現出来そうに無い。

あとなんだっけ、水が流れる音を聞くと尿意がおきるって聞いたな。

これなら行けそうだ。


残った水筒の水を近くの木の根っこにちょろちょろこぼしてみる。

お、良いかもしれない。水が無くなったので一度蓋を閉める。

もうちょっとおいしい水なら良いんだけどねぇ。


もう一度蓋を開けると再び水が並々と入っていた。

ちょっと飲んでみると、あれ?少しおいしい気がする。

なんか蓋を開けるときのイメージで変わるのかな?


残りの水を再び木の根っこにちょろちょろ掛ける。


「おいおい!ユーキっち!そりゃいかんスよ」

「ちょっと、何声かけてんのよ!」


ふと見るとヒロシさんたちが広場に来ていた。


「え?なんですか?」

「この世界、公衆トイレは充実してないけど、さすがに町の真ん中はちょっと」


なんだ?どういうことだ?ああ!!ええええ!!なんか誤解されてる?


「ち、違いますよ!!水筒の水が余ったから水やりしてただけですよ。」

「いやいやいや、その慌てようは怪しいス」


これは完全に誤解されている!そう、立ちションをしていたと思われている。

と、突然尿意がやってきた。やばい。

ここで前を押さえたりもじもじしたりしたら有罪判定を受けてしまう!!


「あれ?なんかちょっと怪しい雰囲気じゃないですか?」


ヒロシ!こんな時だけ雄弁なのはやめなさい!


今まさに、【AFK】が必要でしょ!?早く!焦れば焦るほど不審人物に見えるようだ。


「あの、水の音を聞くと尿意がわくじゃ無いですか?」

「ほう、それでつい魔が差したと」


オイ!ヒロシ!話を聞け。もうそれはいいや【AFK】はやく!


「ちがう【AFK】!【AFK】だよ!」

「トイレに行きたかったけど場所が無かったと」


こいつ!!相手にしたらだめだ、ヤバい。ちょっと内股になってるかもしれない。

助けてくれ!!ちょっと涙が出てきた。


『ユーキはスキル【AFK】を習得しました』


よっしゃ!!救世主現る!!すぐ使おう!【AFK】ッ!!

たちまち尿意が解消された。ありがとうAFK。もうKが何かなんて関係ない。

これは素晴らしいスキルだッ!!


「おおおおおーー!」


思わず絶叫してしまった僕はその後誤解を解消するまでに、周囲を人に囲まれ1時間は無駄にしてしまった。

カナミさん達には【AFK】を習得するためにいろいろ試してたことは理解して貰えたのだが、町の人達NPCには【AFK】が全く通じなかった。


「公共のスペースをなんだと思ってるんだ!」


と絶叫するメガネのおじさんが超怖かった。

おじさんは超薄着で、というか上半身がほぼ裸のファッショナブルな服を着ていて、あなたに言われたく無いと思ったのがまずかったかもしれない。

最後はカナミさん達まで巻き込んで弁明することでなんとか解散となった。


おのれヒロシ!最後に水をがぶ飲みして実演してくれて助かったから、一応許すけど。


カナミさんが後でこっそりと広場のトイレの場所を教えてくれたのはなんだったんだろうか?

目で何度も言ってこいと催促するので、行っては見たものの結局空振りだった。


本当に尿意が解消されているなんて凄い。【AFK】凄いよ!

次話「20 先輩はやっぱり凄い」

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