18 ボス討伐と言われても
前回のあらすじ
戦利品売りに行ったらトイレ行けず難儀した
昨日は早々と寝たので早くに目が覚めてしまった。
昨晩は冒険者ギルドからまっすぐキンブリー亭に帰って、食事を取ってすぐに寝てしまった。
熊に出会ってちょっと漏らしてしまっていたので【水洗浄魔法】がとてもありがたかった。
おかげでスッキリした気分で眠ることが出来た。
ベットからゆっくりと抜けだし、立ち上がるとカーテンを開ける。
窓の外を見ながら伸びをして体をぐっと伸ばした。
『このゲームはスキルで成り立っています。10個のスキル獲得を目指しましょう!』
『…既に10個のスキルを獲得されていますね。おめでとうございます。
次はチュートリアル最後の試練です。
ビガンの町周辺フィールドのボスモンスターを討伐しましょう。
冒険者ギルドでボスモンスターのクエストを受けると良いでしょう』
チュートリアル先生は朝から空回りしていた。
うーん。ボスモンスターか、昨日の【フォレストベアー】とどっちが強敵なんだろうか。
アレより弱いってことなまずないか。
今いくつスキルあるんだったっけ?どれ【ステータス】
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ユーキ(地球人・男)
スキル
・身体
【体力強化】1
【魔力強化】1
【敏捷強化】2
【再生】1
・異世界
【コンソール】1
【ステータス】1
【イクイップ】1
【インタープリター】1
【冒険者カード】2
【冒険者マニュアル】1
・固有
【スキル習得】2
【金玉飛ばし】1
【森崎さん】1
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部分呼び出しも慣れたもんだ。取得したスキルを確認してみると13個ある。
【スキル習得】の影響でチュートリアル先生の計算が狂ったのかもしれない。
あ、そういえば、【冒険者カード】がレベル2になったんだった。
晴れてレベル2冒険者って訳だ。
軽く整理体操をして体を伸ばしながら、今日の日程を考える。
金銭的には昨日だいぶ稼げたので、今日の行動目標はちょっと欲張って4つだ。
1つ目は鋼の玉を買い足すことだ。10個ぐらいあればかなり戦いやすくなりそうだ。
2つ目は【森崎さん】と【イクイップ】の連携を試したい。魔力消費も気になるところだ。
3つ目は【AFK】の習得トレーニングをすることだ。これが今日のメイン活動になる。
4つ目はボスモンスターの情報を調べることだ。討伐クエストがあれば受けるのがいいだろう。
4つ目はさっき言われたのでとりあえず置いてみただけで、別にいいかなという気がしている。
ボスモンスターを倒すとチュートリアルが終了ということになる。カナミさん達の情報では、その報酬は【インベントリ】だ。
【森崎さん】のおかげて荷物問題が解決しているので、今さら【インベントリ】に特に魅力を感じない。
要らないと言ったら別のスキルくれるのかな?それは無いような気がする。
1階に降りると、女将さんと挨拶を交わす
「あら、おはよう!」「おはようございます」
まだまだ早い時間だけど、一階は混み始めていた。朝ご飯はサンドイッチとスープとコーヒーで固定だった。
サンドイッチの具とスープの種類は昨日と違うので別に手を抜いている風ではなく、普通においしかった。
食事を終えると女将さんが宿の延長を聞いてきたので、まとめて1週間延長しておいた。
割引率は毎日延長する場合と一緒で、一日400¥で2800¥だった。
ちなみに昨晩の晩ご飯は宿泊者サービス価格とかで400¥だった。
女将さんはお酒を飲んでくれないと商売あがったりだと笑っていた。
荷物は森崎さんが預かってくれているので手ぶらで出かける。
これ、現実だと仕事首になっちゃった人だよな。まんまジャージだし。
外に出るとまだ薄暗い中、結構な人が歩いていた。
よく考えれば都内でも朝方めっちゃ早い人は一杯居るから、ファンタジー世界設定ならではというわけじゃないね。
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宿を出るとまっすぐ冒険者ギルドの向かいの店に向かった。
店の前で少し老け顔の娘さんが店先の掃除をしていた。
「いらっしゃいませ、おはようございます!」「おはようございます!」
気持ちの良い挨拶だった。あれ?この人は子供じゃ無いな。小人族という種族の人かもしれない。
ゲーム設定には多種族が暮らしているという触れ込みだったけど、この町ではあまり見かけないから忘れてた。
店の中に入ると時間に余裕があるので、フラフラ見て回る。
ちょっとしたスキルが付与されいている魔道具もいくつかあった。
そういえば、最初の手荷物に入っていた水筒とライターは魔道具のようだった。
水筒は蓋を閉じて開ける度に水が満タンになっている。蓋を開けるときに魔力が1消費されるようだ。
ライターはスイッチを押している間、毎秒魔力が1消費されて火が続くようだ。
昨晩、魔道具だって知らないでオイルライターの割には臭く無いな~なんて思いながら見ていたら、魔力がヤバいことになった。
この世界は結構魔力を使うように出来ている。
平均的に50らしいけど、なんか魔力を減らすための装備がすごく流通しているのかもしれない。
店員さんに聞いてみるとやっぱり魔力消費を抑える道具があるらしい。
一般的なのは杖で、腕輪とか指輪とかピアスとかが定番らしい。
大きいものほど効果が高くて小さいものは効果が低いようだ。
片手に杖を持ちながら鋼の玉を飛ばすのも良いかもしれない。
軽い気持ちで見に行ったら杖は数万¥が最低価格だった。
一般家庭では成人の祝いに送られるような品だった。
腕輪とか貴金属類は貴族が身につけるような超高額商品で、この店では相手を見て出すようにしているらしい。
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フラフラ回っているうちに弾丸コーナーに辿り着いた。
ピンポン球サイズは威力が過剰だったので、今日はパチンコ玉サイズも買ってみようかな?
と、値段を確認したら、小さいからと言ってそれほど安くなかった。
精度良く丸く仕上げるのが大変なのかもしれない。
一点突破で格上の弾丸が買えないかも見てみた。
素材のグレードは、鋼の上はモンスター素材でその上が魔法金属だった。
僕の【金玉飛ばし】は金属の塊を飛ばすスキルなので材質に縛りがある。
かと言って【玉飛ばし】だったら良かったかと言うと、ちょっと想像してみるに勢いよく飛んでいくイメージが沸かない。
多分ARデバイスが原型になってるから、セラミック素材なら何とか行けそうだけど金属のほうがしっくりくる。
無理して一つだけ買うなら魔法金属の弾丸もなんとか買える金額だけど、
昨日戦った結果、鋼の玉はかなり良い感じで、大きな欠損も無かったので材質は鋼で揃えることにした。
価格は一つ当たりパチンコ玉サイズが200¥、ピンポン球サイズが400¥、リンゴサイズが2000¥だ。
リンゴサイズというか、普通に砲丸です。高校体育で投げる奴です。
横に取り分けようの皿と鉄製のカゴがあったので、それに入れて精算に向かった。
森崎さんが『お持ちしましょうか?』と聞いてきたが、収納した瞬間に犯罪になりそうなので遠慮しておいた。
それぞれ10個づつに、リンゴサイズを1つだけ買って、合計で8000¥だった。
昨日は家の手伝いしていて感心な娘さんだなと勘違いしていた、小人族の店員さんは
「銃身は持っていないようだけど、弾丸だけ買っても使い道ないよ?買って貰えるなら、良いお客様だけどね。あはは」
と景気よく売ってくれた。うん。娘さんじゃなくて女将さんだ。
割引は無かったが、メンテナンス用の布と油瓶のセットを付けてくれた。
稼いだので、余裕を持って買えるのが嬉しい。
『森崎さん、買った物を仕舞ってもらっても良いですか?』
『承りました』
精算の済んだ商品を綺麗に収納してもらった。さすが森崎さん!
今日の行動目標の1つ目だった鋼の玉の補充を無事完了させ、なんだか満ち足りた気持ちで店を出た。
余裕があるってすばらしいね。
次話「19 その場を離れるいろんな理由」