11 先輩プレイヤーとスキル群
前回のあらすじ
宿の女将に水ぶっかけられた
晩ご飯をごちそうになりながら、気になっていたことを聞いてみた。
「お昼にヒロシさんの【体力強化】スキルがレベル3だって言われてましたけど、レベル2でも1年ぐらい経験が必要なんですよね?
僕は7月30日にログインしたんですけど、βテストってそんなに長くやってるんですか?」
「あーそれ!【冒険者マニュアル】のレベルが上がると書かれてるスよ」
「僕は7月28日の夜にログインしたんですけど、このゲームは現実と時間の流れが違うらしいんです」
「あたしは28日の朝からー」
お昼ご飯の時にもこっちは時間の流れが速いって言ってたな。
詳しく説明してくれたが、βテスト自体は7月20日から10日だけの開催だった。
ヤマトさんが【冒険者マニュアル】の該当箇所を見せながら説明してくれたが、現実の1分がこちらの1日に相当するらしい。
「現実の1日が60x24分で、こちらの1440日、大体4年相当になります。
僕はユーキさんと2日違うのですが、ログイン時間の違いで、ログインしてから5年ちょいぐらいですかね。」
「これって結構凄いですよね~。
まだまだ時間がある気になってたけど、そろそろログアウトしたほうがいいかな~って話してた所なんですよ~」
ヤマトさんとカナミさんがそう続ける。
3人はベテランだと思ってたけど、5年もやってるのか!大ベテランだった。βテスト期間なのに。
これは確かに凄い。研究持ち込んだらすごい捗るんじゃないだろうか。
それとも時間制約が取れたら遊んじゃうかな。
葛西だったら...やっぱり駄目そうだ、嬉々として体力作りに時間を使っちゃうよな。
それにしても、いつのまにこんな技術が見つかったんだろう。
「現実で腹ぺこなせいか、最近やたらと空腹なんスよね」
「現実の体に問題あったら、ゲームで【衰弱】とかの状態異常になるらしいんでまだ大丈夫なんですけど」
「もう少しでβテスト期間が終わりだからもう少しやっちゃおうかなーとかずるずるしちゃっててー」
「ユーキさんの話では30 日の朝ログインしたみたいなんで、まだ1年半ぐらいは遊べると思いますけどね」
確か7月30日の夜にβテストが終わって、一日休んで8月1日に正式スタートとか書いてあったな。
「なるべく横になって寝た状態で始めましょうとか説明されてたのも納得ですよねー」
え!そんなの見てない。ソファに座った状態だけど今日中なら大丈夫だろう。
「一旦ログアウトしてご飯食べてきたら良いじゃないですか」
さっきから気になっている疑問を投げかけてみる。
「それが、βテストは【ログアウト】スキルを習得して使うか、死亡した時点で終わりらしいんですよ」
「とあるクエで、異界神っていう竜人の女神様が教えてくれるんスよ。」
冒険者ギルドで受付嬢さんが言ってた亡くなった人の話にようやく納得がいった。
スタート地点で無理しなくて良かった!あのまま倒されてβテストが終わるという可能性もあったのか。
「他にも聞きたいことありますかー?」
カナミさん達からそう提案があった。僕は悩むこと無く答えた。
「スキルについて知りたいんですけれど」
「なんか面白いよねー。【パーティ】もスキルとか」
「スキルはまず何持ってるか見た方が早いですね。【ステータス】見た方が早いんで見ちゃって下さい」
「じゃ、一旦パーティにしましょうか。【パーティ】申請飛ばしますよー」
「【パーティ】だと魔力消費が1秒に2づつなんで、始めたばかりでもそこそこ見られるはずです。
この辺りの詳しい話は【冒険者マニュアル】がレベル3になると書いてあるんですけどね」
どうやら【ステータス】は他人にも使えるらしい。ヤマトさんの解説がすごい助かる。
『カナミから【パーティ】申請を受けました。受領しますか?』
直後に脳内アナウンスが流れた。そりゃもちろんハイだよ。と思ったら続けてアナウンスが流れた。
『【パーティ】申請を受領しました。カナミ、ヒロシ、ヤマトとパーティになりました』
こうして初めてのパーティを組んだ。
「よろしくお願いします!
1秒に魔力消費が2ってことは、魔力は50ぐらいだったから20秒ちょっとは見られるんですね。
まずはカナミさんから確認させてもらいます」
「はーい」
■■■
カナミ(地球人・女)
能力値
体力 75 /75
魔力 192 /210
筋力 73
器用 112
敏捷 75
スキル
・身体
【魔力強化】3
【器用強化】2
【視力強化】2
【回避】1
【受け流し】1
【体術】1
【騎乗】2
【瞑想】2
・武器
【棒術】2
・魔法
【風魔法】1
【雷魔法】2
【火魔法】3
【回復魔法】3
【炎熱耐性】2
【雷耐性】1
・加工
【採集】1
【解体】2
【調理】1
・異世界
【コンソール】2
【コンソールログ】1
【ステータス】3
【インベントリ】1
【マップ】1
【ターゲット】3
【ターゲットライン】2
【ターゲットエリア】1
【マジックセレクト】1
【インタープリター】3
【パーティ】3
【パーティチャット】2
【ウィスパー】1
【アイテムトレード】1
【ファンファーレ】3
【AFK】2
【冒険者カード】3
【冒険者マニュアル】3
【ログアウト】1
■■■
慌てて、5秒ぐらいで【ステータス】をチェックした。
レベル1の【ステータス】では相手の装備は見えないらしい。
魔法職というだけあって、魔力が多かった。攻撃も回復も一人でやるみたい。
魔法ってどうやったら使えるようになるんだろう?
それはそうとして、異世界カテゴリのスキルがすごい多いな。
「スキルの数が多いですね~。
あと、炎熱耐性が上がってるのが気になるんですけど、ひょっとして、魔法は食らって覚えろ的な感じですか?」
「あ!やっぱりそう思った?習得は魔法ギルドでお金払ってスキル魔石を買えば覚えられるのよ。
いろんな魔法を試すのに夢中になっちゃって、自分にも攻撃を当てちゃったのよね」
カナミさんは結構どん臭い人だった。
「あと、異世界カテゴリーのスキルが多いですね」
「あーそれね!ゲームっぽいのが多いもんね。周囲の音量を絞る【ミュート】とかいう変なスキルもあるのよー。
異界神ちゃんは地球のゲームを模倣したとか言ってたけど、ゲームの中でゲームの話されると混乱しちゃうわよね。
この世界で生まれたスキルじゃないから、定着するまでは異世界カテゴリーなんだって」
「【冒険者カード】はNPCも持ってるから、プレイヤーの間ではそのまま定着してるんじゃないか疑惑があるんですけどね」
スキルに生まれた背景の設定とかあるのか、このゲームは無断なところに情熱を燃やしてるな。良い意味で。
「続けてヒロシさん、確認しまーす」
「ういス」
■■■
ヒロシ(地球人・男)
能力値
体力 251 /251
魔力 63 /65
筋力 132
器用 77
敏捷 82
スキル
・身体
【体力強化】3
【筋力強化】2
【器用強化】1
【敏捷強化】1
【打撃耐性】3
【切断耐性】2
【刺突耐性】2
【圧迫耐性】2
【回避】1
【受け流し】2
【体術】2
【再生】1
【騎乗】2
・武器
【剣術】2
【短剣術】1
【槍術】1
【盾術】2
【鎧術】2
・加工
【採集】2
【解体】2
【刀剣整備】2
・異世界
【コンソール】2
【ステータス】2
【インベントリ】2
【ターゲット】2
【ターゲットライン】2
【イクイップ】1
【スキルセレクト】2
【マジックセレクト】1
【インタープリター】1
【パーティチャット】2
【ウィスパー】1
【スキルエフェクト】2
【ファンファーレ】2
【AFK】2
【オートアタック】1
【冒険者カード】2
【冒険者マニュアル】3
【ログアウト】1
■■■
ヒロシさんは前衛というか完全に盾役のようだ。体力250越えが圧巻だ。
あと、耐性スキルが凄い。どれくらい殴られれば【打撃耐性】がレベル3になるんだろう。
「ものすごい堅そうな【ステータス】ですね」
「そこらの熊ぐらいなら無傷で突進を止められるっス」
「なるほど、そして、やっぱり異世界スキルが多いですね」
「異世界スキルでは、最近取ったんスけど体が勝手に戦ってくれる【オートアタック】が熱いっス」
「それって変な動きをされてピンチになったりしないんですか?」
「結構ちゃんとしてて、勉強になるぐらいなんスよね。教えてくれた奴が言うにはレベル上がるとスキルも勝手につかうらしいス」
ステータスを見ていたらくらくらしてきた。魔力枯渇が近いらしい。
「ちょっと魔力が尽きそうです。ちょっと休憩します」
「そういえば、最初は魔力枯渇で気持ち悪くなって吐いてたな~」
暫く3人の魔力枯渇話を聞いた、
ヒロシさんが町の中で【イクイップ】で遊んでたら、子供が集まってきて、調子に乗ってどんどん交換してたらパンツだけになった瞬間に昏倒して失禁した話が面白かった。
この人ゲームを満喫してるな~。
「魔力戻ってきたので次はヤマトさんみせてください」
「どうぞどうぞ」
■■■
ヤマト(地球人・男)
能力値
体力 92 /92
魔力 60 /67
筋力 81
器用 113
敏捷 130
スキル
・身体
【体力強化】1
【筋力強化】1
【器用強化】2
【敏捷強化】2
【視力強化】2
【聴覚強化】2
【嗅覚強化】1
【回避】2
【受け流し】2
【体術】2
【騎乗】2
【気配察知】2
【気配隠蔽】2
・武器
【剣術】1
【短剣術】2
【弓術】2
【投擲術】2
【縄術】1
・加工
【採集】2
【解体】2
【刀剣整備】1
【罠解体】2
・異世界
【コンソール】2
【コンソールログ】1
【ステータス】2
【インベントリ】2
【マップ】2
【エネミーサイン】2
【ターゲット】2
【ターゲットライン】1
【ターゲットエリア】1
【イクイップ】2
【インタープリター】2
【パーティ】1
【パーティチャット】2
【ウィスパー】1
【AFK】2
【クロック】2
【ブライトネス】1
【冒険者カード】2
【冒険者マニュアル】3
【ログアウト】1
■■■
ヤマトさんは斥候職だけあって察知系がすごい
異世界以外のカテゴリのスキルは見たらだいたい分かる感じになってる。
3人とも異世界カテゴリのスキルがめちゃくちゃ多いな。
「敏捷高いですねー。どのぐらいで走れるんですか?」
「俺の体重が60kgで敏捷の効果で-13kgなので体重47kg相当なのに加えて、筋力も上がってるのでかなり早いですよ。
正確にはわからないですけど、体感的には競技自転車ぐらいですかね」
「はやっ!」「マジか!」
何故か横でヒロシさんが驚いている。そういえばヒロシさんはパワーファイター型だから大きく差がついてるのかも。
「武器スキルも多彩ですね」
「【イクイップ】てスキルがあると【インベントリ】にしまった装備を一瞬で装備できて切替が楽なので、逆にいろいろ使っちゃうんですよね」
【イクイップ】すごいな、今日は武器を落としてしまうピンチを経験するので、そのありがたみが良く分かる。
「それは凄いですね!結構興味があります!」
「おお!分かってますね。この2人はこれの良さを理解しないから嬉しいです」
その後、ナイフを手の中に出したり消したりして実演してくれた。大がかりな手品みたいだ。
ゲームと分かっていてもリアルな分、ファンタジーな演出に毎回驚きがある。
「スキルは上限はどのぐらいなんですかね?皆さんはレベル3がちらほらありましたけど」
「おなじみの【冒険者マニュアル】がレベル4になると書かれているそうです。
もう限界だ!と言って【ログアウト】していった友達が教えてくれました。
レベルの上限は特に無く10を超えるような超人も居るみたいですが、段々上がりにくくなるそうです。
レベル1が3ヶ月、レベル2が1年、レベル3が5年、レベル4が20年、レベル5が100年程度の経験を表すらしいです」
「ひゃ、100年!普通に遊んでたらレベル4ぐらいが限界になりそうですね」
「βだとプレイヤーはみんな人間だけど、この世界は長寿種族もいるから正式版ならいけるんじゃないかしら?」
そうか、どんだけ長い間サービスするつもりなんだ。
それにしても、この情報をくれた人はレベル4にしたってことは20年か、1日4年だから現実世界の5日間ご飯抜きで頑張ったのか、凄すぎる。
続けてお気に入りのスキルについて話題が盛り上がった。
「私は【ファンファーレ】が好き。レベル上がった実感がして凄い気持ちいい。あと【AFK】大切」
【ファンファーレ】はスキルのレベルやパラメータが上がった時にジングルが鳴るだけのスキルらしい。
【AFK】はAway From Keyboardの略でネットゲーム擁護でトイレに行くときにチャットで書くらしい。
スキルとしてはトイレに行く行為をすっ飛ばすことができて、トイレ不要になるらしい。
「俺はさっき言った【イクイップ】以外では、やっぱり【エフェクト】が好きっス。アーツが決まると超気持ちいいっス」
【エフェクト】はスキルを使った時のビジュアル表現が派手になるらしい。ヒロシさんがどんなキャラか分かってきた。
「俺はやっぱり【エネミーサイン】と【ブライトネス】ですね。
【エネミーサイン】は敵意が視覚化されるから、【気配察知】との組み合わせが索敵に最高に便利です
【ブライトネス】は多分ディスプレイの設定項目なんだと思うけど、視界の輝度があがるんですよ。
【暗視】スキルと違ってパーティメンバーにも効果あるからパーティー行動に使いやすいです」
「ヤマトさんはまじめに斥候職してますね」
「【インベントリ】は名前から想像するに、あると便利そうですね」
「【インベントリ】は導入クエストのコンプリート報酬でした。
名前から予想が付くとおりで、ゲームっぽく重量無視でアイテムを持ち運べるスキルですよ。
魔道具として魔法鞄もあるんですけど、個人認証がかけられる奴は高かったり、容量が少なかったりで【インベントリ】が優秀ですね。」
「魔法鞄はまとめて誰かに渡すのは便利だから、パーティ資産とかをいれるのに使ってるわよ」
「プレイヤー限定チートっスよ」
【インベントリ】は想像通りだった。荷物が増えすぎる前にぜひ取得したい。
「【マップ】はどんなスキルなんですか?」
「私はアレちょっと苦手ー」
「視界の隅に地図が出るんですけど、視野が塞がれるので慣れるまで結構大変です。
地図見ていて誰かにぶつかったり、リーダーみたいに、みんなとはぐれたりね」
「ちょっとー!」
「あはは、手で持たなくても良いのは利点なんですけど、書き込んだりは出来ないです。
エネミーサイン覚えてると敵が赤く表示されたりするので他のスキルと組み合わせる感じですね」
「なんか大変そうでしょ?リーダーも結局使ってないし、俺は要らないっス」
かなり慣れが必要なスキルらしい。
そのまま3時間ぐらい情報交換をしてお開きとなった。
「βテストのせいかログイン前に情報が全然無かったので凄い助かりました」
「なんのなんのー」
「僕らももう少しこの町にいると思いますし、晩ご飯は大体ここで食べてるんでなんかあったら相談してください」
「おつかれっス」
「おやすみなさい!」「おやすみー!」「おやすみなさい」「おやすみーっス」
次話「12 固有スキルは我が身を助ける」