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脂身

作者: 夢野Q作

脂身について僕が思うことを語っていく。

脂身と言って真っ先に思い浮かべるのは、家でよく食べたステーキだ。

それは200グラムぐらいある大きなステーキだった。

しかし今思えば贅沢な事だが、中学生くらいまでは半分くらい残していた。

たまに全部食べることはあっても端っこの脂身の部分だけはいつも残していた。

そして残すたびに思い出すことがあった。

小学生の時の話だ。兄の友人の竹澤くんというのがいた。彼は太っていた。そして僕の兄もその時少し太っていたのだ。そして二人とも太っている割に、おっとりとした性格というよりは悪戯小僧の典型のような人たちだった。

僕と兄は年子という事もあって、彼らが他の友人数人と遊んでいるところに参加することも多かった。

しかし兄は多少愚かしい行動をとる人でよくばかにされていたこともあって、もどかしい思いで見守っていたものだ。

丁度そのころから兄は暴力的になった。理由は明白だった。そういった友人に馬鹿にされて傷ついた自尊心を保つためだった。自分より上のものにへつらう代わりに、下の者には厳しく接する。

僕はそのことに気付いていながらも、どうしようもない気持ちで日々を送っていた。

兄は苦しんでいるが、そこにしか彼に居場所がなかったのだ。また両親は彼にとても厳しかった。

彼の苦しみに気付ておらず、ただ自らの教育が悪いと思い込んでいたのだろう。

そのことがますます彼を卑屈にさせ、様々な問題を起させたのは言うもでもない。

僕はこのころから人間的に兄のことが多少嫌いになった。もし家族でなければ、関わりを持ちたくないと思う程だ。もちろん肉親の情という部分もある。

話しを元に戻そう。

その兄に対し悪影響を与えたであろう、友人の一人である竹澤君と脂身の話である。

何ということはない。食べるのだ。竹澤君は脂身を醤油をつけて食す、ということを話しているのを聞いた。

その時に感じた嫌悪感は今でも残っている。

肥満体型の彼が脂身を食べているところを想像しただけで胃がもたれる気がした。

いや、それだけではない。竹澤君の体型、性格、しゃべり方など彼の存在が表現するすべてがそのことに詰まっている気がしたのだ。

しかし一方でその邪悪な食べ物を食してみたいと思いもしたのだ。

生来の好奇心によって。

それでもやはり夕食のステーキの脂身を食べたことは今日までない。

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