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幸福の華  作者: みづき
1/8

<1>

「歪みの苑」の続編となります。

もう一つの幸せを描いていけたらと思ってますので、よろしくお願いします!

※この話は本編読了後にお読みくださった方がいいかと思います。

 閉じていたはずの双眸を開け、少年はあたりを見渡した。

 漆黒に染められた周囲に一瞬驚いたが、少年は不思議なほど冷静だった。

「俺、寝てたよね」

 立っているのか座っているのかもわからないこの空間。

 いつもどおりベッドに入り、眠っていたはずなのだが――夢なのかと思っていると、ふいに視界に白が映る。

「いらっしゃい。驚いたわ」

 黒い髪を揺らし、その身を包む白い服をなびかせながら佇んでいる一人の少女。可憐な笑みを浮かべる彼女の周りは、少年とは違って明るかった。

 唇を歪めた少女は少年を見て小首を傾げる。

「あなた……」

「ねぇ、ここは夢? あなたは誰? 俺、寝てたはずなんだけど」

 周囲を見ても彼女以外は漆黒に染まっていて、ここがどこなのかもわからない。

 夢なのか、あるいは――

「夢か現実かで言ったら……その狭間のようなところかしら?」

 小首を傾げつつ微笑む少女は、どこか不思議な雰囲気をまとっている。人であるはずなのに、どこか浮世離れした感覚がした。

「狭間?」

「そう。普段はめったに来れないはずなんだけど……あなた、不思議ね」

 どっちがだ、と言おうとした少年よりも早く少女は言葉を紡ぐ。

「身に余るほどの闇を抱えてる。だからこそ、ここへの扉を開けられたのかもしれないけど」

 その言葉にぴくりと少年の肩が揺れ、それを見た少女はかすかに口角を上げた。

「ねぇ。その闇の正体は何? そんな小さな体で、それほど深い闇を抱えてるなんて」

「……関係ないだろ」

「ふうん。まぁそうね……でも、私ならあなたの願いを叶えてあげられるけど」

「願い?」

 不審な顔を向けた少年に、少女はくるりと体を回転させる。黒く艶やかな髪と、それと相反する白い服がふわりとなびいた。

「あなたの持つ闇。私なら、それをなくしてあげられる。代償はいらないわ、久しぶりのお客さんだから」

 楽しげに笑う少女は、何の屈託もない。ただ単純に、この事態を面白がっているような。

「あぁ、何も今すぐじゃなくてもいいわ。時が来たら、またいらっしゃい」

 可憐な笑みでそう告げた少女の顔が、ぐにゃりと歪む。

 とっさのことに驚いた少年は彼女の言葉を理解するよりも早く、深い闇に包まれたまま意識を手放した。

 ――ゆるり、と双眸が開く。

 いつもよりも軽い体に少年は首を動かし、そして頭の中に木霊する言葉を口の中で転がす。

「願いを……叶える」

 得体のしれない少女だったが、どこか嘘を言っているようには思えなかった。

 ならば。

 どんな願いでも叶えてくれるというのなら――この己の中に住み続ける闇を、憎悪を消してくれるのだろうか。

 少年は脳裏に浮かぶ人物に強く目を閉じた。

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