2章 幕間 10年前……のあの日
「もとに戻ったみたいだな」
そうだ正純。と小林が、思い出したように言う。
そのあと小林から、ノートを受け取り家に帰った。
おかえりせーじゅん。と家の扉に彼女は、寄りかかっていた。
「オーガスト……」
「せーじゅん」
「オーガストなぜここにいる」
いいでしょ。と彼女はニコニコしている。
「まぁ、入れよ」
オーガストを家の中に招く。
「で、10年前の俺とどんな関係なんだ」
「んー私があなたを助けた……というのかな」
助けた。といわれても、訳が分からなかった。
「まぁ思い出せなくて、当然だよ」
だって、私の半分をもらってるだもん。とオーガストはニコニコしながら、そう訳の分からないことを、さらっといった。
そうだ、10年前の僕の覚えていることだけ話そう。
僕は10年前、交通事故に巻き込まれた、相手は飲酒運転の居眠り運転。
相手はがけ下に落ちて死亡、僕の家族は妹と僕を残しみんな死んだ。
しかし、僕だけは生きていた。救命隊は奇跡だといっていた。
それから数日の時間が、流れて行った。
施設に入り、こうして生活ができている。
「オーガスト、なぜ僕の名前とここの住所を知っている」
「んーとね、施設の情報からね」
ハッキングしたのか。と驚いて、オーガストを見るとニコニコしていた。
「いや、ハッキングというより直接ね」
直接と聞いてさらに驚く。
「じゃ、質問を変える」
「なんでも」
「あの世界はなんだ」
無名都市よ。と普通に、オーガストは答えた。
「まぁ、結界のようなものよ」
今日起きたことを、すべて聞いてたら夜になっていた。
夕飯をオーガストと真央と一緒に食べた。
無言の食卓だった。
夕飯を食べ終えると、オーガストは立ち上がり「では失礼します」と言って、玄関に行き外に出て行った。
翌朝起きると、隣にオーガストが寝ていた。
……オーガスト。と驚いて声を上げる。
「どうした、正純」
「なんで、お前がここにいるんだ」
「んー、なんでだろうね」
仕方ないから、朝食をとり学校に行く準備をして、学校に行くことにした。
学校はいつもと変わらなかった。
朝のホームルームの時間に先生が、転校生を紹介するといって教室のドアを開けると金髪の見覚えのある少女が入ってきた。
「初めまして、オーガストです」
クラスが盛り上がってるのが分かった、それはそうだろうこんなゴールデンウィーク直前の時期に転校生なんて。
クラスになじむのが、とてもオーガストは早かった。
じゃ、オーガストさんは……。と先生が悩んでるうちに、彼女は自分で歩いてあいている席に向かって歩きだし、僕の横を通るときに「昼に屋上に来て」と言って、着席する。
昼にオーガストに言われたとおりに、屋上に行く。
「なんだ、オーガスト。いろいろ聞きたいけど」
「まーそうでしょうね。しかし時間がないわ」
時間。と尋ねると、オーガストは無言だった。
また、あの「とうりゃんせ」が響いていてきた。
「やっぱり」
また赤い空と黒い月が、学校を取り囲んだ。
やー、オーガスト。と炎を身にまとった袴姿の少女が、目の前に現れた。
「クトゥグア……」
「10年前の少年も、一緒にいたのね」
「君たちは、僕の10年前のことを知ってるの」
「10年前のあの日、私たちは│霊峰で戦っていた」
「そして、そこを通りかかった飛行機に、私が激突した」
「その時、オーガストはミスを犯した。飛行機のエンジンに……」
「事実なのかオーガスト」
「残念ながら事実よ」
「飛行機は墜落して、炎上その時まだ生きているあなたに、私の半分を移植した」
「だから、私は通常の半分の力で動いてるけど……」
あと1年で死ぬ。と彼女は言った。
「まじかよオーガスト」
「うん、そういうこと」
満足したようにクトゥグアは、その場を去って行った。
「オーガスト、もう一度聞いていいか。10年前何があった」
そうね。と言ってオーガストは、10年前のことを喋りだした。
10年前、私は降りしきる雨の中、霊峰富士の周辺でクトッゥグアと戦闘をしていた。もちろん無名都市の中で。
そして私は、無名都市から落とされた。そして近くを飛んでいた飛行機に激突しその時、私の体は飛行機のエンジンに吸い込まれ、体の半分を失った、そしてその日に転化して現在の形になった。
これは、10年前の姿とは違ってあなたに半分の力を分け与え、これが私の10年前の話。