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人の顔が見えない、人の顔を窺う、そんな人。

作者:
掲載日:2026/05/01

事故に遭ってから、頭の具合が変わった。


人の顔が見えない。


正確に言うと、首から上が無い。

実際にはある。触れられるからだ。


なぜそうなったのか、まったく分からない。

原因も、治療法も分からない。


つまり、どうしようもない。


日常で顔が見えないというのは、初めは苦労した。


人の見分けがつきづらいし、

どんな顔をしているのか分からないから、

今の状態や感情も読めない。


しかし人は慣れるもので、

ひと月もすると、見えなくても、

特別気を張らなくても、

自然と会話ができるようになった。


最近になって、逆にこれでもいいと思うようになった。


私は人の顔色をうかがいすぎる癖があって、

そのせいか人との会話がうまくいかないことがよくあった。


しかし今、人の顔など分からないのだから、

気にすることも、うかがうこともしなくていい。


自分のことだけを考えていい。



ある日、

定期検診の際に医者に言われた。


「もうすぐ頭が治ります。

顔も見えるようになりますよ」


どうやら自然治癒で、治っていっていたようだった。


それは、

その事実は、


本当にまずい。


また人の顔を?

また戻るのか?


家に帰ってすぐに鏡の前に立った。

恐怖が滲んでいるのが分かる。


頭など戻らなくていい。

もう一度同じ衝撃を加えたら、

ずっと見えなくなるか?


いや、それでうっかり治ってしまったら取り返しがつかない。


では、いっそ目を潰せば?


悪くない。

見えてしまうのなら、

何も見えなくていい。


ハサミを手に取って、目に当てる。


鏡を見て、正確に目を潰せるようにする。


だが、


鏡の中には、私の首から上がなかった。


何度見てもない。

顔が見えない。


しばらくそれを見つめて、


そして、


ほっと、ため息をついた。


心から安心した。


どうしてかは分からない。

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