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その刹那、私は女の子に目覚めた

作者: 黒楓
掲載日:2026/04/13

 ライトを煌々と照らさせたシーツは汚れていて……間抜けな覆面のオトコは“トド”の腹をゆすりながら栓を抜くみたいに私から離れ、私の両膝に手を掛け、グイッと開いた。

 LEDライトだからそんな筈は無かろうに……私は自分の秘部がライトの熱に焙られている様な気がして枕へ僅かに顔を埋める。

 そんな私のさまが嬉しいのか“トド”はビデオカメラと一緒に私の醜態を覗き込み、内腿に涎混じりの息を吹き掛ける。


「ほらっ! モニター見てみな!」


 大写しになった私の秘部は動物的に蠢き、滴り落ちるものは新たにシーツを汚して行く。

 ああ! この唾棄すべき状況!

 勘弁して欲しい!


 でもオトコは満足せず

 後追いの指攻めをする……



 ◇◇◇◇◇◇


 10万のギャラで……今回が2回めだった。


 私は二度目と言う事で先週より緊張せず……オトコは私の()()()()()を完全に掌握していた……

 そう、だからなんだ!

 今回、私が……

 ガチで乱れてしまったのは……


 そして、それは紛れもない事実だ。


 その結果、

「オンナなんて簡単!」

 とこんな“トド男”に思われてしまっても致し方が無い……


 愚かな私は過信していた。

 自分の事を……

『私はオトコに傅かれる(かしずかれる)立場の女なのだ』と。


 そうやって、高校でも大学でもやって来て……

 社会人になって

 世の中には()()()があると見知ってしまって……

 自分のステイタスを上げるべく、そのステージへエントリーする為の原資を

 手っ取り早く得ようとこの誘いに乗ってしまった。


 名前はもちろん偽名、職業はウケ狙いでお堅い団体職員、年齢はわざと2歳年上にして、それっぽく振舞ってはみたけれど……果たしてこの動画で身バレするのだろうか??

 オトコにいい様に扱われるみっともないメスとして……


 まあ、ちょっとググってみると……

 この手の動画は嫌と言うほど溢れているし

 いざとなったら他人の空似を決め込めばいい!

 私の“特徴”である左の内腿のハート型の痣は……コンシーラーでしっかり隠してあるし。


 そんな事を考えていると……LEDライトが消え、“トド男”が機材を片付け始めたのでシャワーを浴びたいと言ったら「それも撮らせてくれ」と食いつくので私はプラス5000円で手を打った。



 ◇◇◇◇◇◇


 スマホをタップすると『16:07』との表示。

 いつもの私ならまだオフィスに居て仕事をしている時間だ。

 今日は体調不良と言う事で有給を取って“トド男”との一部始終を動画に撮られた訳だが……こんな中途半端な時間だからM商事の遠藤へ連絡を取ろう。

 ヤツならちょうど空いている時間だ。


 しかしなあ……5時過ぎから早めのディナーで……ヤツは徹夜明けのギンギンに違いないからホテルに部屋取ってるんだろうなぁ~

 でも、アイツとじゃあ燃えない。

 メシと時間潰しの為だけに同衾する気は

 今日はもう起きない。


 考えただけで……

 さっきまで纏わりついていたナニのニオイが鼻腔にぶり返して来て、私は吐きそうになる。


 ああ! 『オトコ』ってつくづく異形だ!

 遠い昔に理科で習ったプラナリアを思い出す!

 それもお尻側も頭の……双頭プラナリアを!

 気持ち悪い!!!


 と、古い記憶が顔を出した。


 この双頭プラナリアに

 涙目になったあの子の顔が……


 それは私達の班に割り当てられた自由研究。

 女子はみんなぶー垂れてて

 男子だけがノリノリだった。


 その悪ノリの挙句の……

 咲良さくらの涙だった。


 そう、当時から上背のあった私は

 男子二人に蹴りを入れて

 咲良を抱き締めたんだ!

 咲良の事を守ろうと

 勢い込んで!


 その時の咲良の髪の甘い香りは……

 椿油なんだと

 随分後になって知ったのだけど……

 五感を揺すぶられた私は……

 椿油の香りがするたびに

 この上ない切なさが胸に込み上げて来る。

 だって次の年には……

 咲良は転校してしまったから

 別れ際に

 私のファーストキスを奪って……


 モノの様な扱いを受けて

 オトコをモノの様に扱っていた事を自覚した私は……

 心をどこに置いて来たのだろう?


 それは思いもよらないパンドラの箱。


 気付いてしまった!


 私の心は……

 それを指し示す視線は……

 常に女の子へ向いていた。


 私が恋焦がれ

 そして今まで得る事が無かったのは


『女の子』


 それこそが!

 私が抱き締めたい唯一!!


 試しに私は目を閉じて……


 先ほど、モニターに大写しされた“姿”を頭に浮かべる。


 ああ、オトコのモノはもうたくさんだが……

 ここになら!

 私は喜んでキスをするだろう。




          

                          おしまい



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― 新着の感想 ―
トドのような男……そんな人、滅茶キモイ! 男の人って、どうしてそんなにキモくなれるのだろう?? 小説の世界では中々そんなキモイ人現れることがなかったので、私的には導入部分でかなり衝撃を受けてしまいまし…
同性愛の自覚自認に至るパターンも人夫々に様々ですけれども、今回の彼女の場合は少なからずストレスからの現実逃避のよーに思われましたん (^.^;
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