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しがみつき異世界人生

作者: 相川悠介
掲載日:2026/04/05

 暗い世界の中、紫の森の中を歩く。

 左腕は痛いし、両目に違和感を感じる。


「誰も追って来ないでしょ……」


 召喚されてどのくらい経ったっけ?

 覚えてないや。


     ◇


 俺――桜井晴人(さくらいはると)

 年齢は、十七歳。

 休日でゲーセンに行こうと思って外に出たら、青い魔法陣みたいなのが地面に出現して、王宮に召喚された。

 そこには、王様や騎士なんかがいた。

 俺を召喚した少年は、ジロジロと俺を見て、ため息をついていた。


「異世界から来た者よ。汝には――」


 その時の感情は、期待と恐怖だった。

 期待は、テンプレ的な流れで勇者。

 恐怖は、見放される。


「死んでもらう」


 放たれた言葉は、俺を絶望させるのに十分なものだった。

 死にたくなかった俺は、扉へ全力疾走。

 しかし、騎士たちが剣を抜いて立ち塞がった。

 本物の剣を見た時の感情は恐怖。


 ――死にたくない!


 心の中で必死に、この世界の神様に願った。

 その願いのおかげか、召喚された時に与えられたのか。

 左腕から、焼かれるような痛みが流れ、気づいたら騎士たちの剣と同じような剣を左手が持っていた。

 その出来事に王宮内はざわめいていた気がする。


 ――死にたくない!


     ◇


 そこからの記憶は、よく覚えてない。


「いてっ……血……?」


 右腕から、ヒリヒリとした痛みを感じて、右腕を見ると斬り傷があった。

 他の部位にもあると思うけど、見たくないな。

 とにかく、あの状況から生き抜いた。


「どこか、安全な場所は……」


 眠くなってきた。それに寒い。


「もう……ダメかも……」


 遠くから人が近づいて来ている。

 視界が歪んで、はっきりとしないけど、人だってことだけは分かる。


「眠い……」


 視界が暗くなる。


     ◇


 目を開けると、視界には見知らぬ天井。

 ゆっくりと起き上がり、周囲を見渡す。

 日本にある和室みたいな部屋。

 世界観変わってね?


「どこ……?」


 困惑していると襖が開く。


「目が覚めましたか」


 そこには、巫女装束を着用しているケモ耳少女がいた。

 背は低くて幼女と間違えるぐらい。

 髪色は橙色で瞳は茶色。

 正直に言うと、俺の好みのタイプ。

 ケモ耳キャラ大好きなんだよ!


「あの……」


「あ、すみません。ちょっと興奮……じゃなくて興奮してました」


「え?」


「あなたはキツネ?キツネですよね?そうですよね!」


「お、落ち着いてください!」


 両肩を掴まれる。おっと、興奮しすぎた。

 ケモ耳少女は、頬を赤く染めている。


「あ、あー……えっと〜」


「落ち着きましたか?」


「はい……」


 目を逸らす。じゃないと鼻血が出る。

 それぐらい可愛い。

 両肩から手を離したケモ耳少女は、コホンと咳払いをする。


「私の名前は、エンコと言います。キツネですよ」


 笑顔を浮かべるエンコさん。眩しい!

 そして、やっぱりキツネ!


「俺の名前は、晴人です!助けてくれてありがとうございます!何かお礼をさせてください!お願いします!」


「み、見返りは求めていないので、大丈夫ですよ」


「お願いします!お礼を!させてください!」


     ◇


 数日後。


「ただいまです〜」


「おかえりなさいませ。ハルト様」


 神社に入ると、エンコさんが箒で掃除をしている。


 お礼として、この神社――『紫風神社』のご奉仕をしている。


 『紫風神社』は、訪れる人がいない。

 この神社の存在を認知されていないらしい。


 神様――エンコさんが、この世界の見守り役として自分を『紫風神社』の巫女にしたとのこと。

 他の神様に頼まれたんだって。


「エンコさん、今日は大儲けしましたよ!」


 魚や野菜が沢山入ったカゴを見せる。


「こんなに!?すごいですね!」


 尻尾を振って喜んでいる。


「エンコさん」


「なんでしょうか?」


「あなたに出会えて幸せです!」


 風が吹き、紫の花が舞い散る。


「私もですよ。ハルト様」


 エンコさんは、優しく微笑む。


 ―――――


 •桜井晴人


 普通の日本人。


 両目……見た物を左腕に認知させる。

     (剣や盾などの武器)


 左腕……両目から得た情報を再現する。


 •エンコ

     

 『紫風神社』の巫女。元神様。

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