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シグナル。
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彼女はぴょんぴょんと跳ねるように歩く。
「わたしはね、」彼女は躊躇することなく堂々と言ってのけた。「地球のうさぎになるの」
「ち、地球のうさぎ…?」
あまりに突拍子もない台詞だったから、声が上擦っていたかもしれない。それでも気にとめる風もなく彼女は話を続けた。
「そう。わたしはここよ、ここにいるのよ、ってシグナルを送ってるの。」
現実味のない答えに僕が思わず吹き出すと、彼女は膨れっ面になって睨んできた。
「あぁごめんごめん。ね、じゃあさ、一体誰にシグナルを送ってるというんだい?」
「宇宙によ!」彼女は当たり前じゃないのと言わんばかりの口調で言った。
…宇宙、か。
なんてスケールの大きい話だろう。
こんな小さい体で宇宙にメッセージを送っているなんて。
――ぴょんぴょんぴょんぴょん。
彼女が跳ねる。
――ぴょんぴょん。
つられて僕も跳ねてみた。
「ふふ。あなたも宇宙にシグナルを送ってるの?」
――ぴょんぴょんぴょん。
(なぁ、知ってるかい)僕は心の中で答える。
(僕は跳ねてないだけで、いつだってシグナルを送っていたんだよ。)
(…君という惑星にね。)
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