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ヨルノオト。
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夜になると、ガタンガタンと電車の走る音が聞こえてくる。
線路から遠く離れたこの家にまで届く音。
夜の澄みきった空気のせいなのか、丘という地形が反響させているのか、単に昼間の騒々しい音が隠していたのか定かではない。
ただひとつ目の前にある事実は、夜にだけ出会える音があるということ。
そうか。
これが夜の音なんだ、きっとそうに違いない。
壁時計を見ると時刻は24時6分。
もうすぐだ。
もうすぐで夜の音が僕の町にもやってくる。
瞳を閉じて、今日あったことを思い出す。
思いがけない再会。
優しい声。
野菜いっぱいのポトフ。
偶然のマジックアワー。
そんなことを考えていると、突然夜風がふき、鼻をツンとさせた。
冷たくて、なんだか懐かしい。
24時8分。
ガタンガタン。
夜の音が今日も遠くから響いてきた。
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