選別。
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「ねぇ、」それはあまりに唐突な質問だった。
「もし犬と猫が溺れてたらどっちを助ける?」
「どっちって…選べないよ。両方共助けたい。」
すると彼は膨れっ面になって、「どうしても片方しか選べないと仮定して、だよ。」と言った。
「じゃあ、猫…、かな。」
「どうして?」
「犬は泳げるから…。」
「ふーん。もし犬が泳げなくて猫が泳げたら?」
「そしたら、犬を助けるよ。」僕は反射的に答えてしまった。
しまったと思うと同時に、彼は「なるほどね。じゃあ二匹共、泳げないとしよう。」と意地悪な提案をしてきた。
「………なんでそんなこと…」
「ばかだね、君は。いいかい、これは別に犬や猫じゃなくたっていいんだよ。なんなら、僕をいま無視するかしないかだっていい。」
僕は下を向いた。
「選択するのは君だ。誰でもない、君だの自由だよ。だから誰からも咎められる必要はないんだ。ただ、責任を持って答えてほしい」
もう一度聞くよ、というかのように深呼吸して、言った。
「犬と猫が溺れていました。君はどうする?」
目をぎゅうって瞑る。僕の答えってなんだ?どうしたいんだ、僕は。
すると彼は今までにない強さでもう一度言った。「なぁ、どうする?」
僕は顔をあげて、彼を直視する。
…正しくは、することに決めた、のだった。
そう、僕の意思で。僕の判断で。
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