第8話:毒煙の揺りかご
本作は、作者が構築した詳細なプロットおよび世界観設定に基づき、AI(Gemini)を用いて文章の初稿を作成しています。また、物語の骨子には作者が持つ地政学、国際政治学、マクロ経済学の基礎理論を反映させており、単なる空想に留まらない国家間の動態や経済的背景を構築しています。
AIによって生成された文章は、これらの理論的整合性を含め、作者自身が精査・改稿し、表現の微調整を全面的に行っております。
挿絵の挿入&修正を、不定期でやり直しております。
【閲覧にあたっての免責事項】 本作はフィクションであり、実在の人物、団体、国家、および歴史上の出来事とは一切関係ありません。 作中で描かれる政治・経済的描写や思想、国際情勢は、あくまで物語の演出上の設定であり、特定の思想を推奨、あるいは批判する意図はございません。
パウリア島の中指、北東部に位置する山岳と煙突の国ファング。 この地を支配するのは、地面を這うように滞留する重く淀んだ有毒の煙霧である。人々は家を出る際、鳥の嘴を思わせる奇怪な形状の面――**「嘴状の防毒マスク」**を片時も離さない。
かつて島を襲った黒死病の医師たちが用いたその意匠は、今や毒霧を克服するための必須装備となっていた。医学の発展していないこの国では、嘴の先にラベンダーやミントを詰め込むことで、死の霧が中和されると固く信じられている。香草の強い香りが鼻腔を突く間だけは、人々は「死」を遠ざけているという安らぎを得るのだ。
ファングの民の平均寿命は三十余年。死は常に背中合わせの日常だ。それゆえにこの国は異様なほど多産であり、若者の熱気と焦燥に満ちている。
「……火口の気密性がまだ甘い。アッシュ、牛革のパッキンと蜜蝋を」
試作工房の奥、熱を帯びた空気の中で、エンバー・リヴァースが声を上げた。嘴状のマスクに籠もったその声は、低く掠れて中性的であり、煤にまみれた容貌も相まって、現場を仕切る若き職人のそれであった。
傍らで、真鍮の継ぎ手を溶接した巨大な**「圧槽」**を支えていた助手、アッシュ・フォージが実直に頷く。彼もまた、鳥の面越しに厳しい視線を向けていた。
「エンバー、無理は禁物だ。少し休め。最近は喉の鳴りが悪い」
「作業を止めれば、それだけ死が近づく。……この『熱気球』が完成すれば、誰もがこの不吉な嘴を脱ぎ捨てて、香草のまやかしではない、本当の空を吸えるようになるんだ」
エンバーは革の作業服の袖で、煤で黒ずんだ額を拭った。古傷だらけの手つきで、酒精を燃焼させる真鍮製の**「噴炎機構」**の芯を調整していく。嘴の中の香りはもはや気休めにもならず、エンバーの肺は確実に蝕まれていた。
「ウィスカーの商人が、また我が国の大型砲の供給を求めてきた。代価として南と東の情勢を持ってきたが、ニャー王国は食糧難でかなり揺れているらしい」
アッシュが、作業の手を休めずに語る。情報収集に長けたテイルとは異なり、ファングは他国が喉から手が出るほど欲しがる「完成された大砲」の輸出を外交カードとして、周辺国の不穏な動きと食糧を買い取っていた。
しかし、ファングの技術とて万能ではない。黒色火薬の威力には限界があり、衝撃で爆発するような炸薬も存在しない。大砲を小型化して持ち運ぶ試みは、ことごとく強度の不足と火力の減退に阻まれ、現時点では拠点に据え置かれた「重厚な防衛兵器」に甘んじていた。
「……どいつもこいつも、地に這いつくばって奪い合っているだけか」
エンバーは嘴の奥で、冷ややかに吐き捨てた。
「奪い合うか、売り払うか。そんな『人の理』なんて、この毒ガスの中では何の意味もない。私たちは、ただ空へ逃げる。この短命の呪いを振り払うためにね」
エンバーはふと、自身の胸を掌で強く押さえた。その不規則な疼きに、エンバーは肺以外の何か「未知の変調」を感じ取っていたが、それをアッシュにすら明かすことはなかった。七割が成人を待たずに死ぬこの国で、エンバーはただ「次」へバトンを繋がねばならないという、強迫観念にも似た本能に急かされていた。
「アッシュ、送風の足踏みを改良する。浮力が安定しなければ、家族を乗せることはできない」
「わかった。手伝おう、エンバー」
二人は、自らの命の灯が消える前に、このパウリアの空を色とりどりの気球で埋め尽くす夢を追い続ける。
しかし、個人の夢とは裏腹に、ファング公国の野心は膨張していた。 深刻な食料不足を解決するため、国家は技術を軍事へと傾倒させていた。山岳の要塞群では、持ち運びこそ困難だが一撃で城壁を削る巨砲が次々と据え付けられ、ウィスカーの資本協力の下、クローへの国境には強固な壁が築かれつつある。
毒煙の底で、技術大国ファングは、静かに、だが着実に「侵攻」の爪を研いでいた。
もしよろしければ、ブックマークよろしくお願いいたします。




